目映きフローレンス
31話目です。
「はい、これでひとまず大丈夫でしょう。」
「女王様が目覚めたら、どうするんですか?」
「さぁ。分かりませんが、とりあえず戦争は終わりでしょうね。」
「そ、そうなんですか?」
「女王が倒れたとなれば敵方は進軍してくるでしょう。そして女王の傷を塞いでいた魔法が解除されてまた……という風になりますし。なにより、敵を城内にいれてしまった時点で敗けでしょう。」
「難しいですね……」
「ですが、短い戦で良かった。犠牲者も殆ど出ていません。」
「スミスさんは怪我人を出さないことが第一って感じですよね。」
「もちろんです。私はあらゆる人が傷つくのを見過ごせません。私の手で救える命があるのなら、私は力の限りを尽くします。」
「なんか……かっこいいですね、すごく。」
「同じ様な言葉を今まで沢山言われてきました。でも、私は称賛されたくてやっているわけではないのです。私はただ自分に出来ることをしたいだけ。富や名声など必要ではないのです。」
もしかすると、夏野さんの言っていた人はスミスさんなのかもしれない。魔法を使わずに怪我や病気を治している。元の世界では当たり前の医療もこの世界ではこの人だけの能力だ。
「起きましたか。」
「はぁ……まさか本当に目を覚ませば治っているとはな。痛くも痒くもない。」
「魔法で塞いでいるからです。本当の傷はまだ治っていませんよ。」
「そう変わらんだろう。」
女王様が目を覚ましたらしい。扉のない隣の部屋から出てきた。かなりの出血をものともしていないところを見るに、やはり魔法の医療は凄まじいのだろう。
「あーあ、もう戦争は終わりだ。おまえ達ももう国に戻れるぞ。」
「私はあなたの経過観察がありますので。クロネさんを安全に国に帰してください。」
「わかったわかった。準備をさせておくから、そのうちに別れの挨拶をしておけよ。」
そういって、外で待機しているらしい兵士達のところへと歩いていった。
別れの挨拶……私は着いてきただけで何にも出来ていないし……
「クロネさん。」
「は、はい?」
「別れる前にあなたに言うことがあります。聞いてください。」
「はい……」
「まずはじめに、スミスというのは偽名です。私の本当の名はフローレと言います。」
「ぎ、偽名だったんですね。」
「はい。本名だとこの国に来るまでに足止めを食らう可能性がありましたから。申し訳ありません。」
「いえ、そんな。」
「もう一つは、この世界についてです。」
「え……?」
「あなたは集会所で私と出会う前に、図書館に行っていましたね。」
「はい。」
「あれの館長、ペトロヴナは私に言いました。「君達は本堂はこの世界で生きるべきではないのだ」と。そして彼女は私の持つ知識の使い道を教えてくれました。そして、あなたの事も。」
「私の?」
「はい。今日この日にあなたが集会所でこの東の国に来るための手続きをする。だから私はあなたと共に東の国へ行き、魔法でない医療と言うものを見せるように言われました。」
「何で私が来ることを知ってたんでしょう……」
「さぁ、予言でも出来るんじゃないんでしょうか。」
「そんな適当な……」
「そしてあなたに告げるように言われた言葉があります。「アーカーシャをよろしく。」だそうです。」
「あ、アーカーシャを……?」
私の他にも、元の世界の記憶がある人がいるのか……?
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