名探偵「明智ンパ」、爆誕!!
Twitter100人突破記念閑話
第4章北海道奪還作戦決行編を読み終えた方は読んでよし!
※ンパの一人称は「ンパ」です。決して三人称で書いているわけではありませんので、ご注意ください※
ンパの名前はンパ。
由緒正しきヴァンパイア族の末裔にして、ロマン溢れるレザーカノンを操る可愛い女の子なのです。
そんなンパには、最近ハマっている物があります。
それも仕方のないことないことだと思うのです。
この地球という惑星には、以前の世界よりも格段に面白い文化が満ち溢れているのですから。
さて、今日もンパは賢人さんから貰ったお小遣いを握り締めて、秋葉原に赴きます。
「行って参るのです」
「おう、気を付けて行ってくるんだぞ」
賢人さんが笑顔をで手を振ってくれたので、ンパも笑顔で返すのですよ。
その後、すぐに家を出て、自転車の下へと向かいます。
これは絶対の絶対に秘密なのですが、いつも賢人さんには電車賃というのを貰っています。
ですが、ンパは気づいてしまったのです。
自分の足で秋葉原まで行けば、電車賃分のくじが回せるのですよ!!
これに気が付いた時、ンパは自分のことを天才だと自覚しました。
そんなことを考えながら、ンパは二時間かけて秋葉原へと到着したのです。
早速、自転車を降り、いつものサブカル専門店へと入って行きます。
「おい、あの美少女が今日も来たぞ!」
「まじだ! ネットの噂通りだな!」
「どゅふっ……どゅふふふふっ」
「おい、変態は近づけさせるなよ! 美少女親衛隊は、全力で彼女をお守りするのだ!」
今日もこのお店は賑やかなのです。
でも、いいことです。賑やかということは、この文化が浸透してきているということ、ンパは素直に嬉しいのですよ。
「いっっっっっらっしゃいませ~」
レジの方へと向かうと、いつもの変な挨拶をしてくる眼鏡店員さんがいました。
さあ、今日もこの時が訪れました。
「あっ、ンパさんじゃないですかぁ~。今日もやっていきますぅ?」
すると、眼鏡店員の横からスッとギャル店員さんが現れて、声を掛けて来ました。
ンパはすぐにコウモリのがま口財布から一枚の紙きれを取り出し、カウンターの上に置きます。
「『名探偵アイドル戦争』一回頼もうっ! 明智フィギアが欲しいのです!」
「は~い、毎度言ってますが一番くじはランダムなので、欲しいものを口に出したところで当たるとは限りませんからねぇ~。じゃあ、いちまいお引きくださぁ~い」
「むむむむむむ…………これなのですっ!!」
ンパは箱の中から一枚のくじを引き、天高く掲げた。
「はーい、じゃあ先にお会計しちゃいますね~。一回七百円なので、三百円のお釣りになりしゃっさいまぁ~す。んじゃ、パパっと開けちゃってください」
紙切れがピカピカのコインになって帰ってきたところで、ンパは当たるように願いながらペリペリとくじを開けてみた。
『G賞、明智ラバーストラップ』
それはンパが欲しいものとは程遠い、アルファベットが掛かれているくじだったのだ。
ンパが欲しいのは、A賞の明智フィギアなの!
「……ふふっ、今日も負けなのです」
袋に入れてもらった明智ラバーストラップを手に持ちながら、ンパはサブカル専門店を後にするのでした。
めでたし、めでたし。
……。
…………。
と、今日はいつもとは一味違うのです!!
今日の目的はもう一つあります。
このために今日までお手伝いをして、お小遣いを溜めてきたのですから。
サブカル専門店のすぐ隣にある、本に特化したサブカル専門店。
そこにンパは入って行きます。
すると、目的の物は入ってすぐのところに陳列されていました。
残り一冊でしたぁ!
危なかった!
