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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第一章
8/227

打ち上げお酒はほどほどに!

「「かんぱ~い!」」


 木製のジョッキや木製のコップを打ち鳴らし、彼らは、注がれていた飲み物を、一斉に飲み干した。


「仕事の後はやっぱりこれだよな!」


「ラガー、うぇぇ!」


「もう、二人共……」


 ナナはお酒を飲む、クラウとリウスを見て、呆れたように視線を向ける。


「にゃはは、蜂蜜酒美味しぃ」


「レイラも!」


 彼女は、二人から視線を外し、隣に座っていた居た、レイラに視線を合わせると、普段は、大人しく飲む彼女も、上機嫌に飲んでいるのを、見て呆れる。


「たまにはいいじゃん」


 どうやら彼女は、見た目からも分かる様に、上機嫌の様で、ナナの背中を、陽気にバシバシ叩く。


「悠魔君は飲まないのぉ」


「お酒は苦手なんですよ」


 クラウが、ジョッキを片手に、悠魔の肩に手をまわし絡みだす、他三人は、その光景を生暖かい目で見守っていた。


「今回の仕事は、それなりに儲かったな」


「そうねぇ、ゴブリンや黒狼が思いの他に、沢山狩れたからね」


「そうだねぇ、それに、悠魔っちが倒した魔獣の死体が、綺麗だから解体楽だし、素材も綺麗だから、高値で買い取ってもらえるし」


「確かに、ナナが倒すと破損がひどいからな」


「そうだよねぇ」


 普段彼女が倒すと、欠損が酷く、それほど高く値が付かない、しかし、悠魔の魔法なら、欠損が少なく、素材も綺麗な為、高く買い取ってくれる。


「だって、仕方ないじゃない! 私の魔法で倒すと、ああ、なるんだからどう考えても、悠魔君の魔法が異常なの!」


 クラウに絡まれていた悠魔が、自分の名前が出た事に気が付いて、三人の方に目を向けると、そこには、テーブルの上に俯いたナナがいて、リウスとレイラが慰めていた。




「それで悠魔君、今日一日体験して見てどうだった? 僕らとしては、出来れば正式にパーティーに入って欲しいんだけど?」


「いいですか?」


 リウスは、今後も悠魔にパーティーに残ってもらえる様に、誘い始めた。


「まだ、立ち回りや危なかしい所はあるけど、それは経験が足りないだけだし、これから教えてくから」


「うんうん、悠魔っちの倒した魔獣は、解体楽だし、あたしも賛成!」


「悪かったわねぇ、どうしぇ、私の倒しゅた魔獣は、破損しょていて解体苦労しますよぉぉだ……ヒク」


「……酔ってるんですか?」


 顔は赤くなり、一目見ただけで、酔っ払ってるのが分かる、ナナが、そこには居た。


「ナナっち、いつの間に、お酒を!」


「てか、そんなに飲むな、お前そんなに酒強くないくせに!」


 リウスとレイラは、慌てて巨大なジョッキを両手に持ち、中身を飲み干そうとしている、ナナを止めに走る。


「……クラウさん、あれ、放っておいていいですか? ってこっちは寝てる!」


 流石に、止めないといけないと思い、隣に座っていたクラウに相談しようとして、視線を向けるが、そこには、爆睡している彼の姿があった。


「こら、それ以上飲むな!」


「うるしゃいわね、いいでしょ! わたしゅの、かってぇでしょう」


「レイラ、ジョッキ取り上げろ!」


 リウスは駄々をこねる、ナナを羽交い絞めにして、その隙にレイラに、ジョッキを取り上げる様に命令する。


「ナナっち放してこれ以上飲んだら明日後悔するから!」


「かえしゅて!」


 しかし彼女は、必死にそのジョッキを取り返すとする。


「だからもうやめとけて!」


 あくまで諦めない、彼女をリウスは叱りつける、ナナはそれほど酒に強く無い様で、この場を何とか止めようと、悠魔は考えるが、何も思い浮かばず、宴は過ぎて行く。




「本当にすまない」


「気にしないでください、それより大丈夫ですか? 重そうですけど」


 仲間の醜態を恥て、クラウは悠魔に頭を下げる。


「平気だ、これでも力はある方だからな」


 悠魔の後ろはに、酔いつぶれたクラウを背負る、リウスが歩き出す。


「ぎもちわるいぃぃ」


「もう、ナナっち飲みすぎだよ」


「うぅぅ……もう無理吐く」


「ちょっ待って、女の子として、それはダメ絶対ダメ!」


