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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第三章
50/227

人形の少女

「おお! 貴公がエリクサーの生成に成功した少年か?」


「はぁ、はいそうですけど」


「おっと、すまない、興奮してしまってな」


「それで、病人は何処ですか?」


「そうだったな、こっちだ」


 男に案内され、顎鬚が立派な男が寝る部屋に案内された。男の顔色は悪く、呼吸も荒い。


「どうぞ、これがエリクサーです」


 悠魔が取り出したエリクサーを主治医と思われる白衣を着た男に渡し、白衣の男はエリクサーを見て、迷うが、悠魔を案内した男、この国の貴族は、ベットに寝る男に飲ませる様に言い。それを了承した白衣の男はベットに寝る男に飲ませると、悪かった顔色も消え、呼吸も正常になり悠魔を視界に捉えた。


「君が助けてくれたのか?」


「えっと……」


「そうです、陛下彼がエリクサーで陛下のご病気を治しました」


「そうか礼を言う」




 その後、別室でお茶を出され雑談をしだした、初めは取り留めもない普通の会話だった、報酬の金貨1000枚の入った魔法の革袋を受け取った辺りから、妙にエリクサーについての質問が多くなりだし、不審に思った悠魔は席を立ち帰ろうとドアに向かって歩こうとするが、ドアの近くに居た騎士が立ちふさがり。


「申し訳ありませんけどどういてもらえませんか?」


 騎士は何も喋らずに唯々黙りながら悠魔の前に立ちふさがった。


「まぁ、悠魔殿そんなに慌てて帰る必要もないだろう、どうだね? もう少し有意義な話をしようじゃないか」


「……」


 先ほどまで人の好さそうな顔をしていた皇帝は二ヤリと薄気味悪い笑いをして、悠魔に着席するように勧めた、悠魔もこのままじゃ帰れないと思い、席に再び着席した。


「それで、その有意義な話とは何でしょうか?」


「どうだい、エリクサーの生成方法を渡したいに売るつもりはないかい? 君の言い値で買おうじゃないか」


「お断りします、エリクサーでお金儲けをするつもりはないので」


「うむ、そうか、なら君の欲しい物は何かな、それと引き換えにはどうかな?」


「それもお断りします、現状今の生活に満足してるので」


 お金でも物でも決してエリクサーの生成方法を渡さないと言った悠魔、相手もそんな簡単に手に入るとは思ってなく、色々な取引を持ち掛けだすが、決して悠魔は首を盾には振らなかった。


「そうか……」


「話は以上ですか? なら僕は帰らせてもらいます」


 再び悠魔が席を立つと2人の騎士に両脇を固められ、動けなくなった。


「何のつもりでしょうか?」


「何、君もしばらくしたら考えが変わるかもしれない、今一度よく考えてくれ」


「っ」


「連れていけ」




 騎士2人に別室に案内され、ドアにはドアノブがなく、この部屋は外からしか開かない様になっており、閉じ込められた悠魔はどうした物かと考え、部屋を見渡す、部屋の中には豪華なベット、テーブル、ツボに絵画などが置かれており、他にも2つのドアが付いていた、此方にはドアノブが付いていてどうやら出入りが出来るようで、確認の為に開けてみると1つはお風呂になっていて、もう1つは手洗い場になっていた。


「豪華な造りだなこの部屋、僕の家より造りがいいや」


 仕方なしと思いベットに寝転がる、取り合えず現状の確認をすると、どうやら帝国は今の所強引な手に出るつもりは内容だった、その証拠に監禁されたとはいえ、この様な立派な部屋を使うのだからしばらくは安全だと言う事が分かった。


