表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第三章
60/227

取引

 アリスは家のドアの前で止まっていた、アレだけの言い合いをした後だと、流石に顔を合わせるのが気まずくドアを開けるのを躊躇していた。しかしいつまでもこうしてる訳にいかなく、いざドアを開けようとした瞬間ドアの内側から声が聞こえて来た。


「じゃあ、ちょっとアリスさん探してきます」


 ドアが開き中から悠魔が飛び出して来た、咄嗟の事でアリスは回避が出来なく飛び出して来た悠魔とぶつかり2人は倒れた。


「いたた、すいません、大丈夫ですか――あ、アリスさん⁉」


「君は、少しは前を見ろ」


 非難の目を向けられる悠魔は心の整理が出来る前に、探していた人を見つけてしまいいたたまれなく俯いてしまった。


「全く、ほら」


 アリスは立ち上がり手を差し伸べた、悠魔は恐る恐るその手を掴み立ち上がった。しかし先ほどの事があるのか、彼女の顔を直視できなかった。


「えっと……」


「さっきはすまなかった、僕も言い過ぎた」


「そ、そんな事ないです! 僕がどうかしてたんです」


 お互いに謝る、微笑ましいその光景をニコニコして後ろで見ていたナナには誰も気が付かなかった。




 少し時間が戻り、アリスが出て行ったあとナナが悠魔を治療しながら、喧嘩の理由を聞くと流石の彼女も言葉が出なかった。


「この魔法陣よく改変されてますね、天隕石の雨の魔法陣は今では失われてますし、起動するのにも1人では無理なのに、この魔法陣はそれを可能手前までもっていくなんて」


 呆れた顔をするナナだが、そん言葉は悠魔を責めていた。彼もアリスと喧嘩してしまい冷静になっていたので、自分がどんなに危険な事をしていたのか理解した。


「はい、出来上がり」


「ありがとうございます」


「悠魔君、私は復讐が悪いとは思わないわよ、人間は憎み憎まれ生きていく生き物だから、でも流石に今回は貴方が悪いと思うの、アリスさんはいつも貴方の事を心配してるの、それだけは分かってあげて」


 ナナにまで諭されてしまう。悠魔も分かっていた復讐なんかしても何もならない、多分アリスの言う事もナナの言う事は正しいのだろう。


「ねぇ悠魔君、アリスさんは私達の何倍も長い時間を生きてるから、きっと見たくない物を沢山見て来たのと思うの」


「……」


「貴方が本当に何をしないといけないのか考えてみて」


 微笑み工房を出て行くナナを見送る。パタンとドアが閉まり1人になる悠魔はアリスとナナの言葉の意味を考え出した。


「本当にしないといけない事か……姫様をたすけてくださいか」


 コレットが最後に悠魔に頼んだ願いだった。それを忘れていた悠魔はあまりにも愚かでアリスが怒るのは最もだった。立ち上がりまず一番初めに自分がしないといけない事を考え工房を飛び出した。




「それで、君はこれからどうするんだい? 復讐をするのかい」


「いえ、ダイヤスの姫様を取り合えず助けようと思います、コレットさんが言ってましたからダイヤス帝国を姫様ならダイヤスを変える事が出来ると」


「うむ、それでどうやって助けるつもりだい? 何か考えがあるのかい」

 

 目を細めるアリスに悠魔はしばらく考えた後、ある頼みを切り出した。




 明らかに飽きてた表情のアリスを先頭に後ろに続く悠魔とコトナだが2人の表情はすぐれなかった。昨日2人は仲直りをしたが、その後すぐに悠魔の発した一言で再び大喧嘩に発展した。


