おとぎ話のような
42話目です。
「じゃあ、説明するぞ?」
先ほど待ったをかけたせいか、念入りに確認をしてくる。説明してくださいというと、一歩さがって深く息を吸った。
「まず、俺はさっき殺されただろ?」
「う、うん。」
やっぱり、夢じゃなかったか。夢であって欲しかった。例え今目の前で少女の姿でぴんぴんしていたとしても、大切な兄弟にあんな目に遭ってほしくなかった。
「でも、お前は殺されてないだろ?」
「確かに……じゃあ何でここにいるんだ?」
そういえばと記憶を振り替える。気絶したらしい記憶の途切れはあるが、その間に……?
「あのおじさんは悪意や何かの敵意があって俺達を殺したわけではないんだ。」
でも、あんなに怖い顔をしていたのに敵意がないなんて……
「殺さなきゃいけない理由があったんだ。」
兄さんはそこまで言って、僕の方を見て困ったように笑った。
「俺達は……少なくとも俺は、もうここから出られない。巻き込んでしまって申し訳ないな。」
ここから出られない? 少なくとも兄さんは?
何で、兄さんだけ?
「ついてきてくれ。」
兄さんは振り替えって歩き出した。辺りを見回して見ても何もみつからない。どこに行くというのか。
「ここだ。」
「え? 何にも見えないけど……」
先ほどまでと全く変わらない空と地面だけの景色。
ここに何かあるのかもしれないが、僕にはわからなかった。
「これからだよ。」
言うなりしゃがみこみ、地面に手のひらを当ててこう言った。
「衝撃。」
途端に地面がバラバラと剥がれ、また別の景色に塗り変わっていく。
薄い灰色の地面が暗い赤色の床に。
暮れの空が床と色調の合った屋内のように変わっていった。
「何……?!」
「本来の衝撃は相手に衝撃波を与えて一瞬意識を飛ばす魔法なんだが……なんか思っていたのと違うな。」
「魔法? 兄さん、魔法使えたの?」
「俺たちの知ってる魔法とはまた違うものさ。それはまた今度話すよ。こっちだ、ついてきてくれ。」
言われるがままについていくと、少し狭い部屋に出た。真ん中には大きなベッドが置いてある。
ベッドを覗き込むと、いつもの姿の兄さんが眠っていた。
「ど、どういう事?」
「この体はもう、自分の意思で動けなくなったんだ。これが目覚めてしまうと、よくないことが起こるらしいんだ。」
「よくないこと……?」
「まだ俺にも分からない。でも、この世界に大きな影響を及ぼすことだ。」
「な、何で兄さんがそんな……」
「俺達を殺すように仕向けたやつがそうしたんだ。」
「誰だよ、そいつ……!」
「それは……」
「まだこの世界には存在していない、人工知能というものだ。」
最後まで読んで頂いた方、誠にありがとうございます。
面白かったらブックマーク、感想よろしくお願いします。




