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夜の世界

11話目です。

今回は以前より短くないかもしれないです。

「き、きみは……?」

「僕はアストラル。あんたは何て言うのさ。」

「わ、わたしはくろね……です。」

「クロネ?あぁ、兄さんの言ってた記憶持ちか。」

「兄さん?って誰?」

「さっきあったでしょ。赤い髪の人だよ。」


兄さん。どうみても少女だったが、兄さんなのか。それはともかく、その兄さんはいまどこにいるのだろう。


「兄さんと話したいの?」

「あ、う、うん。」

「じゃあ一つだけいっておく。兄さんはすべてを知っている。そこに理由はなく、ただそういう存在だから。」


そういう存在?夢の中だから、っていう?


「そして、その知識のすべてを誰かに教えることはできない。兄さんの持つ知識は過去から現在、未来までのすべての情報だから、未来の情報までを他人に与えるわけにはいかない。」

「君のお兄さんは、何て名前なの?」

「――――アーカーシャ。」


不思議な響きだった。聞いたことがあるような気もするが、私はその言葉の意味を知らない。この懐かしさは何だろう。


「ここにいたのか、アストラル。あぁ、君も来ていたのか。名前は……」

「くろねです。」

「そうそう。それだな。話の続きは部屋でしよう。来なさい。」

「は、はい」

「僕も行く!」


三人で部屋という場所まで向かった。その部屋には大きなベッドがひとつだけあった。


「そういえば、俺は名乗っていなかったな。俺の名はアーカーシャ。名前の意味は、俺もよく知らない。」

「よろしく、アーカーシャ……ちゃん?」

「ちゃん?ちゃんは要らない。アーカーシャでいい。」

「よ、よろしく、アーカーシャ。」

「うん。」


アストラルさんの言うことが正しければ、アーカーシャは私が戻る方法を知っているはず。それを第一に聞き出さないと……


「まず、きみが元の世界に戻るという話だが……」

「えっ?!は、はい!」

「結論から言うと、今の俺にはその問題は解決できない。」

「え……」

「というのも、俺の力の行使には条件があるからな。まぁ、その話は後回しにして、この世界の成り立ちから説明しよう。」

「よろしくお願いします」


アストラルさんはずっと黙って聞いているが、私の事をずっと見ている。少し怖い。


「君は、魔術という言葉を聞いたことがあるか?」

「あ、あります。この世界でも聞きました。」

「じゃあ、魔術と魔法の違いはわかるか?」

「わかりません……違うんですか?」

「違う。根本的に違うのは、使う「存在」だ。」

「存在?」

「魔術を使うのは人間で、魔法を使うのは人間ではない。魔術とは君の世界でも昔から用いられてきた、一定の手順を踏む、祈りや願い、呪いといった行為と似ている。」

「え、えーっと?」

「つまり魔術ってのは、具体的に何かを実現させる行為ではないってことだよ。」


分かりやすく説明してくれた。アストラルさんは案外いい人かもしれない。


「でも、魔法は君も見たことがあるように、普通ならあり得ないことも実現ができる。やろうと思えば隕石でも降らすことができる。」

「隕石も……?」

「あぁ、その通りだ。アストラルは隕石で例えたが、雨や、気候以外なら怪我や病気の回復も容易だ。」

「あ、私の魔法も……」

「病気や怪我の治療は、君がいた世界の人間が何代にもわたる研究を重ね、作り上げてきたものだった。しかし、この世界では魔法の「要素」乃解析さえできてしまえばあとは簡単だ。」

「魔法の要素?」

「魔法を作り上げる要素のことだ。空、風、火、水、地の五つから成り立っている。」

「それさえわかれば何でも出来ちゃうの?」

「あぁ、できるぞ。何でも。人を殺すことも、甦らせる事もできる。」

「蘇りも?科学でも辿り着けなかった最終地点なのに。」

「科学で辿り着けなかったから、魔法が辿り着いた。科学に出来ないことを魔法は出来るし、魔法に出来ないことを科学はできる。」

「そ、そうなんだ。」

「まぁつまり、この世界は君がいた世界よりも、人間の理想に近い世界だ。」

「な、なんで?」

「天候を自在に操ることはいつの時代でも雨風に苦しめられてきた人々が望むことだ。死者の蘇生は心ある生命がかけがえの無い人物に抱く理想だ。この世界は、人間が生きるには自由すぎる。」

「じゃあ、何で私達はこの世界に来たの?」

「さっきも言ったが、元の世界が限界を迎えたんだ。人間は、あの世界であれ以上に発展する事はできない。」

「そんなの、誰が決めたの。」

「世界自身が決めたんだ。この文明はここで終わる。終わりかたは強引だったが、そう定められたんなら仕方ない。」

「もう、戻れないの……?」

「人間が、さらに発展出来るという事を世界に見せつければいい。そうすれば、もう一度世界が戻って進み始めるだろう。」

「それはどうやれば……」

「この魔法の世界でも尚残っている、科学の世界の文明の証しを見つけるんだ。」

「文明の証し?」

「例えば、科学の世界の技術で作られたものや、親しまれていた風習などだな。」

「見つけて、どうするの?」

「証しを集める。具体的には、それに関連するものを集めたり、それが行動ならば実際にやってみることだな。証しが集まれば何かそれらしい分かりやすい事が起きるだろう」

「け、けっこう適当なんですね」

「適当でこんなことは言わない。お前はきっと成し遂げるだろう。」


未来が見えている。疑わしい言葉だが、妙に納得が行く。何か確信があるという目でまっすぐとこちらを見ているから、私も、出来るんじゃないかという期待がわいてくる。


「できるか?」


「…………やります!」

最後まで読んで頂いた方、誠にありがとうございます。

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