青い夏
16話目です。
「……ということで、こちらの、夏野さんも一緒に依頼に行きたいらしいのですが……」
「おぉ、全然良いぜ。な?」
「危険かもしれないけどそれでもいいなら私は構わないけど。」
「僕も。」
「じゃあ行く! すぐ行く! 本のネタにしたい!!」
「じゃあ俺と、ルーノとレイとクロネと……あんた、名前は?」
「私は夏野って名前でやらせて貰ってます。」
「じゃあナツノさんの5人だな。受け付け行ってくる!」
お兄ちゃんが受付の前の人だかりへ紛れていった。昨日の私も同じような立場立ったけど、普通に見知らぬ人とでも依頼に行くものなのだろうか。
「皆さん優しそうで良かった。いい話が書けそうだ……」
うんうんと自分を肯定しながら満足そうに笑っている。まだなにも始まっていないけど……大丈夫かな……
「依頼書貰ったぞー。三番出口だってよ。」
「りょーかい。じゃ早く行こ」
「ごーごー」
三番出口と言われた町の出口から出る。私も依頼はまだ2回目だからとても緊張しているのに……
「すごい!! 町の外はこんなことになっているんだ!!」
夏野さんは視線をキョロキョロとさせながらふらふらと歩いている。流石にそこまで危なっかしくはなかったと思うのだが……
「あ、あんまり離れると危ない……と思いますよ?」
「平気平気! 大丈夫だって!」
「本当かなぁ……」
――――迷った。更にはぐれた。
昨日の荒野なんかと違って今日は深い夜の森に入っていった。だのに夏野さんは相変わらずあちこちへ行きそうになるものだからずっと気にかけて見ていたらいつの間にか先頭のお兄ちゃん達が消えていた。
「夏野さん……どうしましょう。」
「どうするもこうするも、ねぇ……」
迷った上にはぐれた事実に気づいた私達は絶望の底にいた。はぐれたことに気づいた時、大きな声で皆を呼んだ。が、返事は返ってこなかったし、近くにいたらしい魔物を呼び寄せてしまった。
大慌てで逃げ出して、岩の陰に隠れているところだ。
「このままじゃいつか見つかっちゃいますよ……」
「がしかし君も私も戦闘は出来ないだろう。」
「でも、じゃあどうすれば……」
「良い案がある。」
良い案?どんな……夏野さんもこの世界の人だから、またビックリするような魔法……とか?
「助けを待つんだ。」
自信ありげに格好付けた様な顔で言われた。待ってて助かるならとっくに試しただろう。この人もしや馬鹿なのでは……
「グルルルルルル…………」
……?お腹の音……にしては大きすぎるか。まさか……
斜め上を見ると、先ほど追い掛けてきた魔物が私達を見つめていた。
「「うわあああああああ!!!!」」
一目散にその場から逃げ出した。が、あっという間に魔物との距離が縮まる。無理だ。逃げ切れない。
「っ……速い…………!!」
魔物の牙がこちらを目掛けて飛んでくる。距離が縮まったところで飛びかかってきた。あんな牙で噛まれたら即死だろう……
目を瞑り、それでもと走り続ける。追い付かれ、噛みつかれると思ったがその様な衝撃は伝わってこない。
「……あれ……?」
振り替えると、魔物は消え、代わりに白い紙吹雪のようなものが舞っていた。
「……何これ?」
紙吹雪を手に取ると、升目のようなものが書かれているのが分かる。これは……
「これ……私のいつも使ってる原稿用紙だ……な、なんでここに……?」
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