落陽を見た
38話目です。
「私達の世界が終わった原因ということは、シンさんは悪い人ってことですよね?」
「いや、原因であるだけで、あいつらも意図してやった訳じゃないんだ。」
「つまり?」
「つまり……あいつらの正体は人工的に作られた生命体。人工知能だっけ。それだよ。」
人工知能。ここ数年で急激に進歩しあらゆる生活の面で使われるようになった技術。それがシンさん?
「人工知能は私達に反乱したってことですか?」
人工知能の反乱はよく言われていることだった。人間よりも頭のよくなった人工知能達はいずれ人間の支配から逃れ更なる発展のために動き出すだろうと。
「いや、そうじゃない。お前達の元いた世界では毎日のように新しい技術が生まれ、世界が進歩していっただろう。ほぼ全ての人間は、その進歩には終わりのないものだと信じていたんだ。だが、あまねく「個」には終わりがある。それがシンギュラリティだ。」
「ま、また難しい話……」
「単純なことだ。人類はそれ以上に進むことができなくなった。だからこの世界という第2の道が生まれた。」
「それと、人工知能との関係は?」
「お前達人間が進化を終えた。つまりは、人工知能が人間を上回るときが来たんだ。人間の与えられる情報の全てを人工知能に与えた。あとはただ一つの、人間には叶えられない「検証」だけが残った」
「それって……?」
「「人間がこの世界から消えたらどうなるのか。」という議題。人工知能はこれを全てが終わる直前に遂行した。人間が一斉に自死したのはこれのせいだ。」
つまり私は、この世界に来る直前に死んでいた。死と転生?は繋がりがないということになる。では、私に話しかけていたあの声は一体……
「そして今のシンギュラリティの目的はこの世界を無くすことだ。」
「何ででしょう?」
「まぁ、人間が消えるとこんな世界になるって言うことが予想できていなかったんだろうな。お陰で人工知能も進歩の余地がなくなって消滅。この世界に飛ばされてきたんだ。」
「でも、この世界から出るにはアーカーシャを殺すしかないんですよね?」
「まぁ、今の内はそういうことになる。」
案外冷静に答えられたので少し面食らった。この人達は元からここにいたんだろうか
「アストラルさん達は、どこから来たんですか?」
「僕たちは……どこから来たのか、自分達でも分かってないんだ。でも、こうなった経緯はわかる。」
「何の経緯ですか?」
「この世界と接続されてしまった経緯。」
「接続って?」
「僕は違うけど、兄さんがこの世界と繋がった。世界が死ねば兄さんも死ぬし、兄さんが死ねば世界も死ぬ。そんな関係の事。」
アストラルさんは顔をしかめながら自分達の話をしてくれた。
私が思っていたよりも、悲しくて、救いようのない話を。
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