「さてさて、どうした物か、帰ったらアリスさんに怒られるな、こりゃ」


 悠魔の帝国行を最後まで反対していたのはアリスで、十中八九罠でロクな事にはならないと言っていたからだ。

 不意にドアがノックされ聞きなれた声が聞こえて来たので、体を起こし。


「悠魔様入室してもよろしいでしょうか?」


「コレットさんですか? どうぞ」


「失礼します」


 コレットが入室して来た。彼女は相変わらず人形の様に無表情で何を考えてるのは分からなかった。


「何点か確認したいんですけど、いいですか?」


「はい、何でしょう?」


「今回の事は……何処までが計画だったんですか?」


 悠魔には、ダイヤス帝国は今回の騒動をエリクサーの生成方法を手に入れる為に起こしたのじゃないかと思った。



「私は何も聞いてません、ただ悠魔様のお世話と護衛をするように言われただけですので」


「……そうですか」


「引き続き悠魔様のお世話と護衛は私がいたします、何かご要望はありますか?」


「お世話と護衛と言うより、監視ですよね、それよりエストアに帰りたいんですが……」


「申し訳ありません、そのご要望には叶える事は出来ません」


「デスヨネー」


 まぁ、無理だと思った悠魔だが、意外にも彼女の監視下なら外出も許可が出せると言い、それならダイヤス帝国の街を見て回ろうと思った。




「話に聞いていたより治安はいいみたいですね?」


「流石に白昼堂々と表通りで問題を起こす者はいませんよ」


 コレットの言葉には決して治安がいいと言うものではなかった。裏では見えない所は治安が悪いと言う意味だった。



「包み隠さず話しますね……」


「聞かれましたので、上からは悠魔様命令に従えと言われてますので」


「命令ですか……」


「はい」


「命令なら何でも聞くんですか?」


「はい、それが私の仕事ですから」


 彼女の反応に悠魔は嫌悪感を覚えた。初めて皇帝を見た時は人の好さそうな人だったが、エリクサーの話になると人が変わった様に、貪欲な目つきになり悠魔を監禁した。この国――ダイヤス帝国は、悠魔が思っていたより黒い国だと思った。


「まるで人形ですね……すいません」


「いえ、本当の事ですから」


 一瞬だけ、コレットから嫌悪感の様な表情が発せられたが、それはすぐに消え、また人形の様な表情に戻った。


「何処に行きたいですか? 私が案内出来る所は限られてますが」


「そうですね、でしたら買い物が出来る所にお願いします」


「分かりました」




 商店街に案内された悠魔、このには悠魔が思っていたより色々な物が売られており、お金もあるし面白そうな物がないか見て回ると、見た事もな食材、魔道具、本などが売られており、コレットに解説を頼み、幾つかの食材、魔道具、本などを購入していった。


「あのう、部屋に調理器具を置くことは可能でしょうか?」


「可能です、少々お待ちください」


 コレットは通信用の魔道具を取り出し話はじめた。


「これで、帰る頃までには一通りそろってると思います」


「ありがとうございます」


「食事でしたら、こちらで用意いたしますが?」


「流石に現状で出された物を食べるのは少々抵抗がありまして」


「わかりました」


 色々買い物をして王宮に帰ると、部屋の一角に簡易的な調理場が出来上がっていた。


「あのう、見られてると料理し辛いのですけど……」


「申し訳ありません、外に出てますので何かありましたお呼びください」


 優雅に一礼をして部屋を出ていくコレット、1人になると急に寂しくなるが、あのままジーと視線を送られるのもどうも落ち着かなく、ため息をつき料理を再開した。




「……コレットさん」


「はい、何か用でしょうか?」


 ドアを開け顔を覗かせるコレット、悠魔は彼女を中に招き入れ、料理を並べたテーブルを見せた。


「これは何でしょう?」


「よければ一緒に食べませんか?」


「それが命令とあれば」


 2人は席に着き、並べられた料理、今回は鍋を2人で食べ始めた。しばらくして、コレットがポツリと、美味しいと呟いた。


「よかったです、口に合って……コレットさん?」


「……」


 悠魔の言葉に全く反応せずに黙々と鍋を食べ続けるコレット、そんな彼女を見て微笑ましく思うが、王宮で働いてるコレットなら普段からもっと良い物を食べてると思い、フォークが止まった時を見て聞いてみると驚きの答えが返って来た。


「私が食べてる物はこれです」


「何ですかこれ?」


 コレットが差し出したのは小さな白い塊だった、これはダイヤス帝国で配給されてる栄養食で、1個で1食分の栄養が取れると説明してくれた。試しに1個貰って食べてみると、味はなく食感もパサパサとても食べられた物ではなく、悠魔はすぐに吐き出した。


「不味い」


 悠魔は鍋に残ったスープを飲み、栄養食の不味さを誤魔化した。

 その夜悠魔はベットに入ったまま考えていた。ダイヤス帝国脱出もしないといけないが、コレットの事も気になっていた、食事中に見せた微笑みがどうしても頭から離れなかったからだ。


「見た感じ全く感情が無い訳じゃないんだよな」


 ここ数日一緒にいてコレットは命令に従う感情のない人形の様な感じだが、今日一緒に食事をした時にちゃんと感情があるのだと思い、悠魔は何とかしたいと思った。


「まぁ、取り合えず今は寝るか、明日も何があるか分からないし」


 悠魔は深い眠りの中に旅立って行った。

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