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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第一章
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旅立ち

悠魔が本を開けては閉じ、表紙に文字を書き再び開きまた閉じを繰り返していた。


「これと、これと……」


 悠魔は、すり鉢の中に、いくつかの乾燥させた、草花を入れてすり潰していると、後ろから、エミリアが話しかけてきた。


「どうですか? 悠魔さん、此処にある材料で、目的の物は出来そうですか?」


「何とか」


「よかったです」


 此処は、シャルルの工房で、彼女の許可をもらい、悠魔は調合をしているが、しかし、彼には本当に、此処にある材料を、使用してよかったのか、疑問だった。


「いいですよ、悠魔さんが何を作るのか楽しみですから、お母さんも、自由にして良いてましたから」


「ありがとうございます」


「一体、何を作ってるんですか?」


 悠魔は、草花をすり潰して作り出した粉末を、沸騰した湯の中に入れた。


「取り合えず、目的の、エストアの王都まで行くまでの必要備蓄ですかね、旅をするにも、色々必要ですからね」


 そう言い、彼はフラスコに出来上がって冷ましていた、黄緑色の液体を注ぎ始めた。


「これって、パラライズポーションですよね」


「はい、自衛用に、多めに欲しかったもので」


「私を、助ける時に使ったせいで、すいません」


 エミリアは、申し訳なさそうな顔をして、頭を下げるが、あれは、悠魔が勝手にやった事なので、彼女が気にする必要はなかった。


「気にしないでください、こうやって工房使わせてもらってるんですから、それに、元々の手持ちの個数も、心許なかったですから」


「……あのう、私も手伝います」


「ありがとうございます、調合は初めてだったもので、結構苦労するんですよね、材料調べて、調合方法調べて、調合して、やる事は山ほどあります」


「店に、在庫があればよかったのですけど……」


「まぁ、ない物は仕方ないですよ」


 悠魔は、ポーションを売ったお金で、明日の旅立ちに、必要な物をそろえようとして、シャルルにポーション類を売って貰おうと、話をしたが、残念ながら一部が品切れで、揃わなかったので、工房で調合を行うように、勧められた。


 シャルルは、一通りの道具の使い方を悠魔に教え、明日の森の外までの移動手段を確保しに、家を出て行った。




「悠魔君、買ってきたよ」


「ありがとうございますエルメスさん、なんか使い走り頼んですいません」


 エルメスは、手に持った荷物を置く、彼は街に出て、他にも旅に必要な物を、購入しに行ってくれていた。


「いいよいいよ、この街の事わからないだろし、気にしないで」


 エルメスは、固形食品、乾燥した野菜や木の実などを取り出した。


「取り合えず、これだけあればエストアの王都までは足りるだろ」


「ありがとうございます」


 悠魔は、お礼を言いながら、一つ一つを布で包み、ローブの中にしまい始めた。


「それにしても、すごい魔法のローブだね、一体どれだけの物が入るんだい?」


「さぁ、僕も貰い物なんで、そういう実験したことないですね」


 神様の話では、このローブには、無限に収納出来ると聞いてるが、実際の所は分からなかった。


「そう言えば、どうだい、ポーション類は出来たかい?」


「はい、エミリアさんが手伝ってくれたので、十分な本数が出来ました、やっぱり慣れた人がいると、早いですね」


 すべての物を、ローブにしまいこみ、明日の事をエルメスに聞く、彼は簡単に説明をしてくれた。


「明日は、僕が馬車で森の外まで送るよ、馬車なら半日もかからないからね、そこからなら日没までに、近くの村まで歩いて行けるからね」


「わざわざ、ありがとうございます」


「本当にいいのかい? 何なら、僕が王都まで付き合うけど……」


「そこまでは悪いですよ、森の外まで送ってもらうので十分です、それに、ポーションの材料や必要器具も貸してもらいましたから」




 エルメスが、悠魔を連れて階段を上がり、二階の一つのドアを開け、この部屋を使うように言い、部屋を後にして行く、その後、悠魔はベットに倒れ込み、今日あった事を振り返り始めた


