藤の迷宮
117話目です。
「……それにしても、香子さんの魔法、触れたものを巻物に変える、でしたっけ? すごいですよね。」
朝食を終えて、香子さんと少し世間話的なものをしていた。
「ありがとうございます、くろねさん。触れたものというよりかは、本来は私がそうしたいと思った対象のみなのですが……お恥ずかしながら、まだ使いこなせていないんです。」
「でも、他の魔法は使いこなせてるんですよね? 私なんて基礎の基礎もできなくって、教わってもダメダメで……」
言ってるうちに悲しくなってきたが、事実だ。
「まぁ、一応訓練は受けていますし、魔法の先生もいるのですが、何分実践で使ったことがないので。魔法なんて、いざというときに使えなければ、意味がないじゃないですか。」
「でも、魔法を実践したことがないって、香子さんって、相当な箱入り娘さんですね。」
「はい……本当は私も皆さんみたいに、魔物をバッタバッタと薙ぎ倒す魔物狩りの仕事がしたいんです。」
昨日のあれはそんなに薙ぎ倒してないと言うか、むしろあの後バッタバッタと倒れたと言う方が近いが……
「なのに、お父様が私には危険だからって、魔物が出る可能性のある場所には護衛なしで行かせてくれなくって。」
箱入り娘も大変なんだな、と心の中で言った。これはきっと私にはわからない悩みだ。
「だから……だから、私も皆さんの依頼に着いていかせてください!」
「へぇ~……え?」
「皆さんと一緒に依頼を達成して、私もやれるんだって所をお父様に分からせれば、私も自由になれると思うんです。お願いします!」
あぁ、やはり私には一生縁のない悩みだろう。魔物のような自分よりも大きな化け物と戦うくらいなら、安全なところに居たいと私なら思ってしまう。
――――
「……と言うことで、私も皆さんの依頼に着いていかせてください!」
「え?! いやいやいやダメですよ! もし香子さんが怪我なんかしたら、俺らの首が飛びますよ!」
「私達、一族もろとも滅ぼされちゃうよ!」
まぁ、当然の反応だろう。言い方は別として、それなりに広い土地の領主の娘さんを戦場に連れ出して、挙げ句怪我をさせたとあったらただでは済まないはずだ。
「大丈夫です。自分の身は自分で守ります、皆さんに迷惑は掛けません。一度で良いんです、お願いします!」
「だ、団長さん、どうするの?!」
「え、でもやっぱり危険じゃ……」
「でも、こんなにお願いしてるのに……」
「うぐ……それでも安全の事を考えたら良くないし……」
「じゃあ、結社のみんなも呼んで、全員で行けば、この人数よりは安全になるんじゃない?」
「……なるほど? いやいや、でも……」
「大丈夫だって! 私達が絶対香子さんを守るから!!」
「うーーーーん……なら……」
「良いんだね? やったー!」
私と、まだ眠そうなルーノ先輩は置いてけぼりで、結社の皆を総動員する実質的な護衛任務が始まった……
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