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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第四章
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約束は忘れてはいけませんよ

 悠魔は工房に籠りポーションを作っていが、いつもはナナが手伝っているが、今日は珍しく一人だった。


 そこにアリスが入ってくる、彼女は疑問に思う――いつもならナナが手伝ってるが今日に限って一人だったのが気になった。


「珍しいね一人なんて」


「ナナさんには見せられないものを作ってるもんで……」


「見せられないもの?」


 純粋に興味がわいた彼女は彼の手元を除く、そこに在った物は透明な液体――エリクサーだった。別段彼のする事に文句はなかった。


 もともとエリクサーをリボーズに渡す必要がある以上作る必要はあったが、どうして今作るのかが不明だった。


 ダイヤス帝国を奪還してからでもいいと思うが、作られた本数を確認して別の目的もある事に気が付いた。


「何故二本なんだい? 一本でいいだろ?」


「これはアリスさんの分です、前に置いておいたのは使っちゃいましたからね」


 二本のうち一本をアリスに渡すが、彼女は受け取ろうとしないもともと前も受け取りを拒否していた。


 悠魔としてはいい加減に切断され失った腕を治してほしかった。


 しかし彼女は頑なに治そうとはしない、彼女からすると彼を傷つけた腕なんか必要なかったからだ、前もその事で口論になってしまった。


「君が飲め、そうしたら壊れた魔力回路も直るだろ?」


「これはアリスさんが直してくれました」


「それでも前のように魔法は使えないだろ」


 確かに悠魔の壊れた悠魔の魔力回路はアリスが矯正する事で、彼が魔法を失う事は無かったが今までの用には使えなくなってしまっていた。


 彼女もその事は知っていたが、これ以上の処置は出来なく口には出さなかったが、目の前に直せる手段があるならそれを使わない手はなかった。


 次第に声が大きくなっていき、その口論は外で畑仕事をしていたナナにまで聞こえ出した。


「二人とも何を言い争いをしてるのかしら」


 畑仕事をしていたナナはその声に怪訝な視線を家に向ける、そこに通りかかった通行には言い争いの聞こえてくる家にひそひそ噂話をしながら、ナナ同様怪訝な視線を向ける。


 それに気が付いたナナは、野次馬達に恥ずかしそうに微笑して、急いで室内に戻っていく。


 彼女が室内に入ると、そこには言い合いをしている悠魔とアリスの姿が目に入る、言い合いの内容を聞くと、ナナは彼らが前にも似たような内容で言い合いをしてるのを思い出した。


 その時はパーティーメンバーが止めてくれたが、今はいなく自分が止めなくてはいけないのかと思い天を仰ぐ、その間も彼らの言い合いはヒートアップしていき、これ以上はご近所に迷惑がかかると思い止めに入った。


「二人ともそこまで! いい加減にして!」


「だってアリスさんが!」「悠魔が!」


 同時に叫ぶ二人を見て、ナナは頭痛を覚えたのかこめかみ抑える。


「まったく……その話は前に話したでしょ!」


 お互いに顔を見合わせる、ぷいと顔を逸らす。


 取り合えず言い合いは止まったみたいだからよかったが、彼女としてはこれ以上ご近所さんに変な誤解をされるのは嫌だった。


「もう、ただでさえご近所さんに噂さされてるのに……」


 二人は噂と聞き首を捻る、アリスは基本ご近所さんと関わらないし悠魔も人当たりはいいが挨拶する程度で、詳しくは噂の事は知らなかった。


「あのねぇ若い女が二人と若い男が一人屋根の下で暮らしてたら変な誤解をする人もいるでしょ」


 最近では減ったが実際ご近所さんの間では、訳ありの人達じゃないかと噂されていた。


 その現場を見かけるたびにナナは誤解を解くために必死に説明していた。


「若い女? 君だけだろ」


「ですね、アリスさんは千年くらい生きてますから――」


 遠回しに年寄りされたアリスは悠魔の頭に拳骨を落とす、別段年の事は事実だが他人に言われると無性に腹が立つからだ。


「アリスさんは見た目は若い女の子なんです、下手をしたら私より若いかもしれませ……」


 徐々に声が小さくなっていき最後には聞こえなくなってしまった。ナナはアリスをジーと穴が開くほど見る、それに対して彼女は不思議そうに首をかしげる、アリスの肌は白く綺麗でシミ一つなくみずみずしくいしていて羨ましかった。


