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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第二章
34/227

再び王宮に

「これが、頼まれていた騎士ポーションと魔導士ポーションです」


「確かに受け取りました、少々お待ちください」


 ギルド職員が悠魔が持って来た木箱の中身を確認して一袋の革袋を渡した。


「こちらが、依頼料になります」


 今度は悠魔が革袋の中身を確認してローブの中にしまい、その後一つの缶を取り出し受付嬢に見せると、彼女は興味深そうに缶に視線を送ると。


「最近作った薬草茶と言うものです、少しですがポーションの効果が得られるお茶の粉末です」


「ポーションの効果を得るですか?」


「今はまだ体力を回復するくらいしか出来ませんが」


 悠魔が前もって用意してあったお湯をローブから取り出し、ギルド職員の湯呑に缶から小さじ一杯ほどの粉を入れお湯を注ぐと、お茶のいい香りがしてギルド職員が湯呑を手に取り一口飲むと。


「美味しいですね、それにポーションの効果が微弱ですがありますね」


 悠魔は昨日アリスとナナと話した内容を話し、それを聞いたギルド職員は値踏みをするように手元の湯呑に視線を落とし考え出した。


「そうですね、一缶銀貨二枚くらいでどうですか?」


「ん~もう一声」


「……それでは、銀貨三枚でどうですか?」


 ギルド職員は二本立てていた指を三本にして、これ以上は無理ですと頭を振った。


「交渉成立です、また後日持ってきます今日の一缶はサービスって事でおいて行きます、冒険者に出して感想を聞いておいてもらえませんか?」


「分かりました」


 交渉が終わり、悠魔が退室しようと立ち上がろうとするとドアが勢いよく開き、何時も受付に居る受付嬢が慌てた様子で入って来て。


「すいません! 悠魔さんお客様がお見えになってます!」


「……僕にですか?」




 デジャヴを感じてしまい、ギルド職員に交渉のお礼を言い退室して受付嬢に連れられて行くと受付の近くでよく見知った人物が三人立っており。


「ジェンガさん、コトナさん、アリスさん、どうしたんですか? 三人そろって」


「君に会いに家に行ったんだが、いなかったものでね、彼女に場所を聞いて来たんだよ」


「僕にですか?」


「実は王宮に来てもらいたくて」


「王宮にですか?」


 悠魔はここ最近特別王宮に呼ばれる事は、何もしてなかったと思い三人に連れられ王宮に向かった。道中アリスが同行している理由を聞くと、陛下が悠魔とアリスを呼んでるとコトナが教えてくれて、アリスは心底面倒くさいと言う顔をしていた。



 王宮の一室に案内された、悠魔とアリスは紅茶を飲み陛下のが来るのを待ってると、ドアが開き陛下と布で包まれた板状の物を持った王宮魔導士のルチアとジェンガが入って来た。


