蝶か花か
118話目です。
「……と、言うわけで、今日の護衛にはこちらの香子さんも一緒に、みんなでいきます。」
「ちょっと、昨日の依頼の大地主の娘なんでしょ? 大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないから皆で行くんだよ!」
レイ先輩とお兄ちゃんが、ウキウキで依頼に行く用意を進める香子さんやティロちゃんに聞かれないように、小さな声で会議をし始めた。
一日ぶりに帰って来て一番最初に言われたのがこの話なら動揺するのも無理はない。
それに、香子さんのお父さんにバレないように今日のうちに全て終わらせ、安全に家に帰さなければならない。なんだか難易度が上がっているような気がするが。
「どうしてもって頼み込まれたから、ずっと拒否し続けるわけにもいかなくて……」
「それは分かったけど、今から行きなり集会所で、依頼なんて受けられるの? しかも、ちょうど良いくらいの難易度とか、無理じゃない?」
「そ、その時はほら、皆でなんか……協力してさ、が、頑張ろうぜ?」
「頑張るったって、ただ敵を倒すだけじゃなくて、他人の支援までしないといけないのに……」
二人は頭を抱えてしまった。確かに、普通に戦う分には全く問題は無いのだろう。けれど、実践経験のない香子さんに怪我をさせないように立ち回り、また倒せるように支援する。これらをするにはぶっつけ本番では不安すぎるだろう。魔法が使えない私もいるし。
「皆さん、お待たせして申し訳ありません。準備出来ました!」
意気揚々、準備万端といった感じで背負っている鞄に大量に荷物が詰め込まれている。
それを見て二人は更に頭を抱えてしまった。
――――
「ってことだから、ちょうど良い感じの難易度の依頼来てないか?」
「えぇ? ちょっと探してみるけど……ほぼ無いと思った方がいいわよ。簡単なのって人気だし、強い魔物とかは結社側が損害を受けることもあるから、そういうのが余りがちなの、知ってるでしょ?」
「まぁわかってるけど……でもなんとか探してみてくれ!」
「はぁ、分かったわ。じゃあ少し待ってて。結果が分かったら教えるから。」
「ありがとう!!」
集会所の受け付け、ルインさんも苦い反応だった。今の時刻は丁度お昼頃だが、集会所は早朝4時位から開いている。魔物は夜行性のものが多く、被害が発見されてから依頼として出される時間が丁度そのくらいなのだそう。で、例えば人が襲われたとか、農作物が荒らされたなどの言ってしまえば普通の獣的な被害の場合は、簡単に達成できて報酬ももらえるため、狩人達から人気なのだそう。
果たして、危険の少ない簡単な依頼は見つかるのだろうか……
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