「……アリスさん」


「…………」


「あ、アリスさん」


「っ!」


 鋭い目つきで睨み付けられた悠魔は怖くなり、コトナの後ろに隠れる。彼女は何とも間が悪い時に来てしまった自分を憎んだ。



「君は馬鹿か⁉ 馬鹿なのか⁉」


「いひゃいでひゅ」


 両頬を引っ張られる悠魔だが、ナナも悠魔の発言を擁護できなく白い眼を向けていた。


「魔女教団に行きたいだと⁉ 君の頭は大丈夫なのか、ああ!」


 アリスは頭痛を覚えたのかこめかみを押さえ、この馬鹿をどうしてやろうかと考える、コレットの死で頭がおかしくなったのかと思うほどに。


「落ち着いてください、別に魔女教団に行きたい訳ではなく、エルフェリアさんに連絡が取りたいだけです、彼女に頼めばもう一度ダイヤス帝国に忍び込めるかと思って」


「まぁ、可能だろうね……だからといって君が行く必要はないだろ」


 アリスは冷静になる為に紅茶を飲み一息つく、本当にこの馬鹿をどうするか考えた。もうしばらく王宮の牢屋にでもぶち込んでおくとか物騒な事を考え出していた。


「ん、コトナか何で此処に居るんだい」


「あれ、コトナさんいつの間に?」


 2人が視線を移動させると先ほどまでナナしかいなかったのに、いつの間にかコトナが加わり2人でお茶を飲んでいた。


「2人が言い合いをしてる時から居ましたよ、ジェンガ君から2人が喧嘩をしたって聞いて様子を見に来たんですけど」


 呆れた表情で紅茶を飲む、彼女はナナに一度仲直りをした話を聞いたがこの状況ではとても信用できなく、ため息をつき再び紅茶を飲んだ。


「だって、アリスさんが行くと喧嘩になるでしょ?」


「……」


 目線を逸らす、彼女自身沸点の低さは理解してるため反論出来なかった。そして、魔女教団の集会所に行く事になったが、流石のアリスでも数多の魔女から悠魔を護る事が出来るか不安があった。


そこで目を付けたのがコトナだった、彼女ならそこそこ実力はあるし別段魔女教団の機密が漏れても彼女に不利益はない。そして本人の意思関係なしに同行が決まったコトナだった。



「ハァ~何で私まで?」


「恨むなら、そこの馬鹿を恨め」


 自分の後ろで先ほどからビクビクしている少年に目を向けるが、先ほど睨まれたのが怖かったのか涙目になり震えてるだけだった。


「行きたくないですよ魔女教団の集会所なんて、魔女教団の機密が分かるかも知れないですけど、割に合いませんよ」


 今にも泣きそうな表情をするコトナを見て、人選ミスをしたかと思うアリスだったがすでに後の祭りである。


 何もない平原で足を止めるアリス、2人は不思議そうに首を捻るが彼女が手を翳すと波紋が生まれその中に入って行った。しばらく棒立ちになる2人にアリスが波紋から顔だけを出して早く来るように促した。


 波紋の先には立派な庭園があり、その真ん中には大きな屋敷が立っていた。アリスは屋敷の方に歩いて行く、2人も彼女からはぐれない様について行き、大きな扉の前に来るとアリスが魔剣を取り出し扉を破壊した。


「「……」」


 その行動に2人は声も出ずに佇み、アリスは騒ぎを聞きつけて来た魔女達を魔剣を振り蹴散らし歩き始めた。この行動に全く動けない悠魔とコトナどうしたものかと思いアリスに付いて行くが。


「アリスさん! 何してるんですか!」


 現れたエルフェリアに制止される、もはや頼みを出来る様な状態ではなく、どうしようと考える悠魔だったが自分を見つけたエルフェリアが驚きの表情を浮かべアリスに詰め寄った。


「此処に人間を連れて来るなんて、何を考えてるんですか⁉」


「僕だって連れてくるつもりはなかったよ、どうしてもって言うから」


「……2人とも此方に」


 諦めた表情で案内するエルフェリアに連れてこられたのは、大きなテーブルのある部屋で5名の魔女が椅子に座り本を読んだり、眠ったりしていた。


「おいおい! エルフェリア何で此処に人間が居るんだ⁉」


「全くですわ、汚らわしい」


 部屋に入った瞬間2人の魔女が声を上げた、獄炎の魔女レンカと蟲毒の魔女のシリカだった。彼女らの反応に頭を悩ますエルフェリアに、怯えて悠魔を盾にするように隠れるコトナだった。


