02
ギリギリの投稿になってしまいました。
今回はそこそこあるので楽しんでいただけたらと思います。
「小十郎。小十郎……ッ!」
誰かの名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
どこかで聞いたことがある声だ。
遠い昔に聴いたことのある声。
そのときもこうやって何度も起こされたような気がする。
あれは――誰だったっけ?
「うわ……ッ!」
目を覚ますとすぐに叫び声をあげた。
自分の周りを雪のような銀が世界を包み込み、見知らぬ少女がのぞき込んでいれば、誰だって驚きくらいはするだろう。
「おお! 目覚めたか。小十郎」
そう俺に声をかけてくるのは、どこかで見たことあるような絶世の美少女だった。
妙に顔が近い。どうやら小虎は膝枕をされているようだった。
なにかは分からないが、とてもいい香りが小虎の鼻腔をくすぐる。
甘ったるくもなければ、きつくもない、さわやかな香りだった。
その香りが小虎の身体を駆け巡り、細胞の一つ一つを覚醒させていく。
……。
「だ、誰……ッ⁉」
「おい! 先ほども名乗っただろう。また忘れたのか」
目の前の少女は、小虎がそう言うと怒った様子になり文句を言ってくる。
さっきも名乗った?
たぶんだけど、そのままの意味だろな。なら、この少女の名前を知っているはずなんだけど……。俺、今日何してたっけ……。
小虎は目の前の少女が言った言葉の意味を考えていた。
しかし、眠っていたため頭が働いていないのか、なかなか思い出せない。小虎は今日の出来事を思い出そうとする。
昨日みたいにまた昼寝していたのか。いや、違うはずだ。
そんなことが頭の中を駆け巡る。
そして。
「…………伊達政宗?」
「そうだ! ようやく思い出したか、小十郎。いきなり倒れたからびっくりしたぞ」
小虎は思い出した。
目の前の少女――政宗は小虎がいきなり倒れて、それを心配してしたことを伝えてくる。
たしかに小虎は記憶が途切れる直前、この少女の名前を聞いていた。
しかし、なぜ気を失ったかは覚えていない。――なんでだっけ。
「そうか。それは悪いことをしたな」
「ほんとだ。まったく、小十郎は……」
小虎は、ずっと膝枕され続けるわけにもいかないと思い、政宗にそのことを謝りながら身を起こす。
政宗は、まだぶつぶつと小言を言っている。
この子はいったい? それに……。
小虎は初めて会った時から気になっていたとあることを訊いてみることにした。
「なあ、その『小十郎』というのは?」
「はあ……ッ⁉」
政宗から返ってきたのは、驚嘆に満ちた言葉だった。
「小十郎はおぬしの名前であろう」
「いやいや」
政宗の言葉に否定の返事を小虎はする。
しかし。
「いやいやいや」
そのまま政宗にさらに否定されてしまう。
どうしてそうなるんだ。
「いやいやいやいや」
「いやいやいやいやいや」
どっちも引かない押し問答が始まる。子供の所業みたいだ。
「そもそも、なんで見知らぬ俺のことを『小十郎』なんて呼ぶんだよ」
小虎と政宗はお互いが自分の主張を曲げず、とうとう小虎がなぜそう呼ぶのかを聞くことでその問答は終わった。
しかし。
「? それは小十郎だからだろう」
うまく言葉のキャッチボールができてなかった。
小虎は政宗の返答にそう感じた。
「あのな、俺には『小虎』って言う立派な名前があるの」
「何言っておるのじゃ。おぬしの正式な名前は『景綱』であろう」
まったくもってかみ合わない。どうすればいいんだ。
小虎は政宗の言葉に途方に暮れていた。
そんな小虎を見かねたのか、政宗がそのことについて説明してくれる。
「いいか。よく聞くのだぞ、小十郎。
われは伊達政宗の魂――幽霊みたいなものじゃ。
いつもは〈霊界〉と呼ばれる――というかわれが勝手に呼んでいる常世と現世の狭間みたいなところにいるのだ。
たまにこっちに来て、わが子孫は……とか、いまの仙台は……とかを見守ってたんじゃが……。気付いたらこんな姿になっておった」
政宗は小虎にそれを見せるように、その場でくるっと一回転する。
白金の髪が優雅に舞い、その身にまとった服がふわっとなる。
その姿を小虎は、その姿をきれいだと思って見惚れてしまった。
「こんな姿というのは、その女の子のような姿ということか?」
「そうだ」
小虎の疑問に答えてくれる政宗。
「でな、われはもともと男のはずじゃったんだが、気づいたら女になっておった。
これはどうにかせねばと思ってみたが、われ一人ではどうしようもなくてな。
だから、われの右目である『片倉小十郎景綱』に助けを求めようと思ったのじゃ」
政宗が自信満々にそう説明する。
要約すると、いつも間にか女になっていてピンチ。小十郎に助けてもらおうといったところか。……よくできた設定だな。
小虎は政宗の話を聞いて、そんなことしか思っていなかった。
きっとどこかのお嬢さんが作った設定の遊びなのだと。
そんな非常識なこと起こらないからと言う、世間一般の常識で判断してだ。
だから。
「さて、お嬢ちゃん。そろそろ帰らないとお母さんに心配されるよ。それに人の家に勝手に入ることはいけないことだから、今度からやっちゃだめだよ」
と。小虎は目の前の政宗と名乗る少女に言う。
しかし。
「むう、信じてないな。小十郎」
小虎は、いままでのあまりの衝撃のため忘れていた。
「なら、それが本当だという証拠を見せよう」
自分の部屋が一面銀世界になっているという、非常識な現実を。
「よし、見ておけよ」
そう言うと政宗は立ち上がり、虚空から一丁の銃を取り出す。
「はあ……ッ⁉」
小虎は素っ頓狂な声を上げるのだった。
お読みいただいてありがとうございました。
今回はそこそこの分量はあったと思います。まだまだ少ないと感じる人もいるとは思いますが、作者はこのくらいのペースで投稿しようと思っています。
よろしければ、感想や評価などをお願いします。お待ちしています。
次回は明日の夜ごろになります。
また呼んでいただけると幸いです。




