救世主
(ま、どうせあの夢なんか俺が都合よく創っただけで、あの1年前の夢もただの偶然だろ。)
偶然で片付けていいのか分からなかったが、そうまとめて自分自身を納得させた。
「よし、授業終わるぞ~」
先生がチャイムの音と一緒に言った。号令を終えてクラスの奴らはみんな何人かでグループを作って話している。俺はと言うと…一人だ。
(あー!なんでもっと早く話しとかなかったんだよ!)
初日はクールぶってたせいで冷たいやつと思われたんだろう。誰も俺に話しかけてこなかった。逃げるように俺はトイレに向かった。
トイレを済ませて教室に戻るとすぐ休みの終わりのチャイムが鳴り、また授業が始まった。別に中学ではぼっちだったという訳ではなかった。まあまあの位置にいたと思う。2,3,4,限の授業を乗り気じゃないまま受けて、昼休憩の時間になった。今日は妹が早く学校に行くから弁当は作れないらしく、食べるものがなかったので俺は購買に買いに行くことにした。
「うわ、混んでるな~」
購買にはたくさんの人が居て、行列になっていた。
「とりあえず、並ぶか…」
並んで20分くらい経っただろう、ようやく俺の番が来た。
「すみません、パンとか売ってますか?」
「ごめんね~もう今日は売り切れちゃったの~」
「え…?まじ…?」
「ここの購買はみんな一斉に来るから、すぐなくなっちゃうのよ、あなた新入生?次はもっと早く来るといいわ。」
と購買のおばちゃんは教えてくれた。
「昼飯抜きかよ…」
「あれ?あんた昼飯ないの?」
教室に戻ろうとしていた俺にチャラチャラしている男が喋りかけてきた。
「あー、はいもう売り切れちゃってるみたいで…」
「そうか…だったら俺が買ったパン一つやるよ。ちょうど買いすぎてかなって思ってたからさ、ほら。」
「ありがとうございますってよく見たら一年前の夢にいたやつじゃ…」
「ん?夢?」
「い、いやこっちの話です。ありがとうございます。」
「ちょっと待ちなって、何年生?何組?名前は?」
立ち去ろうとする俺の袖を引っ張って聞いてきた。