「ふぅ、何か今日一日で色々合ったな、神様に転生してもらって、ゴブリン倒して、エルフの少女―のエミリアさんを助けて、その後、エルフの国に来て、エミリアさんの家で、魔法薬の調合を教えてもらって、ポーションを調合して、本当に色々あったな」


 悠魔は、しばらく天井を見ていて少し目を閉じた。


「本当に、異世界に来たんだな……まぁ、向こうの世界には、死んでも悲しむ人はいないし、大した未練はないが少し寂しいな……」


 悠魔は、そのまま静かな寝息を立てて深い眠りにのまれていった。




「ん、んん、此処は? ああ、そうか、異世界に来たんだったな」


 鳥の声と朝日の光で、悠魔が目を覚まし、体を起こす、今の状況を確認して、扉を開けて廊下に出ると、そこには眠そうな顔をした、エルメスが奥の部屋から出て歩いて着た。


「ふぁぁ……おや、悠魔君おはよう、昨日はよく眠れた?」


「おはようございます、はい、よく眠れました」


「よかった、それじゃあ、朝ごはん行こうか」


 エルメスが階段を下りて行き、悠魔も、それに続くように下りて行った。




「兄さん、悠魔さんおはようございます」


「あら、エルメス、悠魔君おはよう」


「おはようございます、エミリアさん、シャルルさん」


 シャルルが、お盆を持って調理場から出て来た、お盆の上に野菜の炒めもの、果汁ジュース、生野菜のサラダなどの、料理が載せられていた。


「ごめんね悠魔君、エルフは植物性食品しか食べないのよ、人間の貴方の口に合うか」


 一瞬彼女の言ってる事が、悠魔には理解できなかったが、すぐに理解する。


 彼女らと悠魔は、種族が違うため味覚が違う、それを気にしたシャルルだった。


「……ああ、そういう事ですか、気にしないでください、郷に入れば郷に従えてね、それに、こんなに美味しそうな料理は、なかなか見られませんし、こんなに新鮮な野菜初めて見ました」


 悠魔がテーブルに置かれていく、料理を見てサラダは水水しく、炒められた野菜からは、いい匂いが立ち上り、悠魔の食欲を奮い立たせた。


「それじゃあ食べましょうか、いただきます」


「「いただきます」」


 全員が席に付き、テーブルに並べられた料理を食べ始めた。


「悠魔君は、エストアの王都に行くのよね」


「はい、あそこは治安もいいですし、商業が盛んですから、色々と情報や物が見れそうですからね」


 悠魔は、この世界に来て、初めに行った事は本を使い、今いるあたりの、周辺の国を確認、国の治安や商業情報を調べる事だった。


 その後に、持ち物の確認してる時に、エミリアの悲鳴が聞こえて来たのだった。


「後は、ギルドに行って、冒険者登録して活動しようかと」


 ギルドは、いくつかの国によって、運営されてる組織で、そこに登録すると冒険者と呼ばれ、依頼を受けたり魔物の素材、鉱石、薬草なのどの草花の買い取りを行ったり出来る様になる。


