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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第四章
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仲直り

 街に出た悠魔だったが、この街には彼の知り合いは、リウスとクラウくらいで、その二人を訪ねたが、ちょうど仕事で、別の街に行ってると言われた。


 こうなると王宮に戻るか考えてると、もう一人この街に知り合いがいる事を思い出し、そこに向けて歩き出した。




 悠魔が向かったのは、この街にある魔道具店だった。


 彼が、この店を訪れるのは、二度目で、店のドアを開け中に入ると、前と同様に、気怠そうな表情をした女性がカウンターに座り、本を読んでいた。


 彼女は悠魔の存在に気がつくと、一瞬間を置いて勢いよく立ち上がる、その時に彼女が読んでいた本が、床に落下する、それと同時に彼女は悠魔の正面に移動して、彼の襟元を掴み上げた。


「ちょっと、聞きたい事があるの!」


「ちょっ、チノさん、苦しいぃ」


 彼女は、悠魔の襟元を掴んだまま、勢いよく前後に振る、どうやら聞きたい事があるようだが、まずは前後運動をやめてほしかった。


 多少強引だが、無理やり彼女を引き離し、彼女から距離を取る、チノは興奮からか肩で息をしていて、取り合えず落ち着くように、説得を開始する。


「まぁ、落ち着いてください、何が聞きたいんですか?」


 落ち着いた彼女を見て、話を始めた。


「どうやって、エリクサーを作ったの教えなさい⁉」


 どうやら彼女は、先日リボーズが、クリルの為に持ち帰ったエリクサーの事が気になっていた様で、彼を問い詰めると、出所は悠魔だと言う事がわかり、一度話を聞きたかった様だったが、チノは基本的に引き籠りのモヤシっ子で、とても自分一人ではエストアまでは行けなく難儀していた。


 そこに、ちょうど悠魔が現れ、彼女は飛んで火に居る夏の虫、カモがネギを背負ってやって来た、と彼に掴みかかった。


「エリクサーの事は、秘密です」


 流石に彼女に、生成方法を教える訳にはいかなかく、もし彼女が生成方法を知れば、彼女も自分と同じく、狙われかねない。


 その事を説明するが、彼女は別に気にする事なく、自分を指さす。


「あのねぇ、貴方なら兎も角、一応私はこの国の王宮魔工技師よ、あのバカ魔王の庇護下にあるの、誰も好き好んで、魔王にちょっかいなんかかけないわよ」


 彼女の言葉には説得力があった、リボーズは身内を大切にする、クリルの為に恥も外見もなく、悠魔に頭を下げるほどには、身内を大切にする。


 それでも、彼女にエリクサーの生成方法を教えるのは、気が引ける悠魔だった。


「そもそも、僕に作り方を聞くのは、王宮魔工技師としてどうなんですか?」


 そう言われると、先程までは興奮してい気がつかなかったが、冷静になると自分のプライドが許さなかったのか、頭を悩ます。


 しかし、彼女はエリクサーの作り方など、全く思い付かなく、どうした物か考えた。


「それでしたら、これを差し上げます」


 悠魔は多少濁りのある、液体の入った小瓶をカウンターの上に置く、この瓶の中身はエリクサーの失敗作で、これを調べれば、調合に使用した素材くらいは分かると思い取り出した。


 彼女にもプライドがある、先程は冷静ではなかったが、今の彼女は冷静で考える、確かにこれを解析すれば、調合素材くらいは分かるだろう、そうしたらエリクサーの調合に一歩近づくが、これを受け取っていいか迷う。


「どうします? 失敗作ですが、これもエリクサーですよ」


「っ――」


 チノは考えた末に、瓶に手を伸ばした。


 何処か悔しような彼女を見て、何処か罪悪感を覚えるが、断じてこれは悠魔が悪い訳ではない。


「そういえば」


 悠魔は彼女なら、今の自分とアリスの関係の修復に、力を貸してくれるんじゃないかと思い、相談をする事にした。


 彼女も失敗作とはいえ、エリクサーを貰ったために、彼の頼みを無下には出来なかった。


「それで、何が原因なの?」


 何故か悠魔が淹れた紅茶を飲みながら、チノは相談を聞くと、その内容に頭を抱える、決して解決が難しいとか、そういう訳ではなく、ただ単にアホらしかったからだ。


「話を聞く限り、取引は彼女の自業自得でしょ、貴方が気に病む必要はないし、取引内容を聞く必要もないわ」


「そうですけど」


 彼女の言ってる事は尤もで、それは悠魔自身もよく分かってる、それでも、彼女の事を気にかけるのが、彼の欠点で、よく言えば優しい、悪く言えばお人好し、彼女は頭を悩ます。


