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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第三章
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終戦

 アリスはぼろぼろの悠魔と腹部から大量の血を流して倒れているコトナを見て、2人にゆっくりと駆け寄る。


「悠魔大丈夫か?」


「はい、体は痛いですけど何とか、それよりコトナさんを……」


 アリスは悠魔の体をさっと見る、一瞬魔力の流れがおかしい腕に目を付けたが、この状況ではゆっくり見れない為に、一度保留にしてコトナの方に歩いて行く。


「大丈夫かい?」


「はは……すません悠魔君を守れなくて」


 力なく苦悶の表情を浮かべ笑うコトナだが、アリスはそんな彼女を責めずポーションを取り出し飲ませた。


 傷が大きくただのポーションでは完全には回復出来ないが、歩ける程度には回復をした。


 彼女は痛む体に鞭を打ち立ち上がる、そんな彼女にアリスは悠魔を連れて街に戻るように言う、今の状態の自分では足手まといにしかならないと思い、彼女も素直に悠魔に肩を貸しゆっくり歩いてその場を後にする。


 2人を見送るとアリスはキュリウスの方に振り向く、意外にも彼は悠魔を追う素振りも見せなく棒立ちの状態だった。


「意外だね、てっきり悠魔を追うと思ったんだが?」


 その言葉にキュリウスは表情を顰める、今の彼は普通に立ってるがコトナの疑似聖剣により重傷を負っていて、コトナや悠魔くらいなら赤子の手を捻るくらいで倒せるが、流石にアリスが相手となると別だった。


 見た所アリスは傷を負ってる様子もなく、大した消耗もして内容だった。今回はここまでかと思い口を開く。


「どうやって戻って来た、此処からうちの軍が展開していた海岸付近は、どうやっても1日は掛かるぞ? 俺らが此処に来たのは、ほんの数時間前だぞ」


「何だそんな事か……おっとそれを君に教えるのはやめておこう」


 キュリウスは軽く舌打ちをして、アリスはそんな彼を見て愉快に笑う、その笑みは冷たく彼女が悠魔に絶対見せない魔女の笑みで、大抵こういう場合の彼女は相手をロクな殺し方をしない。


「さて、そろそろ始めようか? これでも僕は怒ってるんだよ」


 悠魔を傷つけた事に、彼の世界の人間を傷つけたキュリウスを彼女には生かしておく必要性は全くなかった。


 アリスはキュリウス目掛けて魔剣を放つ、魔剣は炎、氷、雷、などあらゆる属性が付与されており、それを防ぐのは無理と判断した彼は回避をし始める。


「っ――くそが! あの女にやられてなければこんな奴に!」


 どうやらコトナによってやられた傷が痛むのか、防戦一方の戦いになっていた。


「ほらほら、どうしたんだい? そんなんじゃかわし切れないよ!」


 心底愉快そうに魔剣を放つ彼女の姿は、ネズミをいたぶる猫のそのものでどうやら簡単には殺さないようだった。


 次第に魔剣がキュリウスの体を傷つけて行き、いくら彼が悪魔とはいえ、魔剣の魔法を帯びた攻撃を受け続ければダメージを受けて行く。


「おやおや、もう終わりかい? 君は悠魔を随分なぶってくれたようだから、そのお礼をしないといけないのに」


 キュリウスが目の前にはいつの間にかアリスが居り、彼女の魔力によって強化された蹴りが彼を吹き飛ばす、体制を立て直そうとするが飛ばされた先には、いつの間にか回り込んでいたアリスが居り、さらに飛んで来たキュリウスを蹴り上げた。


 そんな彼目掛けてアリスは手を突き出し魔法を発動させる。


氷の槍(アイススピア)


 大量の氷の槍がキュリウス目掛けて飛翔する。彼はそれから身を守ろうとするが、さらにアリスが魔法を発動させた。発動した魔法は氷の破裂で飛翔して来た氷の槍が破裂してキュリウスを吹き飛ばす。


「おや、威力が強すぎたか?」


 思いのほか威力が強かった事に驚くアリスだが、今の彼女は激おこ状態なため自分が思ってる以上の力を知らず知らずに出していた。


 地面に落ちてボロ雑巾の様になったキュリウスは何とか立ち上がるが、現状では全くの勝ち目がなく、アリスを睨み付ける。


 だがアリスはそんな彼を見て、狂気じみた笑みを浮かべ歩き出す。いくら疲弊してるとはいえ、ここまで一歩的にやられるとは思ってなかったキュリウスは、なりふり構わず逃げる事を選択した。


「そろそろ終わらそうか? 悠魔も心配だし」


 魔剣から魔力を吸い上げ1本の魔法剣を作り、キュリウス目掛けて振り下ろす、辺り一面土煙で覆われ晴れる頃にはアリスだけが立っており、彼女はさっきまでとは打って変わってイラついた表情をしていた。


「っ……逃げられたか」


 どうやら止めを刺す寸前に、逃げられたようでこんな事なら遊ばずさっさと殺しておくべきだったと思う、普段の彼女ならこんな失敗はしないのだが、興奮するとどうしても魔女の顔が出て来てしまい上手く行かない。


「まぁいいか……アレだけやっておけば、しばらくは大人しいだろ……それに楽しみは取っておかないとね」


 またあれをいたぶれると思うと自然に表情が歪み、だが今はそれ所ではないと思い、表情を引き締め彼女は1本のカギを取り出し、カギを開ける動作をすると1枚の扉が出て来てその中に消えていった。


