夏野に咲く
17話目です。
無数に舞っていた紙が一ヶ所に集まり、繋がる。そして丁度、原稿用紙と同じ大きさの紙が出来上がり、ヒラヒラと落ちてきた。
「これは……」
「夏野さん、何か書かれてるんですか?」
「私の書いた話の一部だ。でもどうして……」
「紙、持ってきてたんです?」
「いや……手ぶらだったけど。」
それもそれでどうなのか……
「じゃあ、これが夏野さんの魔法?」
「こ、これが? どういう魔法だよ……」
確かにそうだ。魔物を一瞬で消し去った後、一枚の紙になる魔法。一言で表せそうにもない。
「……あれ? これ、違うな……」
「違う? 何がですか?」
「私の書いた話……と思ったんだけど……少し変わってる。 なんか……変な感じになってる……」
「変?」
原稿用紙を覗いてみると、たった400字の中に度々魔物が登場している。
「でも……面白いかも?売れるんじゃないですか。」
「私のよりも売れたら許せない……」
「と、とりあえず皆を探しましょう。」
「そうですね。一応この原稿用紙も持って……」
……探そうにも、深い森の中だという事を忘れていた。闇雲に動いて更に深いところまで行ってしまったら大変だ……
「夏野さん、なんか良い感じの魔法知らないんですか?」
「良い感じって?」
「こう……探し人のところまで案内してくれるみたいな」
「そんな便利な魔法知ってたらとっくの昔に……ん?」
「さっきの原稿用紙が浮いてる!」
原稿用紙の裏側に地図が写し出される。森の中なのではほぼ木で見えないが、二つの色の違う丸がチカチカと点滅している。
「これ、どっちかが私達なんじゃ?」
「うーん……あっ、今こっちの青い点がちょっと動いた!」
「じゃあ私達はこの赤い点ですね!」
「そう遠く離れてないみたいだし、急ごう!」
「はい!」
「……にしてもなんでさっきから原稿用紙が勝手に動くんだろう。魔法にしても聞いたこと無いし、使ってないのに……」
「とりあえず今は合流ですよ!夏野さん置いていきますよ!」
「あー待って待って置いてかないで地図は君が持ってるんだよ!」
道中、何度か魔物を見かけたが息を殺して通りすぎ、無事合流出来た。が……結局、今回の以来とは何なのだろう。
「この辺なんだけどなぁ……」
「まだ見つかんないの?」
「おかしいなぁ……」
お兄ちゃんとレイ先輩がさっきからうんうんと頭を抱えている。
「何を探してるんですか?」
「目的地がこの辺なんだが、目印がないんだよ。」
「目印ってどんなの?」
「大きな洞窟の入り口があるって書いてあるんだけど、全く見つからないわ。」
確かに今来た道にはそれらしいものはなかった。集会所の地図と依頼書が間違っていたとか?
「あのー、その洞窟ってあれじゃないんですか?」
夏野さんが指差す方向を見ると、確かに割りと大きな穴ぐらのようなものがある。さっきもあったか?
「……あれしか考えられないな。入ってみるか。」
「あれだけ探してもなかったのに何で急に現れたのかは謎だけど……もう夜だし早く行きましょ。」
レイ先輩に続いて洞窟へ入る。中はかなり広くて、目当ての洞窟はここであっているようだ。
奥へと続いた道を進み、光も届かない暗いところまで来た……
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