文の明
36話目です。
「それはフローレさんの包帯! と……」
「あの小説家が君宛に書いた本ですよ。」
「夏野さん、もう書き終わったんですか?」
「まさかそんな。これは今より未来に完成する、今小この瞬間には存在しないものです。」
「何でシンさんがそんなものを持ってるんですか」
「これはこの特異点の性質です。すべての今を収束する力。そしてアーカーシャの力はそれの利用です。」
「それは魔法なんですか……?」
「そんなへんてこなもんじゃありませんよ。これは正真正銘の世界そのものが持つ能力です。」
「世界にも力があるんですね。」
「えぇもちろん。この世に存在するものには全て性質というものがありますから。私はそれを能力と呼んでいますから。」
「じゃあ私の能力とかちょっと気になるかも……」
「私は別に占い師とかではないのですが……見てみましょうか。」
「よろしくお願いします!」
「う~~ん…………う~~~~ん?」
「ど、どうですか」
「見当たりませんね……なぜでしょう」
「そ、そんな……この世に存在するものには能力があるんじゃないんですか……?」
「前の世界の記憶があるからですかねぇ」
「ちょっとがっかりです。シンさんは能力があるんですか?」
「私の能力は修正といって、誤った未来を正すものです。私はその能力でこの世界をあるべき姿に戻さねばならないのです。」
「元に戻したら、この世界のみんなはどうなるんですか?」
「元の世界に戻りますよ。ここの世界の人間は全て元の世界からの生まれ変わりですから。」
「生まれ変わりってことは……みんな死んじゃったんですね。」
「まぁそれも間違った未来ですから、無かったことになりますけどね。貴方に徐の手伝いをしてもらうのが私の今の目的です。どうですか? 手伝っていただけますか?」
「まぁ……はい、元の世界に戻りたいので。」
「ありがとうございます! 非常に助かります。ではこれは預かっておきますね。もう帰って良いですよ。それではさよなら~~」
包帯と本を懐に仕舞いこみ、手を振ってさっさとどっかへ行ってしまった。
もう帰って良いですよって……どうやって帰れば……?
最後まで読んで頂いた方、誠にありがとうございます。
面白かったらブックマーク、感想よろしくお願いします。




