やってみなくちゃわからないでしょ?
全4話です。毎日更新します。
私はコーヒーが大好きである。
イタリアから直輸入したエスプレッソマシーンで作ったエスプッレッソを楽しむのが最近のマイブームである。コーヒー豆は、近所のコーヒー豆屋で量り売りをしているものを買っている。程よい酸味と苦味のバランスを楽しむブラジル豆も好みであるが、最近のお気に入りは、果物のような甘い香りを楽しむことができるグアテマラ豆である。
私はお気に入りのコーヒーミルで豆を挽く。丸みを帯びた本体と蓋のてっぺんに生えている大きなレバーが、プロペラ型のアイテムをつけたロボットみたいで、愛くるしい。木製の柔らかな丸みを帯びたクラシカルなデザインは、私の手になじむようにフィットする。ゴリゴリと手に響く振動と心地よい音は、私の一日の始まりを奏でるセレナードのようである。芳醇に香るコーヒーの匂いが、私を憩いの空間へと誘う。
挽きたてのコーヒーをエスプレッソマシーンにセットし、コンロに置く。5分ほどで、最高のエスプレッソが出来上がる。この一杯で、最高の朝が迎えられる。
窓から入り込む少し冷たい風が部屋中にエスプレッソの香りを運ぶ。
私の手に比べて少し小さいエスプレッソカップを、人差し指、中指、そして親指の三本の指で、優しく持ち上げる。口の中に流れ込むエスプレッソは、旨味、香り、コク、酸味、苦味、全てのものを凝縮した液体状の琥珀である。
私はイカ飯も大好きである。
イカにご飯を詰めて、醤油ベースのタレで煮込んだ料理である。歯ごたえのあるイカに染み込んだ醤油が、塩辛くも甘辛い絶妙なハーモニーを奏でる。イカの中に詰められたご飯は、適度な弾力を保ちつつも、イカの弾力を邪魔しない程度の歯ごたえで、舌の上で踊る。ぶつ切りにされたイカの足が、アクセントとして絶妙な機能を果たす。口の中に時折現れるイカの足の弾力は、頭から胴体まで単調な弾力になるイカ飯の弱点を見事に緩和している。おかげで飽きることなくイカ飯ひとつ丸ごとをペロリとたいらげてしまえる。
イカ飯がひとつあれば、朝食、昼食、夕食を問わず、一食がこれで賄える。私の腹と心を十分に満たしてくれるのだ。
さて、私はコーヒーもイカ飯も大好きである。
しかしながら、私の大好きなコーヒーと私の大好きなイカ飯は相性が悪い。
私は、それが残念でならない。
私は私の大好きなコーヒーと私の大好きなイカ飯を同時に美味しく味わいたいのである。
コーヒーに合うイカ飯が食べたい。この想いが私の挑戦の始まりだ。