春の訪れはたおやかに
120話目です。
「えー、それでは、今から出発する依頼を達成するために、作戦会議を行う。用意は良いか皆さん。」
「オッケーだよ、団長さん! でも、作戦会議なんて今までやったことあったっけ?」
「作戦会議! これから長い旅が始まるというのが感じられる、良い響きですね!」
「今回の依頼はさっき言ったように非常にめんどくさい! だから綿密に作戦を練って迅速に事を済ませて、何事もなかったかのように帰ってくる。良いな?」
「はーい!」
「な、長い旅だと思っていたのですが……仕方ありませんね、皆さんに迷惑をかけるわけには行きませんし……」
「えー?! 迷惑なんかじゃないよ! ねぇねぇ団長さん、やっぱり作戦なんて要らないんじゃない?」
「ダーメ! 作戦立てないと大変なことになるんだからな! ちゃんと話も聞いてろよ!」
「はぁーい。」
ティロちゃんは不服そうにほっぺたを膨らませているが、作戦会議の内容は一応聞いてはいるようなので問題は無いだろう。
実際は、この作戦会議自体が作戦なのだが。
――――
「……いいか、俺たちの本当の作戦はこうだ。まず目的地についたら普通に巣を探すフリをして、レイが魔法で先に巣を見つけておく。」
「はいはい、探知魔法ね。」
「それで見つけた巣に俺とルーノとくろねで行って、半分以上は倒しておく。その間はチッタとレイはあいつらと一緒に巣を探しててくれ。」
「えぇ、面倒くさ……なんで私が……」
「で、残ったもう半分を香子さん達に倒してもらう。これで完璧だろ! 俺天才!」
「そんなに上手くいかないと思うけど。というか偉いとこのお嬢さんをそんな感じで騙しても良いの?」
「怪我されるよりは万倍マシだろ……下手したら牢屋とかに入れられるかもしれないんだぜ?」
「それは嫌だけども。こんな五分で考えたような作戦で本当に大丈夫なの?」
「わからん! でも考えないよりマシだろ。こんな時間まで残ってる依頼なんて大抵曰く付きだろうしダメ元だよ。」
――――
こんな感じで、なんだかよさそうな作戦を思い付いたからそれを実行してみて、ダメだったら普通に戦うという、失敗するのが前提のような作戦が立てられてしまったのである。
つまり、今目の前で繰り広げられている「作戦会議」は、さっきの作戦が上手く行くための事前準備である。これがもし上手く行けば、確かにかなり簡単に依頼を達成できる。でも、そういうときに上手くいかないのがお兄ちゃんだ。今回こそは成功すれば良いのだが。
最後まで読んで頂いた方、誠にありがとうございます。
面白かったらブックマーク、感想よろしくお願いします。




