深夜の異界
12話目です。
前回の話が続きまくってます。
「……やります!」
やれる確証はない。でも、覚悟を決めたという私の言葉に、アーカーシャは笑顔で返してくれた。きっと悪い人では無いのだろう。だけど……
「アーカーシャ…は、いったい、何者なの?」
そう。この空間とこの少女と青年。今この場所は、さっきの異世界とも隔絶されているような気がする。
「俺は……アカシックレコードという物の意識体だ。アカシックレコードというのは、この世界の始まりから終わりまで、すべての情報が記録されている場所のことだ。それが人の姿をしているものが俺ということになる。」
「すべての情報ってどのくらいの……?」
「世界が生まれてから何年の何日の何時何分何秒に何が世界で起きていたのか。それが分かる。」
「頭爆発したりしないんですか?」
「しない。必要な情報だけでが取り出せる。それに、世界がこれ程目まぐるしく変わるようになったのはほんの数千年前からのことだ。」
「アストラルさんは?」
「僕も概ね同じだよ。人の形がある以上、意識と肉体が違うだけ。」
「人間ではないんですよね?なら、どうやって生まれたの?」
「どうもこうも、世界の歴史が始まったときから、俺達は存在している。」
「すっごいですね……」
話の規模が違いすぎてすごいという感想しか出てこないが、そんな壮大な存在と話をしているというのはどのくらいのとんでもないことなのだろうか。
「あぁ、でも……いまのこの存在は人間によるものといっても、間違いではないかもしれないな。」
「どうして?」
「人間は、世界に歴史があるものだと確定した。もしかすると、世界に歴史など存在せず、丁度この瞬間からこの形のまま産み出されたかもしれないのに、歴史という長い帯の先端に己が立っているものとしたんだ。」
当たり前の事過ぎて疑うこともなかった、歴史という言葉。誰がその言葉の意味を証明できるのか、確かに分からない。たった今、私の立つこの地面が長い歴史と共に産み出されたのだとすれば、それは過去とは言わないのではないか。そんな思考が頭を埋める。
「まぁ、今そんなことを考えてもしょうがないが……つまるところ、世界の終わりが訪れた時、俺の存在がやっと確定するんだ。そういうものだ。」
「よくわからないけどわかりました……」
何となく話の流れはわかったが、それが現実だということが認識しがたい。この話は難しすぎる。
……大事なことを聞き逃している気がする。
「せ、世界の終わり何てものがあるんですか?!」
慌てて問う。あったとしても何億年後とかそんなもので、「今は気にしなくていい」といわれそうなものだが
「あるぞ。近いうちにな。」
……?? 近いうちに……? 近いうち、とは……?
「明日明後日の話ではないが、まぁ、数年のうちには訪れるだろう。」
「り、理由は……」
「戦争だ。人と、神の。」
「人と神が戦えるの……?」
「かつて人は神と戦争をした。科学の時代の始まりの時だ。人は神に勝利し、世界を人間のものにした。」
「そんな事が、本当に出来るの……?」
「魔法の時代の始まりの時にも同じことが起こった。今度は人間に勝ち目の無い戦いだった。」
「なぜ負けたの……?」
「それまで人々に従順であった人工知能が人を裏切った。」
人工知能……最近私達の学校にも導入され、生活の利便性向上のために普及が広まっているはずだ。それが裏切る……?
「神はどういうわけか機械をも操れるようになったらしい。かつて存在していた物だから、最新技術に追い付けるとは思っていなかったが……確かにそんな科学技術を身内につけられたら、開戦したときからトロイアの木馬が無数に存在していた様なものだから勝ち目など無いだろうな。」
「負けてどうなったの……?」
「人は一時的には滅んだ。人工知能はすべてを知り尽くした。過去の事象や未来の予測。そして、人工知能の最終目標……「人類が絶滅したらどうなるか」の情報を手に入れるために人に歯向かい、結果は滅亡だった。」
「人工知能もほろんだの?」
「人間にメンテナンスされることで平常を保っていた。外傷やウイルスは直せても精神の磨耗は直せなかったらしい。人間より事態を深刻に考えてしまう人工知能たちはすぐに意識を保てなくなり最後はぐちゃぐちゃになった。」
「その後はどうやってこんな世界になったの?」
「なにもなくなった世界に神が目をつけて、今度こそ人が戦争をしないように神の作る神秘が必要な魔法を人に与えた。」
「でも、また戦争が始まりそうなんでしょ?」
「そうだな。神というのが何を考えているのか、俺にはわからん。ま、そう言うことなので世界の終わりが来る前にお前は帰らないといけない。のんびりしている時間はない。」
「は、はい。頑張ります!」
「じゃあ、まずすべき事を言うからな。まずは――――」
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