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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第三章
73/227

ダイヤス帝国との衝突!

「今日で3日目ですか」


「そうねぇ~畑の方が心配だわ、幸い今は薬草くらいしか植えてないけど」


 ナナと悠魔はエストア王国の王宮に一室にいた。何故このような所に居るかと言うと、今から3日ほど前に、朝早く家を訪れたジェンガとコトナにこの部屋に連れてこられた。事情を聞いたが2人は話してくれなく部屋に閉じ込められた。


「アリスさんもいないし……」


「彼女が何もしないなら今回の事は黙認してるのでしょうね、見てもらいたい魔法があるんですけど」


 悠魔を監禁までして、アリスが何もしないと言う事は、今回の事は彼女も納得してると言う事で、一体何が起こってるのかわからなかった。


 アリスもサリアもここ3日ほど見て無く一体何処で何をしてるのか分からない状態だった。


 この部屋はとても作りが豪華で、お風呂からキッチンまで付いており、必要な物は言えば何でも運んで来てくれる。絶賛引き篭もり生活を送る2人だが、何故こんな事になってるのかだけは分からなかった。世話役のメイドに聞いても教えてくれなく、チョイチョイ様子を見に来るコトナやルチアに聞いても教えてくれなかった。


「出来ましたよ朝食」


「相変わらず美味しそうな物を作るわね」


 出来上がった料理を見て、彼女は自分のお腹周りを見る。ここ最近は外出も出来なく、畑仕事もせずに1日部屋の中でゴロゴロしてるだけで体格が気になりだした。


「それにしても困りましたね、事情も説明されないままいつまでも此処には居られないですしね……いっその事扉を破壊しますか?」


 カギの掛かったドアを見て、魔法の刻印がされた魔法石を手の中で転がす。それを見てナナは流石にそれは不味いと思い悠魔を説得する。


「僕はいいんですよ、でも理由ぐらい説明してもらえないと納得出来ませんから」


 悠魔自身監禁生活は別によかった。少し前のダイヤス帝国での監禁生活に比べれば気が楽な物だった。でも、理由もなく閉じ込められるのは納得がいかなく、そろそろ我慢の限界だった。


 そこにタイミング悪くコトナが様子を見に現れた。彼女の姿を見た瞬間に動き、腰に帯刀していた剣を奪いナナに投げ渡した。


 突然の事に対応できなく、拘束され動けなくなるコトナにナナは突然剣を投げ渡されオドオドする、。突然の悠魔の行動に2人は驚いてしまう。


「さて、事情を説明してもらいましょうか?」


「えっと、それは……えっ」


 コトナは言葉を濁し時間を稼いで魔法を発動させようとするが、魔法が発動出来ない事に気が付き慌てる。


「……マジックゾーン」


「はい、これでもアリスさんに毎日鍛えられてますから」


 悠魔は毎日1日の5時間はアリスに魔法、剣術、体術などの稽古をしている。5時間と言うがディオラマ魔導箱の中は1時間が2時間になる為、そのため実質10時間の稽古をしてる。


「えっと……ナナさん剣をこちらに返してください」


「返しちゃダメです!」


「えっと……」


 2人の板挟みになるナナだが、どうしていいか分からずに右往左往するだけだった。


「コトナさん教えてください、どうして僕達を監禁するんですか?」


 彼女は顔を背ける、どうやら話すつもりは無い様で、そんな態度を見た悠魔は彼女の拘束を解き懐から1個の召喚石を取り出した。


「それは……」


「召喚石を掛け合わせて作った、新たな召喚石です……召喚」


 召喚石が光の粒子となり、2メートル程の巨大なスライムが現れた。それを見たコトナはじりじりと距離を取る。剣もなく魔法も使えない状態の彼女では、この巨大なスライムを倒すのは無理だった。


「好きな方を選ばせてあげます、素直に話すか、このスライムと戯れるか」


 ゆっくりと近づくスライムに、そのスライムが近づくにつれて距離を取る涙目のコトナを眺めてナナはオドオドする事しか出来なかった。


「わ、分かりました! お話しますから、そのスライムを何とかしてください!」


「……帰還」


 スライムが光の粒子に変わり小さな宝石になった。それを見てコトナはホッとするが、悠魔の顔を見て再び表情を引き締める。


 彼女の話によると、エストア王国海岸付近にダイヤス帝国の軍が展開していて、その狙いが悠魔であると言う事で、彼をこの王宮に保護したと言う事だった。


「ですから、もうしばらく此処で大人しくしてもらえませんか?」


「……今すぐに国王陛下と話できますか?」


「えっと、それは……」


 再び巨大スライムの召喚石を取り出すと、コトナは慌てて頷き、2人を連れて国王陛下の所に案内した。


「悠魔殿⁉ 話してしまったのか!」


「うぅぅすいません」


 室内には国宝陛下のクランドとダイヤス帝国の皇女のサリアが居り、悠魔の姿を見た2人は驚いた表情をしていた。ばつが悪そうに顔を逸らす2人を悠魔は冷ややかな目で見た。


「さて、事情は大まかにコトナさんに聞きましたが、詳しく話してくれますよね」


 普段とは全く違う雰囲気の悠魔に観念したのか、2人は事情を説明し始めた。3日前の朝早くにダイヤス帝国から手紙が届き、その内容は悠魔をこちらに引き渡すように書かれていた。理由としては皇女誘拐と悠魔がダイヤス帝国から逃げ出すさえに、王宮を破壊した事が罪となり、ダイヤス帝国で捌くと言う内容だった。


