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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第四章
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寂しい屋敷

 ここ最近、悠魔は目に見えて疲弊していた、魔力操作の訓練が上手く行ってなく、肉体的にも精神的にも相当参っており、いくらアリスがついてるとはいえ、そんな彼を見てナナやサリアは、少々心配になる。


「悠魔君、大丈夫?」


「顔色、悪いですよ」


「平気です、と言いたいのですが、実は相当参ってます、上手く魔力が使い分けられなくて」


 今の悠魔の体には、龍種の魔力と人間の魔力の、二種類が流れており、魔力を使うと、肉体が龍化してしまう、そういう現象に困っており、頭を悩ましていた。


 アリスの説明では、上手に人間の魔力だけを使う事が出来れば、他者に龍種の力を持つ事が隠せるし、龍化も心配する必要はないと言う事だが。


 もしこの事が――龍の力を持つ事が、バレれば、エリクサーなみに、面倒な事になる、何処の国も、力のある魔導士は、欲しいからだ、エストア王も言葉にはしなかったが、内心では、悠魔を王宮魔導士に引き入れたいと思ってるほどだ。


「今は大丈夫なの?」


 ナナの心配は最もだった、彼はこうやって、普通に生活してるが、大丈夫なのか気になった。


「平気ですよ、瞳は、アリスさんの魔法で隠してますし、魔力の方も、これのお陰で探知されません」


 悠魔の腕には、銀のブレスレットが嵌っており、このブレスレットは、魔女達が正体を隠すための物で、アリスが悠魔様に、改良して悠魔に渡した。


 この魔道具のお陰で、今の悠魔の中にある、龍種の魔力は探知されないでいる、しかし、悠魔自身いつまでも、この魔道具に頼ってはいられなかった。


 もし、何かの拍子で力が暴走したらと思うと、悠魔は肩を震わせる。


 後で教えられたが、エルフェリアの洋館を半壊させたのは悠魔自身で、そんな力が、街の外ならまだいい、もし街の中で暴走すれば大変な事になる、沢山の被害が出る、そして討伐されてしまうかもしれない。


「今日も午後から特訓?」


「いえ、今日はコトナさんにお詫びをしに行こうかと」


 二人に事情を説明する、前に彼女が自分達に同行して、魔女教団の集会所に行った事を、その件を報告せずに黙っていた。


 そして、今回の件で、それがバレてしまい、再び謹慎処分をくらった事は、何と言うか話を聞くだけで、彼女は完全に被害者で全く悪くなく、悪いとしたら、彼女には運がなかったんだろうと思う。




 そして、悠魔とアリスが訪れたのは、コトナの屋敷だった。


 屋敷は大きくて、彼女がそれなりに良い所の出だというのが分かる、しかし、不思議な事に立派な庭を管理する庭師も、警備の門番すらいなかった。


 勝手に入っていいのか、わからずその場で立ち往生してるが、アリスはそんな彼を、見かねて門を開け中に入って行く。


「アリスさん勝手に入ったら⁉」


「別に人がいないんだからいいだろ? ほら行くよ」


 彼女は悠魔を引き連れ歩き出す、すぐに玄関に到着して、ドアに付けられていた訪問者を報せる魔道具を起動させた。


 しばらくして、ドアを開けて出て来たのは、いつもの騎士服とは違い、シンプルなワンピースを着たコトナだった。


 まさか、自分を謹慎処分にした、人達が訪れて来るとは、思ってなかったようで、驚くと同時にドアを勢いよく閉め、二人を閉め出す。


「こ、コトナさん……」


「すいません、つい驚いて……」


 申し訳ない表情をして、再びドアを開けてくれる、そんな彼女に、取り合えず中に入れてくれないかと提案する。


 以外にも、すんなり入れてくれた彼女だったが、その屋敷は驚くほど生活感のなく、殆どの家具や置物には、布が被っており、屋敷内には彼女以外、全く人の気配がしなかった。


「取り合えず、この部屋で待っててください」


 一室に案内して、彼女は何処かに歩いていく、部屋の中には、脱ぎ散らかされた、衣服、下着などが散乱しており、ソファーには薄いシーツ、テーブルには大量の書類などがあるだけで、どうやら、この部屋だけで生活をしているようだった。


 しばらくして、紅茶や茶菓子を持った彼女が帰って来る、何故彼女が、こんな事をしてるのかと本人に聞くと、最低限屋敷の手入れをする人しか雇っていなく、普段は人はいない。


