紛失
そんなことを思いながら自分の席に着き、HRが始まった。HRでは特に聞く必要ない話を聞き、すぐ下校の時間になった。
「おーい!悠太帰ろうぜ!」
綾人が大声で俺の名前を叫びながらこっちに向かってきた。
「ちょ!声でかいって!」
「えー、厳しいなー悠ちゃんは~」
「おい!なんだよその呼び方!」
「え?気に入った?じゃあこれからそうやって呼ぼっかな~!」
(まあ、別にいいか。)
「じゃあ、とりあえず帰ろうぜ。」
「そういや、悠ちゃんは何か部活でも入るの?」
校門出ようとしたくらいで綾人が聞いてきた。
「ん~俺は入らないかな、めんどそうだし。綾人は?」
「俺はサッカー部に入ろうかなって。」
「あーお前らしいな。」
「そうかな?あ、そうだ!悠ちゃん、連絡先交換しようよ!」
「連絡先?ああ、いいよ」
「よし、じゃあスマホ貸して。電話番号入力するから。」
「分かった。ちょっと待てよ…あれ?」
「なんかあったの?」
「スマホ落としたかも…」
「え!落とした覚えは?」
「全く無い。」
「そうか…じゃあ、悠ちゃんは来た道戻って探してみて。俺は職員室に行って、落としもので届けられてないか見てくるよ。」
「悪いな、ありがとう。」
「パンとこれで貸2だぞ!悠ちゃん!」
そう言うと、綾人は走って職員室に向かっていった。
「探すか…」
俺は来た道、トイレ、購買まで見たが、スマホらしきものは見当たらなかった。
「悠ちゃん、あった?」
「いや、なかった。そっちは?」
「こっちもスマホは届けられてないって。」
「そうか…」
「よし、ちょっと学校の外も見てくるわ!」
「いや、きっとないと思うぞ。」
「でも悠ちゃんって歩きでしょ?朝の登校の時、スマホ落としたかもじゃん!行ってくるわ!!」
「おい、待てって!」
(あいつ良い人すぎだろ!)
「俺も、もう少し探すか…」
「あの、これってあなたのですか?」
俺の後ろから見覚えのある声がした。振り返ってみると、あの夢に出てきた彼女だった。彼女が持っているのは俺のスマホだった。