蟻地獄
138話目です。
――――それは突然のことだった。
依頼が達成されたのか分からないから、まだこの巣の中を探索しようという意見と、こんなところ早く出たいという意見が出て悩んでいる最中の事。
いきなり地面が揺れ、動き出した。
驚いて動けないままいると、床は中心に向かって渦を巻き、渦の中から大きな虫の魔物が出てきた。あの魔物は、蜂のような魔物と違って大きく、羽も無かった。
地中で獲物を待つ虫を聞いたことがあった。アリジゴクという虫は、地中に潜り餌を待つ。逃げようと走る餌に砂を投げつけて、捕食する。
今の私達の状況はまさにその「餌」そのものであった。
誰のものかもはや分からない無数の魔法が一気に放たれた。炎や小さな雷のような閃光も走っていた。
その衝撃に驚いたのか、大きな魔物はその身体を動かして砂の上に這い出てきた。
「こ、こいつどうみても飛んでる魔物の天敵だよな? なんでこんなとこに普通にいるんだよ……!」
「下手に動くと引きずり込まれるかもしれません。団長さん、距離をとった方が良いかと……」
「おう、砂の流れも底まで強くないし、遠くから少しずつ……うわっ?! なんだこれ!」
足を掴まれた様な感じをして足元をみると、蔦のような木の根のようなよくわからない植物が足に巻き付いていた。その植物に物凄い力で渦の中心に引っ張られ、ずるずると魔物の方に近づいていってしまう。
植物が強すぎるのか、ティロちゃんでも容易に千切ることは出来ず、足に直接巻き付いていることもあって炎の魔法で焼ききることも出来なかった。
「い、嫌……!」
「香子さん!!」
もう目の前に魔物が近づいてきていて、食べられてしまうまで間もなくというところまで来ていた。
抵抗することもできずに、ただ引きずられたままでいたのに、香子さんの声が聞こえて、体が引きずられる感覚もなくなったので、不思議に思い恐る恐る目を開けると、魔物や、足に巻き付いていた筈の植物はきれいさっぱり居なくなっていた。
「え……? ま、魔物が、消えた?」
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