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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第三章
57/227

魔女達の関係

 川に流された悠魔は途中意識を失い幸運にも川岸に流れ着いた。何度も自分を呼ぶ声が聞こえ意識を取り戻すと、そこには剣姫の魔女のアリスと知識の魔女のエルフェリアが居り、アリスは心配そうに表情をしていた。


「アリスさんに、エルフェリアさん? どうして此処に?」


「君がいつまで経っても帰って来ないから向かいに来たんだ、君こそどうしてこんな所に」


 まだ意識がハッキリしない頭で悠魔は現状の状況を整理した。その過程でコレットに谷から突き落とされた事を思い出し、急いで彼女の所に戻らないといけないと思い立ち上がろうとするが、ふらついてしまいその場に座り込んでしまった。


「エルフェリア、悠魔は回収できたから帰るよ」


「はいはい、分かりました、ちょっと待ってくださいねエストアと道をつなげるので」


 エルフェリアが黒いカギを取り出し、ドアのカギを開ける動作をすると、黒いドアが現れた。悠魔には、どうやらあれでエストアに帰る事が出来るみたいだが、悠魔はコレットを見捨てる事は出来ずに、大きな魔力の反応がある方にフラフラしながら歩き出した。


「おい、君はそんな体で何処に行くつもりだ?」


 アリスはフラフラ歩く悠魔の腕を掴み制止した。


「ハァ……ハァ……コ、コレットさんを助けないと」


 一瞬誰だったかと思考したアリスはすぐに思い出した。悠魔を迎えに来た帝国の使者のメイドの事を、何がどうなってるのか分からない様子のアリスに、悠魔は彼女に助けられた事を説明した。


「うむ」


「お願いします、彼女を助けてください! アリスさんなら出来ますよね」


 一考するアリス、彼女自身今回ダイヤス帝国内部に入り込めたのはかなりの綱渡りで、さっさとダイヤス帝国内部から出たかったが、基本的に悠魔に甘い彼女には必死な悠魔の頼みは断れず、コレットを助ける事を了承した。


 悠魔の安全を考えるならさっさとダイヤス帝国を脱出するのが正解だが、悠魔に嫌われる事を何より嫌がる彼女なのでこういう判断をしたのだろう。アリスが飛行魔法を使用して上流の方に飛んで行った。


「あのう、どうやって此処に? その扉は何なんですか?」


「このカギは、離れた場所を繋ぐ事の出来る物で、魔女教団に所属する魔女の魔法で作った物です」


 扉にささる黒いカギを指さし、どうやって此処に来たのかを説明してくれた。何だか彼女の表情は少々疲れていて、何があったのかを説明してくれた。




 先刻アリスが急に訪ねて来て、急にダイヤス帝国内部に入りたいから手伝えと言いだした。無論魔女教団を抜けただけではなく、自分達の情報を売った彼女に協力する魔女はいなかった。


「おいおい、何寝ぼけた事言ってるんだこいつは」


「本当ですね、貴方のおかげで私達がどれだけ苦労してるか」


 大きな円状のテーブルを囲むのは9人の魔女で、彼女達は魔女教団の幹部で、今声を上げた短い黒い髪をした真っ赤な目をした、気の強そうな顔立ちの魔女は魔女教団七席の獄炎の魔女のレンカ、もう一人は長い黒髪の毛先をロール状に巻いた、お嬢様を絵に描いた様な女性は魔女教団八席の蟲毒の魔女のシリカ。


 そんな2人を無視するようにエルフェリアに詰め寄るアリスに2人の魔女は怒りを覚えた。レンカは自分達を全く相手にしない剣姫の魔女のアリスに炎の球体を放ち、シリカも着ていたフリルやリボンがふんだんに使われたドレスのスカートから、大量の薄気味悪い蟲を大量に放った。しかしアリスは全く慌てずに辺りを浮遊していた魔剣を使い炎の球体を防ぎ、大量の蟲の軍勢を魔剣から放たれる炎や雷で焼き払った。