「えっと……」


「どうかしたのかい?」


 言い淀む悠魔を見てアリスは疑問に思う、何を迷ってるのか分からなく彼に尋ねる。悠魔はしばらく思考した後意を決して聞いた。


「アリスさんが魔女になったのっていくつの時なのかなって思いまして」


 見た目は十代にしか見えない彼女だが、何歳の時に魔女になったのかは聞いたことがなかった。


 大抵魔女になる人はロクな人生を送ってなく、アリスにそれを聞くのは失礼になるのではないかと思っていた。


「何だそんな事か、確か……十六歳の時だったかな」


 案外あっさり答えてくれたアリスだった、彼女は別段気にしてる様子もなく気を悪くした様子もなかった。


 どうやら二人の言い合いは収まったようで、一息つき部屋を出るこれ以上この二人に関わり合いたくなかったからだ。


 最後にもう言い合いをしないでくださいと言い残し部屋を出て行く。




 悠魔は出来上がったエリクサーを取り合えずリボーズに渡すために王宮に向かう、アリスを連れて行くと喧嘩になるかと思い家に置いてきた。


 王宮に着くと残念な事にリボーズは先ほど単身一度国に帰ったと四獣士イオが教えてくれた。


 その言葉を聞いて護衛はいいのかと思ったが、あの方に護衛がいると思いますと聞き返されてしまい――武闘派魔王のリボーズ・ジードは一国の王で普通は単身護衛も付けず出歩けないが、自分より弱い護衛がなんの意味がるのか聞かれて言葉を失う悠魔だった。


「夜までには戻りますよ」


「それでしたら、これを渡しておいてください」


 イオにエリクサーを渡すが彼女はキョトンとしてしまう、普段から垂れ流してる妖艶な雰囲気がなくなり純粋に驚いていた。


 驚くのは当たり前だ、この1本のエリクサー国に売れば一生遊んで暮らせるくらいのお金が手に入る、そんな物を約束が果たされてないのに渡すなんて、頭が可笑しいじゃないかと目の前の青年を見る。


「私達はまだダイヤス帝国の奪還をなしてませんが?」


「奪還してくれるんですよね?」


「します、ですがまだ奪還していません!」


「していただけるなら構いません、先に渡しておきます、早くクリルさんを治してあげてください」


 彼の行動に呆気にとられるイオにエリクサーを押し付けて、さっさとその場から歩き去ろうとする悠魔を彼女は慌てて引き止める。


「……本物ですよ?」


「疑ってる訳ではありません! ですが我々はまだダイヤス帝国を奪還してません、それなのに報酬を受け取るわけには――」


「ですから奪還していただけるならそれでいいんです」


 取り付く島もなく彼女は頭を抱える、悠魔としてはダイヤス帝国を奪還してくれるんだから、エリクサーを先に渡してもよかった。


 だが彼女の考えは彼とは違い――本来報酬は仕事の達成後に貰うもので、仕事をしてないのに報酬を受け取ることは出来なかった。


 それが例え仲間の為でもだった。


「コトナ殿からも何とか言ってください!」


 今まで彼らのやり取りを遠巻きに書類整理をしながら見ていたコトナに助けを求めるが、彼女は曖昧な笑いを浮かべて、両手を挙げて無理ですと白旗を上げる。


「あのう、悠魔殿?」


「何でしょう?」


 頭痛を覚えるのか頭を押さえるイオは、問うもしこのエリクサーを自分たちが持ち逃げする心配をしてないのと聞くと、悠魔は別段その事は気にしてなかった。


 もし持ち逃げされた場合は、また別の方法でダイヤス帝国を奪還を考えるつもりでいて、そもそも彼らがそんなせこい事をするとは思ってなかった。


「……それじゃあ、僕は帰ります」


 納得はしてないが、ここまで言われると彼女は言い返せなくなり、ならばその信用に応える事にした彼女は、深々と頭を下げる。


 悠魔が退出しようとした瞬間に、コトナが何かを思い出したかのように大きな声を張り上げる、彼女は悠魔を壁に追い詰め、ドン! と大きな音を立てて壁に手をつく、彼女の気迫に驚き壁にもたれる悠魔はどうしたのか目を白黒させる。


「えっと……どうしました?」


「や・く・そ・くです」


 彼女の顔は笑顔なのに全く目が笑ってなく、何だか怖かった。


 悠魔は思考する彼女と何を約束したのかを考えだす、ここ最近は約束も何も彼女とは会ってなく、普段から家に遊びに来る彼女も、ここ最近は忙しいのか足が遠のいており何かを約束した覚えはなかった。


「この前の戦いで約束を破った時に言いましたよね、美味しいお菓子を作ってくださいって」


 その言葉を聞いて思い出した、ダイヤス帝国の軍と戦った時に彼女の傍を離れないという約束を破った時の事を、そして敵に捕まりそうになった悠魔を彼女は持ち場を離れて助けに来てくれたが、そんな事をすれば問題になり彼女は大量の始末書と短いが謹慎が課せられた。


「忘れてましたよね?」


 可愛らしく首を傾げるが、その行動が一層悠魔の恐怖心を煽る、彼女は普段怒らないだけあって怒らすと怖く悠魔は汗をダラダラ流し目線を逸らす。


「悠魔君?」


「す、すぐに作ってきます!」

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