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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第三章
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逃亡

 この日のコレットは、メイド服ではなく騎士服を着て背中に自分の身長と同じくらいの巨大な剣を背負って部屋を訪れていた。そんな彼女を見て、悠魔は流石に上は痺れを切らして強硬策に出て来たと思い。


 この時のコレットの表情は無表情で人形のようになっていた、昨晩見せた泣き顔が嘘のように冷たい目で悠魔を見ていた。


「似合いますね、騎士服」


「……ありがとうございます」


 コレットが目を伏せ部屋の隅に移動すると後ろから、悠魔が初日にエリクサーで治療した男が歩いて来た。


「そろそろ、考えを変えてくれたかね? 悠魔殿」


 相変わらず、ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべ歩いて来た男は、悠魔の目の前の席に腰を下ろした。悠魔には珍しく、眉を顰め不機嫌そうに読んでいた本を閉じテーブルに置いた。


「いくら待っても考えは変わりませんよ、エリクサーの生成方法は教えるつもりはありません、そんな事よりさっさと帰りたいんですが?」


 悠魔の言葉は丁寧だったが、言葉の端々に刺あり完全に彼を敵視していた。それを聞いた男は愉快そうに笑い、その笑みはまるで悠魔を小馬鹿に見えて、悠魔はイライラしだしたが今行動しても結局どうする事も出来ないので、怒りを抑えた。


「そう言わずにどうだね、君の欲しい物も用意するし、どうだね? 君はそこの人形と仲が良かったそうじゃないか? 彼女を君に与えるのもやぶさかではない」


 まるでコレットを物の様に扱う男の発言を聞いた時に、目の前の男に掴み掛らなかった悠魔の忍耐力は褒められるもので、微かに浮き上がった手をテーブルに戻した。


「彼女は人形ではありませんよ、コレットて言う名前があります」


「おぉ! すまない、すまないだが、彼女は何でも言う事を聞く人形だろ」


 コレットが人形の様に見えるのはダイヤス帝国の教育のせいで、彼女はちゃんと感情を持った人間で、それをここ数日で悠魔は理解した。だからこそこの男の発言は許せなく。


 再び拳を振り上げそうになるが、悠魔はある視線に気が付き男に気が付かれない様に視線を向けると、そこにはコレットがおり首を左右に振っていた。気にするなと言ってる様に見えた悠魔は血が滲むほど強く手を握り込む。


「どうだろうか? 悠魔殿彼女では不満か? 何なら他にも付けるがどうだろか?」


「……結構で」


「そうか、それは残念だ」


 男の表情が消え、それを見た悠魔は限界だなと判断していつでも動けるように臨戦態勢を取り。男が合図するとドアを開け数人の兵が入って来た。


「申し訳ないがご同行願おうか」


「それは、遠慮します!」


 悠魔は身体強化の魔法を発動させ、机を盾のにするように倒し、それの後ろに隠れながら。


 ――破城槌


 魔法を発動させた、それにより悠魔が前もってドアの上に仕込んでおいた、悠魔のオリジナル魔法の破城槌の刻印が施された魔法石が発光して砕けると、地属性の色の魔法陣が展開され床と壁を縦に打ち抜いた。


 巻き込まれた兵士は落ちて行き、驚いた男を悠魔は部屋の隅に蹴り飛ばして、破城槌によって出来た穴から下の階層に降りて行き逃亡を開始した。




「色々準備しておいてよかった!」


 王宮内を走り回る悠魔、後ろからは兵士や騎士が追って来る。悠魔は必死に逃げるが、増える一方で限がないので仕方なく、拳銃を取り出し発砲して敵を倒していった。


「限がないな」


 途中までは上手く逃げていたが、遂に追い詰められてしまい、苦しい顔をして、壁を背に押し寄せてくる兵士を拳銃と魔法剣で倒し活路を開こうとするが兵士の数が多く上手く行かなく、何とかならないかと考えるが碌な考えが浮かばなく必死に戦った。


 この空間は吹き抜け上になっていて、1つ上の階から手すりにもたれ掛かり、悠魔の戦ってる姿を見下ろす5人の影があった。顎鬚が立派な男、コレット、残りの三人は独特の雰囲気を持つ男2人と女1人だった。


