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22話目です。
「今日も図書館に行くのか?」
「うん、調べものがあって……」
「今日は俺たちの依頼は無いから集会所には行かないつもりだが、一人で大丈夫か?」
「うん、もう道を覚えたから大丈夫。」
「そうか、じゃあ気を付けてな。」
「はーい、いってきまーす。」
結社の家からは殆ど一本道のようなものだから、迷うことはないだろう。お兄ちゃんは心配のようだったが、多分大丈夫だ。見送られながら家を出て歩き出す。乾燥はしていないが砂が多く、他の家もポツリポツリとしか見当たらない。集会所のある町とはかなりかけ離れている。
基本的に家から集会所までは魔物は出ないし、他の国へと移動する際は専用の手段があるから大丈夫と説明された。拠点が構えられているこの町付近はどこかの国と言うわけでもない、国と国との中間地点らしい。だから、移動手段も多くあるので日帰りでも行けるだろうとのこと。おそらくその移動手段も魔法なのだと思うと、再び魔法の力の強大さを感じる。
これ程便利な物があるのに夏野さんはそれを使わなかったというのは、普通に考えたらなかなかおかしな話なんじゃないだろうか……
――などと考えているうちにもう集会所まで着いてしまった。
「おはようございます、ルインさん。」
「おはよう。今日は一人なの?」
「はい、調べものがあって図書館に。」
「なるほどね。でも、あの作家さんは今日はいないみたいよ。」
「そうなんですか?」
「まぁさすがにいつまでもいられてもって話だけど、自分の家で作品を書いてるんじゃない?」
「そうですよね。ありがとうございます。」
「はいはい。」
図書館の方へと歩いていく。昨日とは違い、時刻は朝。窓から射し込むのは夕日ではなく朝日で、また違った雰囲気を感じる。
ギイイと音をたててまた扉が開いた。司書さんは今日もいないのだろうか。この膨大な量の本の中から目当てを探すのは骨が折れるが……
「司書さんいらっしゃいますかー?」
入り口で小声ながら呼んでみる。返事は返ってこないだろうと思い足を踏み出した瞬間
「何の本をお探しかしら。」
後ろからいきなり声をかけられ、危うく倒れそうというところで踏みとどまる。心臓に悪い。そのひとが司書さんなのだろうか。
「こ、ここの司書さんですか?」
「そうよ。私はペトロヴナ。この図書館の司書であり館長です。」
「クロネと言います。よろしくお願いします。」
「よろしくね。それで、探し物というのは東の国への移動手段よね。」
「な、なんで知ってるんですか?」
「館長だからね。」
そういうもの……とは思えないが。
「でも、それならここを利用する必要は無いわ。調べなくてもすぐ行って帰ってこれます。」
「そんなに簡単なんですか?」
「えぇ本当パッとよ。この紙に書いてある通りにすればですけれども。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「それじゃあ、また次はちゃんと本もみていってくださいね。」
「はい!」
紙にによれば集会所に繋がる図書館とはまた別の棟へ行けとのことらしい。とりあえず集会所の受付まで戻って聞いてみるしかない。
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