感謝
「ほら、早く!」
「わ、分かったよ。」
「じゃあ、朱音さん、さようなら!またいつでも来てくださいね!」
「うん!由利ちゃん、今日はありがとね!バイバイ!」
八重木さんは由利に軽く挨拶をし、俺達は家を出た。
「…」
「…」
(き、気まずい…由利の奴、絶対こうなるって分かってて言ったな!)
夜の8時、辺りは薄暗く、俺たち二人以外人はいない。
「ごめんね、家まで送るなんて面倒なことさせちゃって。」
八重木さんんが俺に喋りかける。
「いや、全然大丈夫です!むしろ、こっちが謝らなくちゃいけないくらいで、その、家に来させちゃって…」
「悠太君、ずっと私に敬語使ってる。私達、同級生だよ?」
「ま、まあ、そうなんですけど、やめ時が分かんなくて…」
「じゃあ、今やめよう!」
「え?でも…」
「じゃなきゃ、もう悠太君と喋らない。」
八重木さんがプイっと横を向く。
「わ、分か…った。こ、これでいい?」
俺は恥ずかしながらも、敬語をやめる。
「うん!ありがとう!」
プイっとしていた八重木さんの顔が笑顔になる。
「楽しかった!」
「え?」
「みんな優しくて、本当に良い人達だったよ!だから謝るなんてしなくていいよ、むしろお礼を言いたいくらいだよ!」
「そうだったんだ、てっきり嫌だったかと…」
「それに悠太君と仲も縮めれたし、本当に良かった!」
薄暗い夜道を八重木さんと二人きりで歩くことに、少し特別感を感じた。
「あ、じゃあ私の家ここら辺だから、もう大丈夫だよ!」
「いいよ、家まで送るよ。」
「もう時間も遅いし、ここからなら一人で帰れるから、悠太君も帰って休んで。」
「本当?じゃあ、気を付けて。またね。」
「うん!バイバイ!」
こうして俺達はそれぞれ家に帰ることにした。
「ただいま。」
「あ、お兄ちゃん!朱音さん、しっかり家まで送ってあげた?」
「あ、ああ。お、送ってあげたぞ。」
(まあ、送ったってことでいいよな?八重木さんもああやって言ってたことだし。)
「今日は楽しかった!また家に連れて来てね!」
「ああ、分かった。」




