出会い
ベンチに座ると、綾人が言い出す。すっかり忘れていた。綾人に文句を言おうとしていたんだった。
「そうだ、昨日、お前があんな時間に帰ったから、すげー大変だったんだぞ?」
俺はあえて少し嫌味っぽく言う。
「ごめんって!でも、本当に心配したんだよ?悠ちゃん、二人きりでも女の子と喋れるのかなって。」
「まあ、それなりには喋れてたとは思うけど。」
そんな心配などいらないお世話だ。と言いたいくらいだが、実際、本当の事ではあるので、言い返すことなどはできない。
「ふーん、ご飯食べた後はどうしたの?」
「もう20時だったし、食べてから八重木さんはすぐ帰ったよ。」
「あ!それで、八重木さんの家まで悠ちゃんが、送り届けたってことね!」
「い、いや、お前何言ってんの⁉」
「まさか!適当に言ってみただけだよ!」
適当その言葉を聞いて安心した。まさか、ピンポイントで当ててくるとは。
(イケメンの勘って本当凄いな。)
「あー!ご馳走様!じゃあ、教室戻ろっか!」
昼ご飯を食べ終わり、俺達は教室に戻ろうとした。
「あ、そうだ!今からここから、教室まで、どっちが早く着けるか勝負ね?」
「は?お前何言って…」
「よーい、スタート!」
綾人は猛スピードで、屋上を出ていく。
「あいつは小学3年生かよ!……まあ俺はゆっくり行くか。
そうして、俺はゆっくり歩いて屋上から出ようと、ドアを開けた。
「痛って!」
「痛った!」
ドアを開けた瞬間に、ゴツンとおでこに何か当たる。俺以外にも「痛った」という声が聞こえる。きっと、誰かとぶつかったのだろう。
「ちょっと!どこ見てんの!痛いんだけど!!」
「ごめんなさい!すみま……ってあれ?」
よく見てみると、あの6組のツンデレ女、合崎だった。
「あれ?あなたって、あのプリントの男ね!痛かったんだけど!」
合崎は顔を顰め、俺に怒鳴ってくる。
「わ、悪かったよ、合崎。」
「え、なんで私の名前知ってるの?」
(あ、そうか、こいつは俺が先生に聞いて名前分かってるって事を知らないのか。)




