心まで蒼く
20話目です。
短めです。
「結局、あの人は誰だったんでしょう……?」
「心当たりが全然無いんですけどね……」
あの後、私達は集会所に戻り、私と夏野さんは例の図書館にいた。あの依頼主の事は集会所が調べても情報が全く出てこなかったらしい。いよいよ本当の謎になってきた。
「夏野さんは何で魔法を使わなかったんですか?」
「うーん……具体的な理由があるわけではないんだけど……何となく魔法より自分でやるのが好きだったからかな。」
「でも、無意識に使っていたって言ってましたね。」
「まぁこの世界に生まれた以上、魔法ゼロで生きていくっていうのは無理な話だろうからね。今やどんな物にも魔法が使われてる。」
「でも、夏野さんの本は違うんでしょう?」
「うん、前のはね。この戻ってきた原稿用紙のは、違うと思う。」
「でも、魔法がどんなところにも使われているような世界で夏野さんが自分の手だけで本を書いたっていうのは、すごいことだと思います。」
「そ、そうかな?ありがとう……」
心底嬉しそうに笑っている。この人は元の世界でも本を書いていたのだろうか。
「また本を書くんですか?」
「うん。悩んでたんだけど、今日依頼に初めて行ってみてわかったよ。僕は、やっぱり、本が好きだ。字を書きたい。」
「次、本を出したら私にももう読ませてくださいね!」
「もちろんだよ。ありがとう。」
叶うかもわからない約束をして、私は図書館を後にした。そこまで頻繁に本を読んでいたわけではないが、あんな感じの依頼でどんな本が書けるのか正直気になる。夏野さんはもう書き始めていたみたいだし、直ぐに本は出来上がるだろう。
完成が楽しみだ。
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