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20 悪役令嬢の兄と婚約する?

 公爵夫人は荷が重すぎるがカーマイン様のことは嫌いじゃない。正直に言えばやはり顔が好きだ、大好きだ。

 子供の頃から一緒に遊んでいたせいか、顔を見ただけで緊張するようなことはもうない。これがゲーム開始の15歳くらいで初対面…だったら大変なことになっていた。

 動いているのに感動して土下座して拝んでいたかも。

 兄のように柔和なカーマイン様とか殿下のように上品なカーマイン様は全く想像できない。

 普段は粗雑な感じなのに、たまに見せてくれる優しさとか気遣いとか…、ちょっと弱い面にも萌える、とても萌えた。

 絶対に大切にしてくれると思うから、一緒に暮らしても仲良くやっていけそうな気がする。

 正式に求婚されたわけでもないのにあれこれ考えるのも変かな。

 いや、でもカーマイン様のあの態度は…と思っていたら、お爺様に呼ばれた。お兄様もいる。

「正式なものではないがルティアに婚約の打診があった」

 え?カーマイン様から、もう?

 と、思ったら違った。殿下の護衛隊にいた治癒士様だった。ちょっとガッカリ…が顔に出てしまったかも。

 そうかぁ。少ししか話していないのに何が良かったんだろ。

「伯爵家の三男だそうだ。殿下の護衛部隊にいるほど優秀な方だ。三男とはいえ時期がくれば爵位も頂けるかもな」

 爵位なしでも殿下の護衛部隊で治癒士兼薬師。魔力は使えなくなることがあるかもしれないが、薬師ならば食いっぱぐれることはない。

 何よりゲームとはまったく関係がない。

 概ね希望通りの条件でイケメン。

 でも…、即座に頷けない。

 黙り込んだ私の肩にお兄様がぽん…と手を置いた。

「カーマイン様からのお話だと思ったか?」

 すこし迷ったが頷いた。

「ふむ…、あの坊主は初めてこの地に遊びに来た時からルティアを嫁に欲しいと言っておったからな」

 初耳だ。

「だが……、公爵家な上に、なかなかの男前。あんなヤツにうちの可愛い孫をポイ捨てされたらたまらんからな。最初の頃は子供の戯言だと思っていたが……」

「お爺様、カーマイン様はそういった器用な方ではございませんよ」

「あんなに男前なのになぁ」

「男前でも根は真っすぐ純情な方です」

「では公爵家のほうとは話を進めて良いのだね?」

 お兄様に聞かれて首を傾げた。

 なんですと?

「ウィスタリアの言う通りだったな。ならばルティアが高等学園にあがる前に婚約を済ませなくては」

「高等学園でルティアが不特定多数の男に目をつけられるくらいなら、カーマイン様の婚約者のほうがましだからね。彼なら寄って来る害虫も駆除してくれる」

 ましって、お兄様、何を基準に?私、そんなにモテませんよ?今までも言い寄られたことなんかないし。

 それにしても、婚約って…、え、婚約ってあの婚約?

 最終的に結婚しちゃうヤツ?


 翌日…、寝込んで三日目の朝。

 カーマイン様がそれはもう嬉しそうな笑顔で私を出迎えてくれた。

「おはよう、ルティア!」

「おはようございます…」

 眩しい、笑顔が眩しすぎるぜ。

「あの……」

 お爺様とお兄様に正式に話が決まるまでは言うなと口止めをされている。…されてないのか?

 戸惑う私に小さな声で言う。

「まだ皆には内緒、だな。早く言いたい気もするが、我慢する」

 内緒だとわかっているようだが、顔が緩みまくり声も弾んでいる。

 これ、絶対にバレるよね。


 めちゃくちゃわかりやすいカーマイン様のせいで、これまでのアレコレを察していた全員に伝わってしまった。うちのメイド達はもちろん、村人にも広まってしまい、たまたま顔を合わせた殿下にまで『婚約おめでとう』と微笑まれた。