 そもそも、彼女が殆どを王宮で過ごすため、この屋敷にはめったに帰って来ないため、人を雇ってないようだった。


「今回の事はすいません」


 今回の彼女の謹慎処分は、完全に悠魔達と言うか、彼女が少し前に謹慎処分になったのも、元を正せば悠魔のせいなので、流石に罪悪感を覚えていた。


「流石に私も、この短い期間で二回も謹慎処分くらうとは思ってなかったです、そもそも今度は何ですか? 龍種の力を手に入れたとかアホなんですか⁉」


「それについては、僕も同意だ」


 女性二人は頭を悩まし苦悩する、彼はこの場にいると、これ以上何か言われそうなので、何か食べる物を作ると言い厨房に向かう、流石にこれだけ大きい屋敷だけあって厨房は立派だった。




 彼女らの目の前には、色々なお菓子が並べられており、それを見た、彼女らは美味しそうに食べる、どうやら何とか、彼女らのご機嫌は取れたようで、悠魔は一安心する。


「そういえば、体の方は大丈夫なんですか? なんか特訓上手くいってないようですけど」


「心が折れそうです、おかげで魔力も使えませんし、何かいい方法はないでしょうか?」


 ここ最近の悠魔は、魔法が使えなく困っていた、冒険にも行けないし、アリスとの剣の特訓も進まなく困ってる、いい加減何か策を考えないといけなかった。


「私より、アリスさんの方が詳しいと思いますよ?」


「今の悠魔の状態は、僕も初めて見る、僕みたいに完全に魔女になっているのであれば、問題ないが、今の悠魔の体には、人間と龍の二つの魔力が流れてる、それらを上手く使い分けないと、今の彼じゃ龍化してしまう」


 今の悠魔では、龍の魔力を使いこなせなく、使えばほぼ間違いなく体が龍化する、当面は人間の魔力だけを使う事に決めたが、それがかなり面倒だった。


 いっその事、龍化しないように訓練した方が早いかもしれないが、それだと龍の力を持ってるのが周りにバレてしまい、現状ではそれは好ましくなかった。


「アリスさんでも手づまりだとすると……あまり言いたくはないですけど、知識の魔女さんならどうでしょうか? その目を埋め込んだのが、彼女なら何かしら解決方法を知ってるんじゃないです……か? どうしたんですかアリスさん」


 彼女の顔が目に見えて不機嫌になる、確かに知識の魔女と呼ばれてる、エルフェリアなら今の悠魔の状況を解決できるだろ、しかし、今のこの状況を生み出したのも彼女で、しかも何かを企んでる為、安易に彼女を頼れなかった。


「そう言う事ですか」


「そうなんです、これ以上僕も怒られたくないので、勝手な事は出来ませんし」


 悠魔は先日怒られた事を思い出して、顔を青くして震える、コトナも悠魔の異常な様子を見てそれ以上の追及はしなかった。


「そうですね……でしたら、お勧めは出来ませんが、覇王龍に会ってみるのは、どうでしょうか? 会えるかどうかは、分かりませんが?」


 聞きなれない単語が出て来た悠魔は、アリスの方に視線を合わせる、彼女は、どうやら覇王龍と言う存在を知ってるようで、表情を歪めるが説明してくれた。


 この世界には存在する龍で、数千年昔から、龍の巣といわれる所に、数千のドラゴン達を従えて住んでる、しかしその気性は激しくとても好戦的だった。


 この提案はアリスが却下した、全盛期の彼女でも、覇王龍には敵わなく、とても今の彼女では太刀打ち出来ない、そんな所には、魔法を使えば龍化して、暴走するかもしれない悠魔を連れては行けなかった。


「結局自分で何とかするしかないですか?」


「すいません、力になれなくて」


「いえ、こちらこそすいません、僕のせいで謹慎処分になってしまって」


「もういいですよ、このお菓子で許してあげます」


 そうして彼女の屋敷を後にする、最後に屋敷を見上げると一部屋をのぞいて明かりの付いてない屋敷は不気味だった。


 帰り道、悠魔は気になった事を、アリスに質問する、彼女は先程の説明で、龍とドラゴンと言った、その事を聞くと、彼女は呆れた顔で教えてくれた。


 龍とは、体を持たない種族の事を差す、体は魔力で構成されており、実体が存在しない、魔力生命体で、ドラゴンは、生身の肉体を持つ存在だ。


 その説明を悠魔にしていて、アリスは一つ思い出す、覇王龍は無理でも、もしかしたら、彼女の知り合いの龍なら、何かしら協力をしてくれるんじゃないかと、でも、その事を彼女は悠魔には伝えなかった。

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