生命よ緩やかに
131話目です。
――――あれから、穴の奥の方へと歩き続けて少し経つと、また別の部屋にたどり着いた。
「また部屋ね。ここは……壁に同じ穴ぼこは空いてるけど、幼虫はいるのかしら。」
「あっ!真ん中に何かあるよ!」
ティロちゃんが言うように、部屋の真ん中には少し盛り上がった山のようなものができていた。
近寄ってみると、丸い大きな何かが大量に積み上げられていた。
「何これ? ……なんだか花みたいな匂いがするけど。」
「きび団子見たいですね。 ぶよぶよしてますよ」
「きび団子? 確かにぶよぶよしてるけど……」
手触りは少し手につく感じで、まさに団子のようなものだった。
「何なんだろ、これ。何でこんなにいっぱい置いてあるのかしら。」
チッタちゃんが団子を持ち上げた瞬間、大きな羽音が近づいてくるのがわかった。
「……っ敵か!」
「さっきとおんなじ魔物だよ! でも、数は少ないみたい!」
「じゃあ私とあなただけでやれるわね……行くわよ。」
「はーい!」
ティロちゃんは、また敵の方に拳を振り回し突っ込んでいった。
「とりゃあ~~!!」
群になっていた魔物は一網打尽に蹴散らされた。哀れだ。
「ちょっ、早すぎ……」
一騎当千の有り様にチッタちゃんも動揺していたが、やがて杖を構えて魔法を唱え出した。
「死霊魂っ!」
杖の周りに無数の青い魂を纏わせて、魔物の方に放つ。
私や、お兄ちゃんが魔法で出した炎とは違い、魔物はすぐには燃えずに、そのまま消えてしまった。
「あれ? 火の魔法なのに……」
「違うわ、良く見て。」
もう一度魔物の方を見ると、さっきまで羽ばたいていた羽も元気がなくなり、地面にふらふらと落ちてしまった。
「ま、まさか……」
「……思ってるほど恐ろしい魔法じゃないわ。命を扱う魔法は魔術の冠位があったとしても禁忌だもの。今のはちょっと元気を奪っただけよ。」
それを聞いてほっとした。
ティロちゃんのパンチも恐ろしいが、こういう魔法も出来てしまうのも、科学と似通った所であるのかもしれない。
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