定期検診
はいじゃあ口を開けてくださーい
上顎右から6番の遠心がC 4番も…同じくC
朝からしっかり働いて偉いからA
食べ残しがあったからB
胸のサイズはC
おっと失礼。
こーれはよくない。心が粉々だ。
取っちゃった方がいいですよ。
いやいや、一生ものですからね、できるだけ残しといた方がいいですよ。
そんなこと言ってたら、他の部位まで悪くなりますよ。
ほーら、うわっ、腐っ。
はうぁんにーにうたえたんえす。
はい?
昨晩ニンニク食べたんです。
なるほど。どうりで。
切っちゃった方がいい。
エキストの準備を。
お待ち下さい先生。
お待ち下さいお客様!!
万の金券をショップから盗む男が現れた。
奴は場末の大黒屋ばかり狙う常習犯だ。
オレンジのアウターにオレンジのパンツにオレンジのスニーカーを合わせ挙げ句髪をオレンジに染め上げたその姿はさながらオルフェンの夕陽!
たった一人で現れ、現れたかと思えばありとあらゆる金目のものをかっさらっていく。
百貨店の商品券、新幹線の特急券、図書カード。
そう、図書カード!
本屋で小学1年生から6年生までの国語算数理科社会の教材を買い占め恵まれない子供達に匿名で寄付をする。それがこのオレンジ野郎の正体だ。
そんなオレンジ野郎の元に手紙が届いた。
これまでの仕事っぷりを評価してくれるのだろうか。孤児院の少女からの熱烈なファンレターかもしれない。少女の生い立ちを想像したら胸が張り裂けそうだ。期待に満ち満ちた表情でオレンジ野郎が封を切る。
【英語の教科書もください。】
まさかの要望。これまでしてきたことはさながら人をダメにするソファー。
物を盗む悪人のたった一滴ばかりの優しさにすら人はつけこむ。
オレンジ野郎はオレンジのアウターにオレンジのパンツにオレンジのスニーカーを脱ぎ捨てオレンジの髪を黒に染め上げ、白衣を着て歯を削り始めた。
おぉっと、こーれはよくない。麻酔しましょうか。