遊び
「ところで、今から何するの?」
綾人がベットから飛び起きて言った。
「特にする事はねえよ。」
「何にもないの?」
「だから言ったろ?別に普通の家だって。」
「じゃあ…」
それまで黙っていた八重木さんが喋った。
「あっち向いてホイでもする?」
「……へ?」
「良いじゃん!八重木さん、ナイスアイディア!悠ちゃんもやるよね?」
「あ、ああ。やろう。」
(まあ、暇だし別にいいか。でもあっち向いてホイって、八重木さん結構子供っぽい所もあるのか?)
「まずは俺VS悠ちゃん!」
「分かった。」
俺と綾人で顔を向かい合わせる。
「じゃあ、いくよ?あっち向いてホイ!」
綾人の人差し指が、右に向く。
「あ、やべ!」
反射的に動かした顔が、綾人の指と同じ方向に向く。
「よっしゃ!俺の勝ち!」
(楽しい……くはないな。)
「次、八重木さんの番だよ!」
「じゃ、じゃあ、俺は見学で。」
綾人と八重木さんで顔を向かい合わせる。
(あれ?てことは、次もし俺と八重木さんがやることになったら、顔を見合わせなきゃいけないってことじゃねえか!)
「じゃあ八重木さん、いくよ?あっち向いてホイ!」
八重木さんが上手くかわす。
「そういうことか…素晴らしいよ、八重木さん。」
(いや、ただかわしただけだろ!)
「よし、いくよ?綾人君。」
「いいよ、来い!八重木さん!」
「あっち向いてホイ!」
綾人の顔が、八重木さんの指と同じ方向を向く。
「くそー!負けたー!」
「やった!」
(八重木さん、子供の遊びでめっちゃ喜んでる…まあ、そういう所も…)
「可愛い。」
「ん?悠ちゃん、なんか言った?」
「い、いや、何も!」
「まあ、いいか!よし、じゃあ次は悠ちゃんVS八重木さんだね!」
「お、おう。」
(なんか凄く緊張するな…)
「ちょっと!悠ちゃん、早くしてよー!」
(仕方ない、やるしかないか。)
「お、悪い悪い!じゃあ、早速…」
「お兄ちゃん、居る?」
妹が俺のドアをノックしてきた。
「い、居るけど、ど、どうした?」
妹が俺の部屋に入ってくる。
「今晩御飯の支度が出来たんですけど、良かったらお二人もどうかなって!」
「え⁉いいの⁉じゃあ、いただいちゃおっかな~!八重木さんは?」
「私もいただこうかな。」
「じゃあ、もう準備ができてるのでリビングにどうぞ!」
「よーし!あっち向いてホイの続きはまた今度な!」
「そ、そうだな!」
(なんか、ほっとした気持ちと悔しいきもちが混ざって複雑な状況だな…まあ、いいか。)