「悠魔君は怖くないんですか?」


 震える声で平然としている悠魔に声を掛けるコトナだった。


「まぁアリスさんがいますし、大丈夫でしょう」


「君ねぇ、彼女の反応が普通だよ」


「と言われましても、別に戦いに来た訳ではないですし」


 危機感のない悠魔に、頭を悩ますアリスにエルフェリアの顔が笑顔になった。その笑顔を見たアリスは不機嫌そうに舌を打ち、悠魔にさっさと要件を伝える様に言った。


「この前のカギを1本貰えませんか?」


「この前のカギ? ああ、エストアとダイヤスを繋ぐカギですね……」


 彼女はチラッと眠ってる行路の魔女のソフィーを見ると、苦笑いして彼女の肩を叩き起こす。


「ん~、エルフェリア何?」


「もう一度エストアとダイヤスを繋ぐカギを作ってもらえませんか?」


 ソフィーはアリス、悠魔、コトナと視線を動かし一言、嫌と言い首を背けた。そんな反応にエルフェリアは苦笑して、悠魔の方に振り向きその表情には無理ですと書かれていた。それを見たアリスの表情が険しくなり彼女の指が動こうとした時に、それを察した悠魔が制止した。彼女は不満そうに視線を逸らす。


「エルフェリアさん、どうしても無理でしょうか?」


「こうなると難しいですね」


 前はアリスを止める人物がいなく、下手をしたら屋敷が全壊しかねなかったので頼み込んだが、今回は止める人がいるため、エルフェリアもそれほど真剣には頼んでなかった。そもそも魔女達に何のメリットもない今回依頼には協力する気がなかった。


「そうですね……それでしたらこういうのはどうですか?」


 悠魔がイエローポーションの入った小瓶を取り出し、テーブルに並べた。エルフェリアの目つきが変わり、ポーションを手に取る。


「これは前に私が買おうと思っていた物ですね」


「ええ、魔導士用のイエローポーションです、体力と魔力の回復が出来る物です、魔導士用は魔力回復が多い方ですね」


 悠魔の説明で魔女達の目つきが変わり、彼女達の興味がポーションに集まった。


「もし、僕の依頼を聞いてもらえるのなら、近日中にこのポーションを500本まででしたらタダで提供できます」


「500ですか……」


 それを聞いたエルフェリアの顔が少し明るくなった。アリスが魔女教団の情報を話したため、色々な物資が手に入らなくなっていた。だからポーション類の提供は彼女にとって願ったり叶ったりだった。


「何でしたら、僕が用意出来る物でしたら定期的にそちらに流しますよ」


 その言葉を聞いた時のアリスとコトナの顔は渋い顔をした。アリスは悠魔に魔女教団と関わってほしくない、コトナに至ってはエストアの王国の騎士で、犯罪者集団と行われる取引は本来取り締まらないといけない立場だからだ。


「私達と取引をするのがどういう意味か分かってますか?」


「ええ、分かってますよでも綺麗事だけで生きていけるほどこの世界は優しくないでしょ?」


 エルフェリアは愉快に笑う、徐々にその笑いが小さくなり悠魔に詰め寄った。その目は先ほどとは違いどんより濁っており、吐息が掛かるほど近づくエルフェリアから離れようとするが、その目を見た悠魔は足が動かなく立ち尽くした。


「いいですね、いいですよ! わかりましたその条件で取引受けましょう」


 取引内容はイエローポーションを1000本、一部の魔女が望んだ化粧品など日用品で報酬はダイヤス帝国に続く道と金貨500枚と決まり、3人は帰路に着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