旅ゆけば
108話目です。
――――少しの間、風を感じる事に感覚を研ぎ澄ませていると、段々と風は弱まり遂には無風となった。そこで改めて瞼を開くと、結社の家の、私の部屋にいた。
どことも言えない路地でベガという子と一緒にあの場所に行ったのにも関わらず、今こんな場所にいるということは、あの場所は世界のどんなところにでも繋がっていて、どんな場所からでも行けるし、どこへでも行けるということなのだろう。
さっきの感覚をきちんと覚えているか、ザックさんに教わったように手に風をまとわせ、更に全身に移そうと試みたが、腕だけでもかなりの強い風で、カーテンが大きく靡いたので、止めておいた。が、この風魔法の感覚とさっきの風の感覚はやはり同じもののようだった。
その事に若干ほっとしながら、あるものの事を思い出す。
「……………………やっぱり、書いてある。」
図書館で借りてきた魔術の指南書。そこにはやはり風魔法についての事も書いてあった。しかし、指南書なんて言うからには魔法について簡単に解説されているわけでもなく、専門的な用語、しかも耳に挟んだことすらないような言葉ばかりが並べられていた。
これは無理だ、と思うより先に私の足はある人のところへ向かっていた。
「魔法を教えてほしい? 別にいいけど……」
「ありがとうございます、先生!!」
「先輩の次は先生? まぁ面白いからいいんだけども。」
カルソーヌ城下の近くの洞窟のなんだかよくわからない呪いを解いたときも然り、レイ先輩は魔法について明るい人だ。というのも、なにやら普通に魔法を使いよりも、魔法を解除することの方が難しいんだそうだ。チッタちゃんの屋敷の人形にかかっていた魔法を私の魔法で解くことができたのは、恐らくアーカーシャの手助けがあったからなんじゃないかと今では思う。
なぜならこの本にそう書いてあるから。
ということで、私が魔法をほとんど……というか、先頭で使えるような魔法を一つも使えないということを話し、レイ先輩、いや、先生に魔法を教えてもらうことになった。
「教えるからには厳しくいくわよ。」
……厳しい修行が始まる。
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