 ドアの繋がった先は王宮で、彼女は近くに居た人を捕まえ悠魔の運ばれた先を聞き出した。


 アリスが駆けつけた時にはルチアが悠魔の治療をしていたが、どうやらその結果は芳しくないようだった。


 彼女が駆け寄って来るのに気が付くルチアだが視線を動かそうとしない。どうやら悠魔の容体はそれほど重傷なようで、現状の状態を聞き治療を変わる。


「っ……これは」


 先ほどから気になっていた、悠魔の右腕を見だした。どうやら相当負荷が掛かったようで、魔力が異常な流れ方をしていて、このままでは命の危険があると判断した彼女は、他の部分の治療は放棄して腕だけの治療に専念した。




 それから悠魔が目を覚ましたのは1日後で、彼は体を起こそうとするが、体中に痛みがはしり起き上がれず、そのまま首だけを動かし場所を確認する。


 どうやら此処は王宮の様で、最後の記憶を思いだ出そうとする、アリスが助けに来てくれた所まで覚えてるが、それ以降の記憶がなく誰かに聞こうにも部屋には人がおらず、体も動かない多少痛みを無視すれば動けない事もないが、どうしようか考えてると部屋のドアが開き1人のメイドが入って来る。


 彼女は悠魔の意識が戻ってる事に気が付くと、驚き手に持っていた包帯やクスリなんかを、その場に落として走ってどっかに行ってしまった。


 しばらくしてメイドはアリスとコトナを連れて戻って来る。コトナの顔色はお世辞にもよくなく、アリスも何処となく眠そうな雰囲気をしていた。


 2人と話をするために体を起こそうとするが、コトナに止められ結局寝たままで2人と話をする事にした。


「悠魔君体の方は大丈夫ですか?」


「あっちこっち痛いですけど大丈夫です」


「我慢しろ生きてる証拠だ、それにポーションや回復魔法は体に負荷がかかる出来るだけ自然に治せ」


 アリスの言う通り、ポーションや回復魔法を使うと、すぐに傷は治るが体に負担がかかり寿命を縮める可能性があるため、彼の体の傷も自然治癒が可能な状態まで治されていた。


「この腕は……」


 悠魔が気になったのは、自分の右腕に書かれたいくつもの入り組んだ黒い線だった。何処か魔法陣に使われる物にも見れるが、彼には分からなかった。


「どんな魔法を使ったか知らないが、君の腕の魔力回路が異常をきたしてたからね、悪いが矯正させてもらったよ」


「矯正ですか?」


「さて、どんな魔法を使ったんだい?」


 今回悠魔が使用したものは、単純に4属性の魔力を融合した魔力を砲撃しただけで、魔法と言うより魔力技術に近い物だった。


 言葉にすると簡単だが、これがどれだけ難しい事か2人は知っている、そのため言葉を失うが悠魔は気にせず説明をする。


 悠魔が考え付いたのがアリスの使う、魔剣から魔力を抽出して作る魔法剣だった。


「あの魔法剣て、火、水、風、地、光、闇の6属性の魔力を融合させて作ってますよね」


「ああ」


「たったそれだけで、何故あれだけの力が出るのか不思議だったんですよ……それで調べたんです、あの魔法剣て中和増幅を利用してますよね」


 それを聞いたアリスの眉がぴくと動く、しかし彼女は続けるように促す。


 中和増幅とは例えばそれぞれ異なる属性の魔力を融合させると、それぞれの性質を失い強大な魔力を生み出すことだ、アリスはこの原理を用いて高濃度の魔法剣を作ってる。


「間違ってますか?」


「いや、合ってるよ……確かにあの魔法剣は、それぞれ6属性の中和増幅を利用して生まれた膨大な魔力の塊だよ、それなら尚更不思議だね、いくら君が魔力操作が得意でも中和増幅を使って生まれた膨大な魔力は扱えないよ、と言うより人間には無理なものだ」


 中和増幅で生まれた膨大な魔力を扱うには、かなりの精密な魔力操作が要求されて世界広しといえど、この魔力を扱えるのはアリスぐらいだ。


「流石に僕じゃ、アリスさん見たいに6属性を操るのは無理です、だから4属性に減らして中和増幅で生まれる魔力容量を減らしたんですけど、そもそも僕は魔力の属性変換が出来ませんから」


悠魔は何故か魔力の属性変換が出来なく、そこで考えたのが魔法石に刻印を施し属性変化する方法だった。


 そうして属性を変換した魔力を制御用の魔法陣を通して手元に集中して、後は砲撃するだけと簡単な作業だった、だが問題もあった、すべてが自動制御されてるため使用者の扱える魔力量を超えてしまうため、今回の悠魔の様に大怪我を負う事があった。


「元々欠陥があったのは分かっていて、アリスさんの知恵を借りようとしてたんですけど、いませんでしたから……アリスさん?」


 先ほどから反応のないアリスに気になった悠魔は、彼女の名前を呼ぶ若干惚けていた彼女はその声に反応しする。


 いくら現物があり才能があるとはいえ、自分が百年単位で開発した物を欠陥があるとはいえ、たった数日で実用段階に持ってた彼に驚いていた。


「……君は本当に面白いね」


 アリスは心底面白そうに笑う、そんな彼女に怪訝な視線を向ける悠魔とコトナだが、そんな視線を気にせず笑い続ける。


 ひとしきり笑った後、笑い過ぎで涙目になったアリスは涙を拭い謝る。


「取り合えず君はゆっくりと傷を治せ、魔法にの話はそれからだ」


 アリスはそう言い残すと上機嫌で部屋を出て行った。

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