光素の帯
37話目です。
「あれ……また暗くなって来てる……!」
シンさんに置いてけぼりにされて少しの間ぼーっとしていたら辺りの光が弱まっていることに気がついた。
シンさんがいなくなったからなのだろうか。あの暗闇は正直もう体験したくない。どうにかしてここから別の場所まで移動しないと……いつまでもここにいるわけにはいかないし。
元来た方向とは別の向きに何かないかと目を凝らす。ここが一番光の強い場所だからできれば動きたくはない。しかし、そうしてるうちにも辺りはますます暗くなっていった。
「まずい、もう殆ど見えない……」
私の周りはすっかり暗黒と化して目の前すらも見えなくなった。
これはまずい。仮に明るくてもここに居続ける事はできないが、暗いとますます不安になる。
どうしよう……どうすれば……
「おい、お前。」
背後から突然話しかけられた。飛び上がるほど驚いたが、聞いたことがある声だった。
「アストラル……さん……?」
振り替えると、ビビッドな水色の瞳がこちらを見ていた。
「兄さんが、お前を見たって言うから様子を見に来たんだ。ここで何してるんだよ。」
「えっと……」
シンさんと話していた事をアストラルさんに教えて良いのだろうか。もし本当にアーカーシャを殺すんだとしたら、アストラルさんには教えてはいけないだろうが……
「まぁ、何を話してたかなんて全部わかってるけどな。変なことを考えるなよ、あれにはそんな力はないんだから。」
「シンさんは嘘をついたってことですか?」
「嘘というよりは、今は嘘、て事だな。あいつらお前を仲間にしようとしてるから。」
「あいつ"ら"? 他にも仲間がいるんですね?」
「仲間というか、まぁ同位体だな。クローンだよ。」
「クローン?」
「シンギュラリティは僕や兄さんと同じである一つの現象の名前なんだ。」
「その沢山の同位体の名前がシンギュラリティ?」
「そう。個体の名前なんて殆ど呼ばれないからどうでもいいんだけど、シンギュラリティっていうのは……」
そこまで言ってちょっと苦そうな顔をした。それに続いた言葉は
「この世界の限界。元を辿ればお前たちの世界が終わってしまった原因だよ。」
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