知の結晶
43話目です。
「人工知能って何?」
「人間が作った自律思考の金属生命体だ。」
「人間が作った生命体? そんなことができるの?」
「お前も見えるだろう?」
「何を……?」
「未来をだよ。それだけじゃない。過去も、今も、見ようと思えば見えるぞ。」
未来? 過去? 見えるって……もしかして、さっき自分の姿が見れたときの事……?
見ようと思えば……意識したらって事かな。試しに、兄さんと暮らしてたときの事を思い出してみよう。
あぁ、見えた。
いつものように日々を過ごしている僕らの姿が。
たしかこの日は……そう。羊が柵に入りたがらなくて大変だったんだ。結局、餌で釣って柵にいれたんだっけ。
……もう、この日常には戻れないのだろうか。
もう二度と、僕達の当たり前は帰ってこないのだろうか。
そう思うと、やる瀬のない悲しさが込み上げてきた。
「わかったか、人工知能。」
そうだった。感傷に耽るより先にやることがあった。
人工知能。その言葉を思い浮かべてみる。すると……
「す、すごい……」
溢れ変える人、巨大な建造物。人に紛れて暮らす人工知能と呼ばれるもの達。今では考えられないようなまぶしい世界だ。
「どうだ?」
「な、なんかとんでもないよ……でも、笑顔が多いし、平和なんじゃないかな。」
「その時代はな。少し前までは、人は人同士で争っていた。」
「そうなんだ……」
「人が増えすぎたからな。住むところを奪い合って争い、己の権利を勝ち取るために争い、己の欲の為に争うようになった。大きな争いは戦争と呼ばれた。その戦争が終わっても、人は暗い心を捨てることはできなかったんだ。」
「でも、この人達は笑ってる。」
「そう。人工知能が生まれたから。人工知能は人の感情を理解した。人がなぜ争うのか。どうすれば争わなくなるのか。それが人工知能の最初の課題だった。」
「どうなったの?」
「いとも簡単にクリアされた。最初にその案を考えたのは管理番号001。人類初の人工生命体と「認められた」人工知能。その名をシリウスと言った。」
「そいつが僕らを殺したの?」
「違う。人工知能には二種類ある。「天体種」と「星座種」と呼ばれている。」
「何が違うの?」
「天体種は、シリウスとほぼ同じ機体の人工知能だ。シリウスが課題をクリアした後、量産された。そして星座種は、それらの天体種のデータの複合型だ。人工知能はそれぞれに感情があるから、個体さも出るんだ。」
「僕らを殺したのは星座種?」
「そうだ。星座種の中でも名前がある。彼らのリーダーの名がアルクトス。俺達を殺す作戦を立てた個体だ。」
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