「悪いが今君達の相手をしてるほど暇ではないんだよ」


「ざ、ざっけんなぁ!」


 まったく見向きもしないアリスに、レンカが炎の剣を作り飛び掛かるが、アリスが魔剣を操り振るうと竜巻が発生して彼女を吹き飛ばした。それにより豪華な部屋は壊れ室内に太陽の光が差し込んだ。


 獄炎の魔女は諦めなく魔法を放とうとするが、いつの間にかエルフェリアが目の前に立っておりアリスに対しての攻撃を止めた。


「何のつもりだ! エルフェリア!」


「どうもこうもないです、これ以上私の屋敷を破壊しないでください、修理するのも大変なんですよ――ただでさえアリスさんがこの部屋に来るまでの道で破壊の限りを尽くしてくれてるんですから」


「――っ、わかったよ」


 彼女に諭されて部屋を出ていく獄炎の魔女、彼女に続き蟲毒の魔女も部屋を出て行く、結局この部屋に残ったのはエルフェリアとテーブルに突っ伏して眠っている、ゴスロリ服を着た10歳前後の外見をした少女だけだった。


「それで、どうしてダイヤス帝国なんかに行きたいんですか?」


「……悠魔が帰って来なんだ、君も会った事があるだろ」


「彼がですか? でもどうして彼がダイヤス帝国なんかに行ったんですか? あそこは治安は悪いですし、悪い噂しかないですよ? 止めなかったんですか」


「止めたよ、僕は何度も……でも」


 悠魔がダイヤス帝国に行った理由を説明するアリスだったが、話を聞いたエルフェリアはアリス同様に呆れた表情をして、一言馬鹿ですねと言いため息をついた。


 その目にはもっと強く止めなさいよ非難の色が含まれっていたが、アリスは気が付かないふりをして話を進めた。


「今日で16日連絡すらない、何かあったに違いない」


「そうですね……(エストアとダイヤスは往復で10日程の距離此処最近海が荒れたという情報もないですし、滞在は6日程、別段心配する程の事でしょうか? 観光とかをしていればその程度経過するでしょうから)」


「僕も行き先がダイヤス帝国でないなら、こんなに心配はしないよ」


 エルフェリアの心情を読み取ったような事を言うアリス、確かにダイヤス帝国でないなら心配する必要は皆無だったが、その行き先が悪名高いダイヤス帝国なので、アリスの心配する気持ちもエルフェリアは理解できた。仕方ないですねと、彼女は隣で眠っていた魔女の肩をそっと叩き起こす。


「ふぁ~、エルフェリア何か用?」


「エストアとダイヤスを繋ぐドアを作ってほしいのですが」


 少女はアリスを一瞥する、その目には好意的な感情は含まれておらず憎悪などの負の感情が含まれていた。少女は、どうやらドアが必要なのはエルフェリアではなく彼女だと認識すると、そっぽを向いてしまった。


「ソフィーさんお願いします、今回だけですから」


「嫌!」


 エルフェリアが可愛らしく猫なで声で頼むが、彼女は決して頭を縦に振らずにエルフェリアは困ってしまう、何故なら徐々に後ろに居るアリスの殺気が強くなっていき、このままではさらに屋敷が壊されるのではないのかと気が気ではなかった。


