虫達の宮廷
124話目です。
昨日出会った魔物に対して炎の魔法を使うことはできた。でもあれは、お兄ちゃんの魔法があったからだ。魔法での補助がなければ、私は戦うことはできない。だからといっていつまでも助けて貰うわけにも行かない。元の世界に戻るには、私一人でやらなければならないことだってあるはずだ。けど……
「羽音が聞こえる。この壁の向こうに沢山いるわ。」
「私がどかーんってしちゃおうか?」
「いや、ムキムキな虫が出てこないとも限らないし、ティロはまだ控えててくれ。量が多いなら魔法の方がいいだろ。」
「そうね。じゃ、団長よろしく。」
「おう。『火炎衝』!」
お兄ちゃんの手の平から小さな光の玉が飛び出し、虫達の方へ飛んでいった。壁の裏から向こうを覗くと、光を不思議に思ったのか、どんどん虫達が集まってきている。
そして、虫の一匹が光のたまに触れた瞬間……
「ま、眩しい……」
「香子さん、大丈夫?」
「え、えぇ。ありがとうございます。」
思わず目を伏せる程の眩しい光が辺りを照らし、虫達を焼き尽くした。
「……よし、粗方片付いたか?」
「うーん、まだ上にいるみたいだけど……人間用の建築物じゃないから、階段も梯子もないし、上に行く方法を探さないと。」
「上か……風魔法で大ジャンプは?」
「出力間違ってどっかにぶつけたらどうするのよ。」
「じゃあ壁掘るとか」
「ここの壁、何で出来てるのか分からないけどすごく硬いわよ。」
「そっかぁ……じゃあどうしたものか……」
「はいはーい! 名案名案!」
「自分で言うのかよ。で? どんな名案?」
「天井におっきな穴を開けて、上の階の人みーんな下に降ろしちゃえば良いんじゃない?」
「でも、上に何があるか分からないし危険かもしれないわ。」
「そっかー……団長さん、どうするの?」
「俺は天井に穴開けるんでも良いと思うけどなぁ……やっぱ危ないか? でも防御の補助魔法なら行けるんじゃないか?」
「まぁ……私やあなたはそれで良いとして、くろねちゃんと香子さんは?」
「…………一旦、外?」
――――
ということで私と香子さんは一時的に城の外に避難することになった。
避難と言っても、外には先程と変わらず魔物が飛び交っているのだが。
「じゃあいっくよー!」
拳に目一杯力を込めて、天井を叩くと、ハニカムの天井は粉々に砕け散った。上の階にいた虫達も流石に驚いたのか、天井の崩壊からワンテンポ置いてティロちゃん達に襲いかかった。が、それに備えていたレイ先輩とお兄ちゃんがここぞとばかりに魔法を打ち込んだ。
「私達も行きましょう!」
「あ、は、はい!」
殺る気満々の香子さんに思わず同意してしまったが、あの激戦の中に混じっても大丈夫だろうか……
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