「あのねぇ、貴方は人が良すぎるの、彼女が過去にやって来た事を考えれば、エストアでの今の彼女の待遇が異常なの」


 今の待遇を手に入れるために、アリスが手放した物は決して少なくはなかった、しかし、彼女は別にそれでもよかった、悠魔とその世界を守れるなら、命すら捨てれる覚悟をしている。


「彼女なりに、覚悟をして戻って来たのだから、貴方が気にする必要はないわよ」


 結局そう言われ、店を追い出される、この問題には答えがない、ただ単にお互いが意地を張ってるだけで、どちらかが折れるしか解決出来ない。


 店を出る頃には、太陽も傾き空は、すっかり夕暮れ時になっていた。




 王宮に帰ると、そこで今一番会いたくない人物に出会う、彼女は悠魔を見ると、駆け寄って来る。


「アリスさん……」


「君は何処に行っていたんだい?」


 彼は出かける時に、後ろ暗い事がない時は、基本アリスやナナなど、身近な人物に行先を伝えてから、出かけるが、今回は道中にあった喧嘩もあり、それを怠ってしまった。


 その為、アリスは部屋にいると思って、悠魔を訪ねた時は、少々焦った。


 おかげで王宮内を探し回り、その後にクリルと出会い、彼女に街に行ったと聞き、探しに行こうと出る所だった。


 お互いに、何を言っていいか分からず、微妙な空気が流れる、しかしこのままではよくないと思い、悠魔はお土産に買って来た、それなりに良いお酒を取り出す、そして珍しく一緒に飲みましょうと、彼女を連れて、王宮の食堂に向かう。




 食堂で作ってもらった、簡単に食べられる物と一緒に、二人してお酒を飲む、アリスは珍しい物を見る様に、悠魔に視線を送る。


 実際珍しい、悠魔がお酒を飲む所など、片手で数えれるくらいしか見た事ない、いつも誘っても、苦手と言い断られる、一体どういう風の吹き回しだと思い、グラスに注がれた液体を飲み込む。


「珍しいね、君が飲むなんて」


「まぁ、偶には良いかと思いまして」


 しばらくは、二人で無言で飲んでいたが、悠魔が口を開く。


「教えてはくれないんですよね」


 一瞬彼女は何を言われたのかは、分からなかったが、すぐに悠魔の言いたい事は理解した。


「そうだね、君が知る必要はない」


 アリスがエストア王国と行った取引は、三つあり、一つ目はアリスの所有する魔剣の一部の提供、これにより彼女は、数十本の魔剣を失った。


 これについては、彼女は大して気にしてなかく、提供した魔剣は、彼女の所有する中でも、それほど強力な物ではなく、問題は、二つ目の彼女の所有する、魔法知識、魔道具の知識などで、お陰で彼女の使う秘術は、すべてエストア王国に流れてしまった。


 自分から取引を持ち掛けたとは言え、これは、彼女にとってはかなりの痛手で、彼女の使う手の内をすべて見せたと動議だった。


 そして最後は、有事の際に防衛に協力する事で、これについては何の問題もなく、少なくとも悠魔がエストアに留まる以上、彼と彼の世界を守ると決めた、彼女には問題なく頷いた。


「そうですか」


 悠魔は残念そうに呟く、アリスも悠魔には余計な心配を掛けたくなく、取り合えず黙ってはいるが、彼のこんな姿をいつまでも、見ていたくはなかった。


 彼は優しい、だからこそ自業自得とは言え、これだけの物を失ってしまったと伝えれば、すごく気にするだろう、その為伝えれなかった。


「はぁぁぁ、分かりました、もう聞きません」


 以外に簡単に引き下がる彼に、驚くアリスは目を丸くして、悠魔を見るが彼はは最後に、正直に答えて欲しいとお願いしてくる。


「後悔とかはしてないんですよね?」


 その言葉を聞いたアリスは、可笑しくなり笑いだす、それを見た悠魔は、何か変な事を言ったのか、分からなく首を傾げる。


「別に、後悔なんかはしてないよ、今の君といられて、毎日が楽しいからね、それだけの対価を払った価値は、あったと思うよ」


 そう言い、彼女はグラスに、がれたお酒を一気に飲み干す。


「そうですか、ならいいです」


 そこからは、二人共いつも通りに戻り、後からやって来た、コトナやクリルやリボーズは、その光景を見て、一体何がどうなってるんだと思い、笑いながらお酒を飲む二人を眺めていた。

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