「お願いします、これ以上屋敷が壊れると……修理が」


「うっ……」


 哀愁漂うエルフェリアを見た、魔女のソフィーは何だか自分が悪いみたいに思えて来て、分かったと言って1本のカギを作った。




「何と言うか、すいません」


「いえいえ、アリスさんの傍若無人は今に始まった事ではないので」


 力なく笑うエルフェリアを見て、1つ悠魔は気になった事があった、アリスは魔女教団を裏切った魔女なのに、意外にエルフェリアがアリスに対して好意的なのが気になった。


「そうですね、何ででしょうか?」


「僕に聞かれましても」


「あれですね、やっぱり自分の育てた子は可愛いですからね」


 まだ弱かった頃のアリスを拾い、育てたのがエルフェリアで親代わり見たいなもので、自分から離れてしまった子が自分を頼りにしてくれたのが嬉しかったのだ。


「……親馬鹿」


「うっ、それ他の魔女にも言われました」


 いくら我子が可愛くても、家を破壊するは組織の情報を売るは子供と、そこまで好意的な付き合いは出来ないと思った悠魔だった。




 雨の降る中1人の魔女と1体の悪魔が向かい合っていた。


「もう一度言うけど、君の足元に転がってる者を貰いたいんだがいいかな?」


「あん? いい訳ないだろ馬鹿か、こいつは唯一の悪魔の細胞を移植して生きてた成功例なんだぞ、魂は食べちまったが、この体にはまだまだ利用価値があるからな、そうなると殺すのはもったいなかったな、孕ませて子供でも生ませれば、実験の幅が広がったな」


「……フフフ」


 アリスは上品に笑いだした、その笑いは徐々に狂気じみた物に変わって行き、急に笑いが途切れた。その瞬間数十本の魔剣が悪魔を襲った。


「あ~! もう喋るな、これ以上は聞くに堪えない」


「おいおい、何を怒ってるんだ? てめぇら魔女も似たような事してるだろ?」


「生憎、僕はその手の実験に興味が無くてね、そして何より嫌いなんだよ!」


 怒りの感情を表に出し魔剣を放つアリス、彼女は残虐な性格と趣味をしてる、今まで沢山の人間の命をあらゆる手段を用いて奪って来たが、彼女は唯一人間を使った生物実験をおこなった事がなかった。


「変わった魔女だな、俺の知ってる魔女は、人間を使った人体実験なんか毎日の様におこなってるがな」


「人間がどうなろうと、僕には関係ないが、それは別だ」


 アリスの指さす方向には生気のない目をしたコレットが転がっていた、彼女は悠魔が助けてほしいと懇願した人間だった。もう、悠魔には悲しい顔をしてほしくなかったからだ。


 だが、あの様子ではもう助からないだろうと思うアリスだったが、それでもせめて彼女の遺体だけでも悠魔に届けようと思った。



「おいおい、お前ただの魔女じゃないよな! 何だその魔剣の数!」


 飛来する魔剣を回避し時には防ぎながら、アリスから距離を取るキュリウスだった、1つの資料の内容が悪魔の頭なの中をよぎった。


「そうか、お前剣姫の魔女か! あのガキに執着する魔女がいると聞いていたが、何でお前みたいな大物の魔女があのガキに執着するんだ?」


「君に教える必要はないよ!」


 魔剣を振るうと水の刃が放たれ、悪魔の体を両断するが両断された体が黒い煙に変化して切断面に集まり元に戻った。それを見たアリスは苦虫を噛み潰したような表情をして、ポツリとつぶやいた。


「聖水の刃が聞かないか、上級クラスの悪魔か」


 アリスの振るった魔剣は水属性の魔剣だが、その剣より生み出される水は聖水で悪魔には効果があるはずだが、見た感じ目の前の悪魔は大したダメージを与えられてなかった。初級悪魔、中級悪魔程度なら今の一撃で消滅されるほどの力を加えたが、効果が無い所を見ると目の前の悪魔は上級クラスの悪魔とアリスは推理した。


 目を凝らして悪魔を見るアリスだが、次第にその表情が驚きに変わって行った。


「そうか、君は七つの大罪か!」


「ほ~流石は剣姫の魔女、俺の正体に気が付くとはな、では改めて自己紹介をしようか、俺は七つの大罪が1体暴食だ、此処ではキュリウスて呼ばれてる」


 七つの大罪とは、世界で初めて生まれた悪魔の別称で、傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲の7体の悪魔で、その1体が目の前に立ちはだかっていた。七つの大罪の悪魔は1体が古参の魔王級の強さを持ってるため、アリスが険しい顔をするのも納得だった。


「さて、ならもう少し遊びたいが、流石にお前の相手をするのには色々準備が要りそうだからな、今日は引くとしよう、その人形も好きにしていいぞ、じゃあな」


「まっ――チッ、逃げられたか」


 アリスは悪魔を追跡しようとするが、すでに周辺に気配がなく、雨の中立ち尽くした。

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