ささっとその本を取り、レジへと向かいます。
すると――。
「ぬぉおッ!? アイドル戦争~明智編~が売り切れになってるではござらぬかぁ!?」
「なッ!? 今日こそと思ってきてみれば、また売り切れではないかぁ!!」
負け犬の遠吠えが後ろから聞こえてきたのです。
ンパは勝ち誇ったように、手に持っている本を天に掲げ、鼻息を鳴らしました。
「最後に勝つのは美少女なのです!!」
そう言い放って、ンパはレジの列へといそいそ並びます。
「くッ! 確かに美少女だった……」
「ドクンッ!?」
「くっそ、かわぇぇなぁ」
また負け犬の遠吠えが聞こえてきました。
ンパは勝ち誇ったように、お会計を……お会計を……お会計を……。
「あのー、お客様?」
「た……」
「た?」
「足りないのです……」
ンパとしたことが、計算を間違ってしまいました。
税金なるものの計算を考えていなかったのです。
表示されている金額に、ほんの少しだけお財布の金額が足りていない……。
「あのー、キャンセルでよろしかったですか?」
申し訳なさそうに店員さんが聞いてきた。
でも、仕方ないのです。
これはンパのミス、これ以上他のお客さんに迷惑を掛けるわけにもいかない。
「ごめんなさいです」
ペコリと頭を下げ、レジから立ち去ろうと体の向きを変えた。
その時だった。
「ほら、何諦めてるんだ。諦めたらそこでゲームオーバーだぞ?」
振り向いたすぐ後ろに、救世主が立っていたのです。
ンパをこてんぱんに打ちのめし、この世界へと誘ったちょっとだけ憧れの人。
「ほ、蛍さん!!」
ンパがそう言うと、いつもの「やってやったぜ」というような笑みでンパの頭をガシガシと掴んできた。
そして、蛍さんの財布から一枚の紙きれを取り出し、カウンターの上に置いてくれたのです。
「ほれ、足りない分は俺が出してやるからさっさと会計しちゃえ」
「は、はいなのです! 蛍さん、大好きっ!!」
こうしてンパは目的の本を入手することに成功したのでした。
「だ、誰なんだ!? あの男……」
「ぼ、ぼ、僕たちのンパ様にっ!! 無礼な!」
「解せぬ、解せぬ、解せぬ、解せぬ、解せぬ、解せぬ……」
「パージッ!! あの男、パージだ! パージの刑だ!!」
再び、負け犬の遠吠えが……。
「お、おい……ンパ、お前変な信者が多いな。何かあったらレーザーカノンぶっ飛ばせよ?」
蛍さんが顔を歪めながら、そんなことを言ってきました。
ンパは胸に拳を力強く当て、答えます。
「もちろんです! あの身を木っ端みじんにしてやりますよ!」
「いや、お前の場合はこの辺り一帯を木っ端みじんにしかねないから、空に向かって放てよ」
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翌日のことです。
蛍さんが昨日、なぜ絶体絶命なンパの下に現れたのかが判明しました。
本人は頑なに「ん? たまたまだよ、たまたま」と言っていましたが、ンパは納得がいかなく賢人さんに尋ねてみました。
すると、簡単に応えてくれたのです。
――名探偵蛍になってたんだよ。蛍はなまじ頭だけは良いからな、勉学の方はからっきしだけど。
その言葉でンパは気が付いてしまいました。
頭がいい蛍さんにできるなら、天才のンパにもできるのでは!?
ということで、早速明智様の衣装を揃えてみました。
ンパのお小遣いでは衣裳は揃えられないので、ンパのことを甘やかしてくれる恵さんに頼んでみると、
――コスプレしたいの!? やるやる、私が衣裳作ってあげるよ!! こりゃあ、腕が鳴りますなぁ。
と、二言返事で事が進みました。
どうやらンパには話術の才能もあるようです。
それから三日後、本当に衣裳が届きました。
完璧です、誰がどう見ても完璧な再現度です。採寸もンパにピッタリでした。
でも、どうやって三日で作ったのでしょうか、恵さんの謎は多いままです。
では、装備を説明いたしましょう。
名探偵アイドル戦争に出てくる明智様のトレードマークでもあるパイプ。
煙草……ではなく、武器として使うのが明智様流。
それに探偵帽子に探偵ポンチョ。
さらにはスーツを纏うことで、探偵感が増すのです。
ただし、恵さんの送ってきたスーツのパンツはなぜかズボンではなく、スカートでした。
でも、まあ、いいでしょう。
可愛いので、ンパはとても気に入っています。
「事件の匂いがするのです」
賢人さんの仕事椅子に座り、くるくると回りながらそう言ってみました。
すると――。
コン、コン、コン、コン。
と、部屋の扉が音を鳴らし始めました。
少しだけびっくりしながらも、ンパは扉を開けてみます。
「ど、どちら様ですか?」
本当はこの部屋に勝手に入ってはダメなのです。
賢人さんに怒られます。蛍さんなら秘密にしてくれると思うので、蛍さんであることを祈ります。
そして、扉の先にいたのは思っても見ない子でした。
「クゥ!」
蛍さんの精霊、クウちゃんだったのです。
恐らく自分では扉を開けられないので、体当たりしていたのでしょう。
ンパは少しだけホッと胸を撫でおろしながら、クウちゃんを抱き上げます。
クウちゃんは猫みたいです、体が液体で出来ているのでは? と毎度思ってしまいます。
胴体を持ち上げると、びよーんと伸びるのです。
可愛すぎます。
「どうしたのですか? クウちゃん」
「クゥ!」
「ごめんなさい、ンパには蛍さんみたいに言っていることは分からないのです」
「クゥ?」
「あっもしかしてアイスのお時間ですか?」
「クッ!!」
どうやら正解みたいです。
ンパはそのままクウちゃんを抱えながら部屋を出て、キッチンへと向かいます。
そして、冷凍庫の中からクウちゃん専用のお餅に包まれたアイスを取り出し、封を切ってあげます。
「萌え萌えキュンッ!」
ついでに美味しくなる魔法も掛けてあげます。
これは何度かメイド喫茶で働いた時に教えてもらった、なんでも美味しくなる魔法なのだそうです。
これの凄いところは、スキルや魔法がなくとも美少女ならば誰でも使えるというところです。
これは前の世界でもなかった、新発見ですよ。
この世界は本当に謎で満ち溢れていて面白い。
今、クウちゃんは無我夢中でお餅と格闘しています。
基本、食べる習慣がない精霊は食べ方が下手くそなのです。
食べたい、と、お餅が口に纏わりついて食べずらい、の気持ちが戦っています。
頑張れです!