「おいおい、俺達の出る幕無いんじゃないか」


「そのようですね、時間の問題ですわ」


「…………」


 上から順に、髪の毛を逆立て両腕に鋼の手甲をはめた野性的な男、次に眼鏡を掛け大きな本を持つ魔導士風の女性、最後にフードを被り口元を布で隠した無口な男だった。


 彼らの言う様に悠魔は徐々に追い詰められて行き、取り押さえられるのも時間の問題だった。


「それにしても見た事ない武器を使ってるな」


「そうですね、見た所火薬で鉄の塊を打ち出してるようですね」


「おい、コレットお前、あれと一緒に居たんだろ? 何か知らないのか?」


 手甲を着けた男の言葉を無視したコレットは悠魔の戦いを見ていた。男は舌打ちをして悪態をつきながら視線を戦場に戻した。


 コレットは悠魔から視線を一時も外さずに見ていた、彼女の心の中では騎士の自分と、悠魔を好きな自分が居て、どちらが正しい自分なのかを考えていた。


 次第に追い詰められて行く悠魔を見ていて、コレットの心情は焦りで一杯だったが、その場から一歩も動けなくどうするのが正しいのか分からなかった。悠魔を助ける、助けない心の中で自問自答を繰り返していたが結局答えは出ず、兵士の槍が悠魔の肩を掠めた時、彼女は背負っていた大剣に手を掛けその場を飛び出していた。




「っ――痛!」


 切られた肩を押さえ兵士達から距離を取る悠魔だったが、すぐに壁に当たりそれ以上下がれずに、その場に立たずんだ。


 槍を構えてにじり寄る兵士達、悠魔は此処までかと諦めかけた時、小さな影が目の前に降り立ち巨大な剣を振るうと、兵士が吹き飛ばした。


「こ、コレットさん⁉」


 驚く悠魔の腕を掴み兵士を吹き飛ばして出来た隙間を走り出した。


「どういうつもりですか⁉ こんな事をしたらコレットさんの立場が! それともこれも上からの命令何ですか⁉」


「違います、これは私の意思です……もう此処には居られませんね」


 彼女に手を引かれ王宮内を走る悠魔は、ダイヤスの帝国の騎士の彼女がこんな事をすればただでは済まなくなると思う悠魔だったが、コレットはそんな事はどうでも良いと言う風に返事をして、王宮内を疾走していった。


 王宮内の構造を全て把握しているコレットは迷いなく王宮内を疾走して、悠魔はそんな彼女に付いて行った。


 しばらく走り地下に入ると、そこには汚れた水が流れる――下水道があり、2人は真っ暗なその中を、小さなランタンの明かりだけで歩いて進んで行った。



 下水道をある程度進み、2人は座り込み休んでいた。


「ダイヤス帝国の地下にこんな下水道があったのは驚きですね」


「そうですか? 国中の水樹による生成された水を処理するためには必要な物ですから、この国では一般家庭まで水樹が復旧してますから」


 彼女の話を聞いて色々納得した悠魔だった。先ほどから追手がこのないのは、この下水道は迷路の様にこの国中に張り巡らされており、出口も無数にあるので逃げ込むのには最適だった。


「今何時くらいなんでしょうか?」


「さぁ、分かりません、此処では外の様子がわかりませんから、感覚では昼頃かと思うのですが……」


 自身のない様に、自分の感覚では昼頃だと告げるコレットだった。日の光も入らず窓もない暗い空間で、唯一の光は手元の小さなランタンだけで、今が昼なのか夜なのかもわからない空間では仕方のない事だった。


「取り合えず、何か食べて体力をつけないといけないのですが……」


「ちょっと待ってください」


 悠魔が干し肉とパンを取り出してコレットに差し出した。彼女は躊躇したがパンと干し肉を受け取り食べだした。悠魔も自分の分の干し肉とパンを食べるが、生活水の臭いがする所での食事は美味しくなく食欲もわかなかった。


 食事をした2人は、交代でその場で横になり、少し休む事にした。


 ランタンの光を消し横になる、暗闇に目がな慣れてくると薄らと周りが見えて来たが、明かりが無い空間と言うのは不安になり、傍にいたコレットの手を握り眠ってしまった。この時コレットの頬が薄ら赤くなって口元は微笑んでいたが誰も気が付かなかった。

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