翼持つ者
29話目です。
「ついたぞ。早く降りろ」
「ありがとうございます。ではここで待っていてくださいね」
「はぁ? 何でだよ」
「私たちを国に送り返してもらうためですが」
「輸送魔法で良いだろう」
「まぁそれでも良いのですが、何がペナルティがないと面白味に欠けますし。」
「なにも面白くないが? 却下だぞ」
「それは残念です。また怪我人が増えてしまった。」
「また殴る気かよ……あ、ほら人が増えてきたから早く出ろ俺がスパイだとバレるだろ」
「にしてはずいぶん親切にしてくださるのですね。」
「殺されたらたまったもんじゃないからな。」
「そうですか。まぁ、私は貴方が怪我しても何度でも直しますが。」
「うるさいぞ、いい加減出ろ。」
「はい。行きますよ、クロネさん」
「あ、はい。ありがとうございました。」
小さく会釈して輸送挺を出ると、扉を閉める直前にふんと鼻をならしてそっぽを向かれた。スミスさんと随分親しい感じだったが……
「あの、さっきの兵士さんとお知り合いなんですか?」
「彼は傭兵です。いまは敵国に雇われているんでしょう。かつて彼を治療したことがあります。」
「だからですか。」
「はい。かなりの大怪我だったのを覚えています。ながいあいだ治療のついでに世間話をしていたら仲良くなりました。」
「敵同士なのは辛くないですか?」
「彼も私もそれが仕事ですから。情に流されていては行けません。そもそも、私達のような仕事は一期一会ですから。」
「そうなんですね……」
そんな話をしながら王宮の中庭を歩いていると、遠くの方から兵士が走ってやってきた。
「フローレ殿! 戻られましたか!」
「はい。今の状況は?」
「女王陛下が刺客に狙われ、重症です! 早く女王陛下の元へいってください!」
「分かりました。直ちに。」
先程とは打って変わって重苦しい空気だが、やはり魔法で応急処置ができているのか、王宮に混乱の様子はなかった。
宮殿の中へ入り、先程の応接間を抜けて、長い螺旋階段を上ると、そこには豪奢に飾られた扉があった。
スミスさんは治療の準備をしている。私はここにいても大丈夫なのだろうか……?
「クロネさんにも手伝っていただきますからね。」
……え?
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諸事情により次話の投稿が遅れます。




