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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第三章
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コトナの実力

 魔法が消え残ったのは抉られた台地がその威力を物語る、射線上にいたクローン兵は跡形もなく消えていたが、キュリウスはボロボロになりながらもその場に立っていた。


流石の彼でもあれだけの高濃度の砲撃魔法をくらえば無傷では済まなく、装備は破損して体の至る所から紫色の血液を流していた。


「ははは! いいねぇこんな隠し玉を持っていたとはなぁ」


 高笑いするキュリウスに比べ悠魔はその場に膝を着く、彼の腕は魔法の反動に耐えられなかったのかボロボロになっていて、大量の傷に魔法その物に欠陥があるのか、彼の魔力回路は何か異常をきたしたのか魔力の制御が上手く行かなく流失し続けた。


「ま、魔力がコントロール出来ない」


「それにしてもやってくれたな、御蔭でクローン兵がほぼ全滅か……したかたない今日の所はお前だけで我慢するか」


 ゆっくりと歩いて近づいて来るキュリウス目掛けて、魔法を放とうとするが魔法は発動せず、展開された魔法陣が崩れてしまう。


「やめとけやめとけ、そんな状態じゃまともに魔法を使えないだろ」


 キュリウスが悠魔を掴みあげようとした時、コトナが2人の間に入り剣を振るった。その剣を手甲で防ぎ2人から距離を取る。彼には珍しく険しい顔をする。


「全くあれほど私の傍を離れない様に言ったのに」


「こ、コトナさん?」


「ハァ~まぁ敵の陣形を崩してくれて、残りの敵を掃討してくれたので、お礼は言いますけど」


 目の前に立ってるコトナの表情は少々怒り気味だったが、それ以上悠魔を責める事なくキュリウスに視線を戻す。彼女は今回の戦闘の指揮官をしていたのに、何故彼女がこんな最前線に居るのか不明だった。そんな悠魔の視線を感じ取った彼女は怒り気味に答える。


「いい訳ないですよ! 幸い敵はもうほとんどいませんけど、やらないといけない事は沢山あるんです、色々他の人に丸投げして来ましたから、これ後で絶対始末書ですよ! それもこれも悠魔君が約束を守らないからです!」


「す、すいません……」


「この場を乗り切れたら美味しいお菓子作ってください!」


 悠魔の返事を聞かずに剣を構え走り出す、彼女の剣を回避するキュリウスだが数手後には上手く回避出来なく手甲で防ぎだす。その光景に悠魔は疑問に思った、それは彼女の剣技はすぐれていたが、キュリウスならすべて回避する事が出来るものだった、わざわざ防ぐ必要はないのに何故剣を防ぐのか、そして徐々に彼が後退していきコトナが優位に立ち始める。


「てめぇ」


「おや、どうかしました」


 何処かキュリウスを小馬鹿にするように笑みを浮かべる、剣技が徐々に激しさを増していきついにキュリウスに傷を付ける。


 何かに気が付いたのかキュリウスが彼女から距離を取る。


「そう言う事か、テメェ攻撃のリズムを意図的に崩してるな」


「おや、すごいですね初見で私の剣技を見抜いたのは貴方が初めてです」


 悠魔は彼らの会話の意味が分からなく疑問の表情を浮かべる、それに気が付いたキュリウスが懇切丁寧に説明をし始めた。誰も彼も無意識にあらゆる物事にリズムをとり、そしてまたそれに共感するように、それに合わせる様にする。


 例えば誰かが殴りかかって来たら、衝撃が来るタイミングを無意識に読み合わせる。コトナは意図的にそのタイミングをずらす事が出来る。だから彼は彼女の攻撃をかわせなくなって行き、防ぐ事も出来なくなってしまう。