 貴族の結婚は家同士のつながり。

 当人同士ではなく顔達も巻き込んだ一大イベントだ。この後はお父様達が話を進めてくれることになる。

 夜、落ち着いてからセラとローズに『まだ内緒だけど』と報告をした。

「うんうん、内緒だけどカーマイン様の態度でバレバレだよねぇ。あれで気づかない人はいないよぉ」

「ルティアは可愛いから兄貴が惚れるのもわかるよ」

 ローズは以前から気づいていたようで、セラはぼんやりとしかわかっていなかった。

「ってことはルティアがお義姉さんになるのか」

「そ…、そうなるのか。なんか、変な感じ」

 公爵家に嫁げばアーウィン様が義父様。

「ローズがアーウィン様と結婚したら母親?ローズママってこと?」

 ローズが苦笑する。

「私の道のりは険しいけどねぇ。でも、公爵家にはカーマイン様がいるし、孫ができれば孫にも継承権が発生する。出産年齢の壁がないから長期戦で頑張るよ!」

 セラが『結婚かぁ…』と呟く。

「そうだよね。いつかはするんだよね」

「前世の記憶があるから…さ。働く女性も良いかな、とは思うけど…。アーウィン様と結婚できなかったらまた一生、独身かもぉ」

「そんなに…、好きなんだ」

「一緒に暮らしていなかったら、ここまで好きにならなかったかもしれないねぇ」

 グロッシュラー公爵は忙しい。領地経営や王都での仕事、人付き合い。領地のことは管理人に任せっぱなしで優雅に暮らしている貴族も多いが、グロッシュラー公爵は年に何度か領地まで足を運んでいる。

 多忙を極める中、子供達との時間も大切にしていた。

 結果、一緒の屋敷にいるローズとも一緒に食事をしたりお茶をしたり。時には買物や劇に連れて行ってくれた。

 過ごす時間が長ければ情もわく。

 なんとなく全員で黙り込んでしまったが…、思い出した。

「そういえばローズに聞きたいことがあったんだ」

「なぁに?」

「竜の加護って裏設定?魔法の二属性はチートの部類だよね?」

「あぁ…、それね。ルティアちゃんに加護がついているのは知らなかったし、二属性も予想外のことだよ。竜がいるって設定はあってもゲームに竜はほとんど出てこないし」

 モブにチートな裏設定はないか。

「そう…だよね」

 ゲームの世界に酷似しているが、ここはゲームとは違う物語で進んでいる。

 二属性になったことはお兄様とセラ、ローズしか知らない。お爺様にも話したが、しばらく秘密にしておいたほうが良いと言われた。

 カーマイン様との婚約よりも重要機密っぽい。

 過去に二属性がいなかったのか、居た場合、どういった扱いだったのかをお兄様が調べてくれるとのこと。

「ルティアちゃん絡みの裏設定はぁ…、あんまり良くないものだから黙っていたけど」

 もう言ってもいいかなと教えてくれた。

「ウィリタリア様は超シスコンでヤンデレ気味なんだよぉ」

「………ヤンデレ?」

「ぬるい設定のゲームだからぁ、そう簡単に監禁とか近親相姦はないと思っていたけど、ちょっと心配してたの」

 だから私を見つけた時に声をかけた。

「ウィスタリア様がシスコンを拗らせたら私が察知できるし、セラなら止められるでしょ?」

 ローズは製作者側にいたので設定に詳しいし、絵を描くために観察する癖がついている。

 セラは男爵家よりも格上の公爵家令嬢で、物理的にもお兄様を止められる。うん、鉄拳で止めそうだよね。

「早い時点で教えてルティアちゃんが挙動不審になって、ウィスタリア様が警戒したら…ねぇ」

 ヤンデレ発症はちょっと怖い…かも。お兄様のことは大好きだけど結婚したいとは思わない。

「それを教えてくれたってことは、ローズから見てもう大丈夫ってこと?」

 頷いた。

「カーマイン様との婚約に反対してないんでしょ?ってことは、カーマイン様になら嫁にやってもいいってことじゃないかなぁ」

 花嫁の父かっ?

「ルティアのお兄様に負けないくらい、うちの兄貴もかっこいいからね!」

 セラが『うん、決めた!』と言い、何を?と聞く前に勢いよく言った。

「私、殿下のプロポーズを受けるよ!」

 私だけでなくローズまでかなり驚いていた、いや、マジ…で?

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