暁の境
13話目です。
一応このパートは一区切りです。
「まずは、夏野という男に会え。」
「だ、誰……」
「集会所の隣接の図書館に行けば会えるだろう。本を書いている青年だ。」
「本を……?」
「この頃は稼げる仕事は依頼位らしいが、物好きなんだろう。科学の世界の名残の書物を読み漁って、自らも物書きを志しているらしい。」
「小説家は物好きなの?」
「この世界で需要のある書物というのは、魔法書か、せいぜい恋愛などの教本だ。文学というものは廃れてしまった。」
「でも、夏野さん?は本を書いてるんですね。」
「そう。だから、その男の書く本が科学の技術の証になるだろう?とうの昔に書かれた本じゃない、純粋な書物は瑞々しく美しい。」
「わかりました!今日、お兄ちゃん達がまた集会所で依頼を受けるらしいので、ついてって夏野さんに会ってみます!」
「あぁ、頑張ってくれ。」
笑顔で席をたち、帰り道と思われる道に進む。正直夏野さんという方が私のために本を書いてくれるとは思えないが……
「あ、ちょっと待って」
ドア的なものが見えた来たところで、追いかけた来たらしいアストラルさんに呼び止められる。
「なんですか?」
「兄さんと僕の事なんだけど、僕達はここに閉じ込められてる状態なんだ。」
「閉じ込められてる?お二人の家じゃないんですか?」
「僕達が死んだ後、ここで目覚めた。兄さんはあの姿でなら現代に行くことはできるんだけど……」
「あの姿以外の姿があるんですか……」
「本来は普通の男の人の姿なんだよ。でももうずっと眠ったままだ。」
「そうなんですか……どのくらい寝てるんですか?数年とか?」
「人間が生まれたときくらいからだな。その頃から体から意識が離れて別の形になった。」
「想像以上に途方もなかったですね。」
「そうなんだよ。だから、ずっと眠り続ける原因をあんたにも考えてほしいんだ。」
「いや訳がわからなすぎて難しいと思うんですが……」
「睡眠に関する知識を持つ人に話を聞くとかでもいい。僕にはできないんだ。頼む!」
「そこまで言われたら断れないですけど……何の役にもたてないかもしれませんよ?」
「ここに人間が来ること自体初めてだし、あんたは頼みの綱なんだよ!」
「わかりました。出来るだけ探してみます。」
「ありがとう……!じゃあ、そろそろいかないといけないし、またね。」
「はい、色々教えてくれてありがとうございました!」
扉を開けて進む。そのうち意識が薄くなっていって――――
「朝か……」
まだ外は仄かに明るい位だが、太陽が出ていた。寝ていた感覚はないが、疲れも感じない。良いことなのか悪いことなのか……
とりあえず今日は夏野さんに会いに行く事が最優先だが、流石にまだ早すぎるので布団に潜る。この世界でやっていけるのか不安だが、アーカーシャやアストラルさんが協力してくれるならなんとかなりそうだという自身が生まれた。
最後まで読んで頂いた方、誠にありがとうございます。
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