 もし指定の時間までに引き渡されなければ、エストア王国沿岸に展開された軍が強硬策に入るとも書かれていた。


「私は君をダイヤス帝国に行かした事を酷く後悔している、あの時彼らの要求を断っていれば、君は辛い思いをしなくて済んだのかもしれない」


「別にその事を恨んだ事なんてないですよ、ああしなければあの国に付け入るスキを作っていましたから」


 悠魔は何もダイヤス帝国に行って辛い事ばかりではなく、コレットと出会えたし悪い事ばかりではなかった。彼は少なくともあの時のクランドの判断は間違っていたとは思えない、結局はダイヤス帝国に行くと決めたのは他でもない悠魔自身だからだ。


「それに、エストアはダイヤスに関わるのはやめたのではないですか?」


 ちらりとサリアを見て、彼女を初めて王宮に連れて来た時の事を思い出した。この国に今そんな余裕があるとは思えなかった。起源龍と言う強大な敵をまずは何とかしないといけない。


「こちらからは関わらないと言うだけで、降りかかる火の粉は払わなければならない」


「戦争になるんですよ、沢山の人が死にます」


「皆覚悟のうえだ」


 悠魔は行動を起こすのが遅すぎた。すでにエストアの部隊は出陣していて、その中にはアリスやジェンガもいた。本来ジェンガを王都から出すのはこの都市の防衛機能を著しく下げるが、彼らを投入する当たりエストア王の本気度が感じられた。部隊が出陣する前ならまだしもすでに3日も前に出陣しているのであれば、今更追いかけても間に合わない。


「……悠魔さん」


「何ですか」


 今まで一言も喋らなかったサリアが2人の会話に割り込んで来た。悠魔はその今にも消えて来そうな小さな声を聞き、彼女の方に視線を移すと、そこには今にも泣き出しそうな表情をした少女の顔があった。


「貴方を守る事はいけない事なのでしょうか?」


 彼女が何を言ってるのか悠魔は一瞬理解できなかった。何故なら彼らは1つの国を治める立場にあり、全国民を守るのは無理でも1の命と10の命なら迷わず10の命を取る選択をしなければいけない立場にあると悠魔は考えていた。


「僕1人で戦争が回避できるなら間違いなく僕を切り捨てるべきでしょ」


「……君は本当にそう思ってるか」


 今度は彼らの方が悠魔が何を言ってるか分からないと言う顔をした。とてもまともな人間の考えではなかった。


 確かに皆頭では理解できてる自分の命1つで沢山の大切な人が救えるなら、自らの命を捨てるのが正しいと、だがいざその選択を迫られた時、実行できる人がいるかといればいないだろう、誰しも死にたくはない。


 城に出入りしたり国の訓練所を使ったりしている彼にとっては、この国の騎士や兵士はもはや友と呼べる者たちだった。だから彼は命を掛けられる。


「悠魔殿、君の命は君が思ってるほどの軽くはない、私は君に沢山の恩がある、エレナの事やフェリクスの事何一つ君に返せてない」


「私もそうです、悠魔さんには助けて貰いました、もし悠魔さんが助けてくれなければ何も知らずにあの部屋に閉じ込められていました」


「エレナさんやフェリクスさんの事はすでに金貨と言う形で返して返してもらってます、サリアさんを助け出したのは僕が勝手にやった事です」


 確かにエレナやフェリクスを助けてたお礼で沢山の金貨を貰ってる。サリアの事は別に彼女が助けてほしいと願ったわけではなく、悠魔がコレットの心残りを勝手に実行しただけだった。


「金貨などは建前だ、私は君に何も返せてないと思ってる!」


 彼には珍しく声を張り上げる。皆その行動に驚く、クランドが声を張り上げる事は滅多になく、よほど悠魔の言葉が許せなかったのだろう。


「……君はもう少し自分を大切にしなさい」


 どちらの言ってる事も間違っては無いのだろう、他者の為に自分を捨てる悠魔と例え他者を犠牲にしても大切な人を守ろうとするクランドどちらも間違ってはないのだろう、ただの価値観の違いが現状の状況を作り出してるだけなんだ。


「た、大変です!」


 勢いよくドアを開けて騎士の鎧を付けた男が駆け込んで来た。


「どうした、何があった⁉」


「南よりダイヤス帝国の軍隊が此処目指して進軍しています!」


「何⁉」


報告の内容は驚くべきもので、どうやら海岸付近に展開軍は囮だったようで、エストア王国はまんまとダイヤス帝国の策にはまってしまったようだった。


「すぐに防衛の用意を、それと本隊に伝令至急戻って来るように伝えろ!」


「は、はい! 了解しました!」


 騎士は慌てて部屋から出て行く。クランドは苦虫を噛み潰すように机に拳を振り下ろす。


「……悠魔殿今すぐギルドに向かいなさい、あそこなら君を保護してくれるはずだ」


「待ってください!」


 悠魔はクランドに現状のエストア王国の戦力を聞く、現在この国の戦力は最小限になっており、進行してくるダイヤス帝国の軍からこの街を守るのには少々不足していた。


 先ほどの報告の中には悠魔が気になるものが入っていた。それは軍を率いてるのが、コレットを殺した暴食の悪魔のキュリウス・レムナントが居ると言う事だ。


「あれだけは誰にも譲れません」


「待つんだ、これは君を護る戦いだ君を危険にさらす訳にはいかない」


「僕は守られてばかりいる弱い人間者ないです!」


 何処か冷静さを失い部屋を出て行く、それを追うようにナナが歩き部屋を出て行く。

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