ということで、ンパは家の中を色々と歩き回って見ることにしました。
事件は自分の足で探すのです!
まずはキッチンのすぐ傍にあるリビングから始めます。
ここにはぽんちゃんの寝床があるので、その寝息しか聞こえてきません。
みなさんは今、学校というところ通っているので家の中はシンと静まり返っています。
なので、あそこに行くことにしました。
「お邪魔しますなのです」
そっと、ゆっくりと蛍さんの部屋を覗き込んでみます。
「あれ、いないです?」
小さな声で言ってみるも、反応がありません。
思い切って扉を開けてみると、そこには蛍さんの影も形もありませんでした。
とりあえず入ってみます。
蛍さんは部屋に勝手に入ったくらいでは怒らないので、そこまで気分は重くありません。
「おっと、これは事件では!?」
ついに自分の足で事件を見つけてしまいました。
そう、事件は蛍さんの部屋で起こっていたのです。
いつも蛍さんがゲームをしているゲーミングデスクの上に置かれた一枚の紙切れ。そこにはこう書かれています。
『新城秋ソロツアー 会場:日本武道館 日時:2021年7月17日 開場時間:16:00~ 開演時間:16:30~』
そして、今日の日付が「2021年7月17日」で、今の時間が13:50なのです。
そう、事件はここで起きていた!
ンパは慌てて、そのチケットを懐に仕舞い、家を出ました。
一回へと降り、自転車に跨ります。
「行きますよ! ガブリエル二号!!」
武道館はンパも知っています。
なぜなら秋葉原からそう遠くはないからです。
ガブリエル二号を走らせ、約二時間後。
会場に到着すると、
「あれ、どうしたの? ンパ」
平然とした表情の蛍さんが、知らない人と一緒にいたのです。
どうやらグッズを買い終え、会場に入ろうと待っていた様子です。
ンパはガブリエル二号から降り、息を切らしながら蛍さんにあれを渡します。
「ハァ……ハァ……チ、チケット忘れてたので持ってきました!」
そう言うと、驚いた様子でこちらを見てくる蛍さんとそのお友達。
ふふっ、ンパの天才ぶりに驚いているようですね。
「あっ、ああ、それね……まあ、サンキュ。それよりもその恰好どうした? コスプレか?」
なぜか蛍さんの返しにキレがありません。
「雨川さん、ちゃんと言ってあげないと可哀そうですよ」
すると、その隣のお友達さんがそんなことを言い出しました。
「えっ、加賀谷さんって正直者ですね。こういうときは流したほうが無難でしょ」
「いや、自衛官としてちゃんと報告はするように教わっているので」
「うわぁ、出たよ。社会人の報連相」
二人でブツブツと何かを相談しています。
というか、チケットを一向に受け取ってくれません。
どういうことなのでしょう。
「蛍さん、これチケットです!!」
「あっ、いや……それンパにやるよ」
「えっ?」
「えっと、それな……余り分なんだわ。先輩か賢人上げようと思ってたんだけど、生憎二人とも都合合わなくてな。それで家に置いてきたんだ」
ななな、何と……。
ンパの早とちりだったようです。
で、ですが。
「い、い、いいんですか!? こんなに高価な物、ンパにくれるんですか!? ンパ、ライブなんて初めてです!!」
「お、おう……頑張ったご褒美だな」
「はいなのです!!」
こうして、ンパは人生はじめてのライブに参加することになったのです。
――ライブ中。
「ほ、ほ、蛍さん!! 音! 音が凄いです!! 耳がキーンって、心臓がドンドンしますよ!!」
「分かったから、一旦落ち着け」
「あははは、変わった子だねぇ」
――ライブ後。
「蛍さん、蛍さん!! ステージの上、もの凄く暑かったです、汗びっしょりになっちゃいました。何で何でしょうか!?」
「……コスプレしてたからなのか!? だから、ンパを選んだのか!? 俺もコスプレしたらステージに立てるのか? 新城秋の隣に立てるのか!?」
「お、落ち着いてくださいよ、二人とも。ンパさんは可愛いですし、明智さんは新城秋さんの出てるアニメの登場人物なのでたぶん必然ですよ」
名探偵「明智ンパ」……続く!?
こちらのイラストは書籍1巻の口絵に使用されたイラストになります。
是非、書籍の方もよろしくお願い致します!!