「しばらくは、エストアの王都に、とどまって依頼を受けて、お金を貯めようかと」


「それなら後で、調合セットをあげるわ、それがあれば、ポーションとか自分で作れるでしょ」


「ありがとうございます!」


 彼女の提案は、願ったり叶ったりだった、神様からの貰った、荷物の中にはその手の物はなく、何処かの街で買うか考えていた。


 シャルルの提案に悠魔は、お礼を言い、他にも雑談などをしながら食事をして、出発の時間になった。


「色々と、ありがとうございました」


「いいのよ、娘の恩人だもの、また近くに来る事が合ったら寄ってね」


「悠魔さん、頑張ってくださいね」


 エミリアは、自分を助けてくれた、少年に激励を送る。


「はい、頑張ります」


「悠魔君、そろそろ行こうか」


 悠魔は、シャルルが用意してくれた、馬車に乗りエルメスが出そうとするが、彼は少し待ってもらう様に、声をかける。


「そうだ、エミリアさん、これ――」


「何ですか、これ?」


 悠魔が懐から、透明な液体の入った小さな瓶を、取り出しエミリアに渡した。


「昨日、作った回復薬の一種です、まぁ、初心者が作った物ですから、効くかはわからないが、貰ってください」


「いいんですか?」


「でも、一応鑑定して、調べてからにしてくださいね、手順間違ってると大変ですから」


「はい、大切にさせてもらいます」


「エルメスさん、お願いします」


「それじゃあ、馬車を出すね」


 エルメスが馬車を動かし始めた、ゆっくりと前進して、馬車はだんだん小さくなって行き、見えなくなった。




「この薬、見た事ないタイプですね」


「そうね、透明な色の薬なんて……エミリア、ちょっと見せてもらえる?」


「いいですけど?」


 エミリアは空に瓶をかざして中身を見る、そこには、全く濁りのない、透明な液体が入っていており、それを、母親のシャルルに渡しす、シャルルは家の中に入っていて、


鑑定(アナライザー)


 鑑定の魔法を発動して、中身を液体を、色々な角度から見始めた。


「え、鑑定できない」


「どうしたんですか?」


「この瓶の中身の詳細がわからないのよ」


「鑑定魔法の発動ミスですか?」


「違うわね、詳細自体は出てるけど、不明なのよ」


「じゃあ、この瓶の中身は、何で鑑定できないんでしょ?」


「理由としては、鑑定の魔法で調べられる範囲を超えてるって事ね」


「と言う事は、この液体は、宝具クラスって事なんですか!」


 鑑定魔法は玩具、魔具、宝具、神具クラスと別れている道具の玩具、魔具クラスまでの物しか、鑑定出来ない。


「ハァ~(これは困ったわね、どうしたものか……)」


「母さん?」


「……上位鑑定(ハイアナライザー)


 シャルルは、しばらく考えて、何かを決めたような顔をして、別の魔法を発動させた。いくつもの魔法陣が、瓶を立体的に囲み、ゆっくりと回転しだした。その様子をシャルルは難しい顔をして、じっと見ている。しばらくすると魔法陣が消え、シャルルが椅子に座り頭を抱えて考え出した。


「か、母さん?」


「エミリア急いで悠魔君を呼んで来て」


 頭を抱えていたシャルルは、傍に居たエミリアに、今しがた出て行ったばかりの、悠魔を連れ戻す様に声をかけた。 


「え、えっと」


「早く! 今から急いでいけば、ギリギリ出国前に間に合うかもしれない!」


「は、はい!」


 シャルルの剣幕押されて、彼女は家を飛び出て走って行く、残されたシャルルは、テーブルの上に置かれた瓶を見て、苦笑して天井を見上げた。


「あの子、なんて物を置いていくのよ……」


 彼女の顔は、疲れたように青くなっている、しかし、それも当たり前だ、目の前に置いてある物は、本来この世に、今は存在しえない物だったからだ。




 息を切らし、門まで来た、エミリアだったが、すでにそこには、馬車の姿も、悠魔達の姿もなかった。


「あれ、エミリアちゃん、そんなに慌ててどうしたの?」


「兄さんは⁉」


「少し前に手続きして、出て行ったよ」


 門番の話を聞いて、エミリアは自分が間に合わなかったのだと、悟りその場に立ち尽くした。





「ありがとうございます」


「いや、こちらこそ妹を助けてもらって」


「いえ、こちらこそ移動中に、魔法の事まで教えてもらって、ありがとうございます」


「もっと、詳しく教えてあげればよかったんだけど、いいかい悠魔君、魔法を使うには、使いたい魔法の存在を、正しく理解していたら、名称を呟くだけで魔法陣を展開出来るから、展開した、魔法陣に魔力を込める事で、発動出来るからね、初めは、難しいかもしれないけど頑張って」


「はい、わかりました、色々ありがとうございます、そろそろ名残惜しいど行きますね」


「ああ、また近くまで来たら寄ってくれ」


「はい、必ず」


 森を抜けた先で、悠魔が馬車から降りて、エルメスに頭を下げ別れの挨拶をすると歩き出した。

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