「説明どうもありがとうございます、でも人の手の内をペラペラ喋らないで欲しいですけど」


「そりゃあ悪かったな……でもネタが割れれば怖くねぇ!」


 素早い拳がコトナの頭を撃ち抜く、しかし実際には拳は彼女の頬を掠める程度ですみ彼女は剣を振るう、その剣はキュリウスの腕を切り落とす。


「面倒な技だな」


 切断面から触手の様な物が生え切断された腕を再生する。


 悠魔はコトナと何度か冒険した事があった、でもその時の戦闘は基本アリスやアリスの指示で悠魔が戦っていた。そのためまともに彼女が剣を振るってる所は見た事なかった。


 キュリウスはあの剣技は面倒だと思うが、所詮はその程度で自分に決定打を与えるものではない、それよりも気になるのは、先程自分の拳は確かに相手の頭を撃ち抜いた筈だった。


 それなのに実際には彼女の頬を掠める程度で、彼にはそちらの方が気になっていた。試しにもう一度拳を打ち込むが、結果は同じで彼女は紙一重で攻撃を回避する。


「また、奇妙な術を使うな女ぁ!」


「それほどでも」


 コトナは笑顔を浮かべながらキュリウスの拳を回避していく、その都度剣を打ち込んでいく徐々に傷が増えて行くキュリウスだが、彼は悪魔の回復能力を使い傷を治していく、どちらも一歩も引かないがこのままでは先にばてるのはコトナだった。


 人間と悪魔では肉体的な作りが違い、基礎的な能力は悪魔のが圧倒的に高い、いくらコトナが訓練を積んでる人間でも先に力尽きるのは彼女なのは明白だった。


 それに気が付いた悠魔は魔法を放とうとするが、先程と同じように魔法陣は崩れてしまうし、魔力の流失は止まらなく、このままでは命の危険もあった。


「魔法石なら……」


 震える手で魔法石を取り出すが、力が入らなく魔法石を落としてしまう。


「悠魔君……余計な手助けはしないでください、この状態を維持するの疲れるんです」


 彼女の顔は笑顔だったが、何処か疲れが出て来てるようで笑顔に違和感を覚える。


 先ほど見た魔法といい、これほどの力を持ってる彼女が、自分程度のマナゾーンで魔法が発動出来ないなんてありえないと思い、あれは彼女なりの優しさなんだと思った。


「そろそろ決めましょうか」


 不敵な笑みを浮かべ剣を構える。キュリウスも拳を構えいつでも反撃できるように構えた。


「行きますよ」


 剣が輝き出し走り出す、キュリウスは拳を放つがやはり先ほどの様に攻撃がそれてしまう。コトナは懐に入り込むと、輝く剣をキュリウスの腹部に突き刺す。


「クラウソラス!」


 輝きが強くなり、光が強くて直視できなくなり悠魔は目を逸らす。光が納まるとそこには、倒れたキュリウスと息を切らしたコトナだった。


「さ、流石に疲れましたね」


「これを」


 ポーションを取り出してコトナに渡す、彼女は栓を抜き中身を一気に飲み干す。少しは回復したのかフラフラしていた足取りはしっかりする。


「それじゃあ戻りましょうか、悠魔君の治療もしないといけませんから――っごめんなさい!」


 彼女が悠魔を支える様に持ち上げようとするが、何かに気が付いたのか悠魔を突き放す。悠魔は行き成りの事で受け身も取れなく地面を転がる。


「一体何が?」


 悠魔が視線を上げると、そこにはキュリウスの拳によって腹部を貫かれたコトナの姿があった。


「今のは危なかったぜ、まさか疑似聖剣を使える奴がこの国にもう1人いるとはな」


「流石にこれは不味いですね」


 力なく笑みを浮かべながらその場に倒れる。最後にコトナの唇が動き悠魔に逃げる様に動くが、彼は友達を見捨てる事なんか出来ず、ボロボロの腕を無理矢理動かして剣を取り出し走り出す。


「そんなボロボロでよくやるな」


 呆れた様に拳を構える、取り合えず両足と消し飛ばせば大人しくなるだろうと思い拳圧を放つ。


 拳圧が悠魔に命中する寸前に、黒い剣が拳圧を両断され彼のよく知る人物が前に降り立った。


「すまない、やっぱり僕か聖剣のどちらかは王都に残るべきだった」

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