 レイラが慌てて、小道にナナを連れて行くと、少してレイラの、ぎゃゃゃゃ!と言う、女の子にはあり得ない悲鳴と共に、聞くに堪えない、嘔吐音が小道の奥から聞こえて来た。


「何か、大変な事になってますね」


「何と言うか、本当にすまない、こんなパーティーで……」


 再度仲間の醜態を、謝るが、悠魔は別に気にした事もなく、笑いながら答える。


「いえいえ、皆さん楽しい人達ばかりですね」


「それじゃあ、これからよろしく」


「よろしくお願いします」




 そして夜が明け、次の日の朝に、悠魔は、白い羽のメンバーが泊まってる宿を訪れると、リウスに、すまないと謝られてしまう、馬鹿二人が飲み過ぎで、二日酔いで、今日は無理だと言われる。


 悠魔は、二人の様子を見に行くが、ナナは、頭痛いぃと唸っていて、クラウは、レ、レイラ、み、水を……と、テーブルに突っ伏しており、今日は暇になった為、仕方なく宿に戻ろうと歩き出した。


「悠魔さん、どうしたの? えらく早い帰りだね」


「実は……」


 悠魔が、宿に帰ると、カナが出迎えてくれた。


 さっき出て行ったばかりなのに、帰って来た悠魔に、何があったのか話を聞くと、メンバーが二日酔いで、真面に仕事が出来ない事を話す、カナは微笑して、残念でしたねと答え、部屋に戻ろうと歩いて行く、悠魔に声をかけた。


「それなら、今から市場に行くけど、一緒に来ます? 色々な物が売ってますよ」


 それを聞いて、このまま部屋で一日過ごすのも、あまりにも不健康だと思い、彼女に同行する事にした。


「そうですね、どうせ暇ですし、ついて行きますよ」


「じゃあ、ちょっと待っててくださいね、準備して来るので」


 カナはエプロンを外し、店の奥に入って行った。しばらくすると、カナが出て来て、お待たせ行こうかと言い、悠魔に声をかけて店を出て歩き出した。




 市場には、沢山の商人や物を買う人があるまっており、混雑していた。


「色々な物が売ってますね」


「でしょぉ、それじゃあ見て回ろう」


 彼らの目の前には、食べ物、アクセサリー、本、よくわからない物など、色々な物が並べられ売られている露店が道沿いにならんでおり、露店を渡り歩いて行くと、悠魔の視線が、木箱に大量に詰められた、ある物を捉えた。


「これは――」


「いらっしゃい! それは岩の実だよ」


「岩の実? ジャガイモじゃなくて?」


「ジャガイモ? 聞いた事ないな、そいつは岩の実て言う実だ、中には毒のある物もあるから、主に魔物の撒き餌に使われるな」


 目の前にある物は、悠魔のよく知る、ジャガイモだったが、どうやらこの世界では、岩の実と言われてる様だった。


「そうですね、食べるのもリスクがありますし、食べても余り美味しくないですし」


「そうそう、固いしな」


 どうも、この世界では、ジャガイモの調理方法は、確立されてないみたいで、少々残念に思えた。


「……この実一個いくらですか?」


「五個、銅貨一枚でいいよ」


「なら、二十個もらいます」


「毎度、銅貨四枚だ」


 悠魔は懐から、銅貨を取り出しておっちゃんに渡し、代わりに岩の実が入った紙袋を受け取る。


 歩きながら、紙袋の中の岩の実を一個一個丁寧に見て行き、悠魔は満足そうな顔をして、岩の実を紙袋に戻した。


 そして、ローブから神様に貰った知識の書を取り出し、何かを調べだすが、やはり岩の実は、ジャガイモと同じ物で満足するが、この時ある事に気が付いた。


 この、知恵の書は、元居た世界の知識も調べられる事に気が付き、全くあの人は……と呟く、この時、隣を歩いていたカナは、この時の悠魔の呟いた意味が、分からないという顔をした。


「そんなに買ってどうするんですか?」


「ん、ちょっと考えがありましてね」


「?」


「カナさん戻ったら厨房借りてもいいですか?」


「厨房? 別にいいけど」


「ありがとうございます」


「……悠魔さんもしかして、岩の実食べるつもり? ダメだよ毒とかあるし美味しくないよ!」


「それは調理法が間違ってるんですよ、あとは油と塩を買って……あと、この実には、毒はありませんよ、毒のある実は、芽や緑色を帯びた皮だけですよ」


「ま、待ってよ悠魔さん!」


 悠魔はニコニコしながら、紙袋と知識の書をローブの中にしまい歩き出した。


 カナは、慌ててそれを追うように、小走りで走りだした。

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