「二人とも急に呼び出してすまない」


「大丈夫です、それで今日はどのようなご用件ですか?」


「先日、コトナと魔女殿が討伐した、地竜について何だが?」


「そちらについては、私から説明させていただきます」


 ルチアは手に持っていた荷物をテーブルの上に置き包みを取り去ると、そこにはアリスとルチアの持ち帰った、鉄の様な黒いプレートだった。


「まず、此方を調べた所このプレートは竜種の鱗だと言う事がわかり、現在王国内で確認されてるどの竜種の者ではないと、言う事がわかりました」


「はぁ!? これが鱗だって」


 その言葉を聞いて驚いた声を上げたのは、意外にもアリスだった。


「それなら、この鱗の持ち主はどれだけ大きいんだ……これは、話半分に聞いていたがあのゴブリンの言う事に信憑性が出て来たな」


「次に、討伐された地竜の体の一部を調べましたが、此方も王国内で確認されていない種類だと判明しました」


「新種だってことですか?」


「はい、ですが不思議な事にこの鱗と討伐された地竜との遺伝子が一ミリのずれなく一致しました」


 その話を聞いた悠魔とアリスは驚き、この鱗とアリスとコトナが討伐した地竜が同一の生物だと言われ。


「ありえない」


「はい、双子で合っても遺伝子が同一と言うのはまずありえません」


「なら、一体どういう事なんですか?」


「地の起源龍グラウ」


「魔女殿……どういう意味ですか?」


「神話にあるだろ地の起源龍は、かつて世界を滅ぼす時に眷族を従え世界を蹂躙したて、あの黒い地竜を生み出せても――神のなす事だ僕らの想像を超えていてもおかしくはないだろ?」


 誰もアリスの話に何も言えなく、世界を創生した神、世界を破壊する神二つの顔を持つ起源龍と言われた神龍または邪龍とも言われる神はどちらが本当なのか、分からなくなり頭を悩ませた。


「……あのぅ」


 悠魔がその場で恐る恐る手を上げ皆が注目するなか発言した。


「話が変わるんですが、アリスさんとコトナさんが訪れた遺跡の特徴を聞くと、前に僕がアリスさんと訪れた遺跡に類似する点があるのですが?」


「っ!? そうだ、あの遺跡だ、何で僕は気が付かなかったんだ!」


 アリスは今それに気が付くと、色白の彼女は蒼白になり。


「聖剣! 少し付き合えあの遺跡を調べたい起源龍が居るかいないかは分からないが、あの地竜と同等の化け物が居る可能性がある」


「陛下」


「構わない行ってきなさい、国内にそのような場所があるのなら調べなければいけない――魔女殿他に必要な物はあるか?」


「なら、王宮魔導士のその娘も借りたい」


「わ、私ですか!?」


「分かった、ルチア二人に同行してくれ」


「わ、わかりました」


「アリスさん、僕も」


「ダメだ!」


 悠魔の申し出をアリスは即座に切り捨て、今悠魔の力では、あの地竜と同等の物が出て来た場合安全の保障が出来なく、尚且つ足手まといでしかないと厳しい事を言い俯いてしまった。悠魔を見て、アリスはその頭に手を置き。


「すまないと思う、だが分かってくれ今の君では足手まといにしかならない」


「……はい、その代わり約束してください、絶対帰って来るって」


「ああ、帰って来るよ安心しろ、それに今回は調査が目的だ危なかったらすぐに撤退するし聖剣もいる、気に食わない奴だがその実力は本物だ」


「はい」


 アリスに説得され悠魔は納得すると、アリスは陛下に向き直り。


「僕がいない間、悠魔の身の安全を頼みたい」


「わかった、すぐに手配しよう」


 陛下がジェンガに目配せすると彼は頷き部屋を出て行った。王宮を後にした悠魔は護衛に就いて来たコトナと共に帰路に着き。




「お帰りなさい」


「ただいま」


「お邪魔します」


 ナナは何故、悠魔とコトナが一緒に帰って来たのか疑問に思い理由を尋ねると。


「……そうですか、それでコトナ様が護衛に」


「僕はいいって言ったんですけど」


「これも仕事なんで、我慢してください、明日には皆さん帰ってくると思うんで」


「はい」


 悠魔が工房で作業をしていると、コトナが覗き込んで来て。


「何してるんですか?」


「ポーションの濃度を高める研究です」


 悠魔の手元では色々な調合方法が掛かれた紙があり、それを見ながら調合方法を少しずつ変えて調合をしていった。


「そんな事なら、アリスさんに聞いたら色々知ってるんじゃないですか?」


「ん~それってつまらないですよね、自分で答えを探すのが楽しいじゃないですか、これは半分僕の趣味みたいなものですからね、人の命でも関わらない限り自分で試行錯誤しますよ」


 悠魔は魔道具作りで神様に貰った、世界のすべてが書かれている知識の書を最小限でしか使わずこの世界にある本を読み勉強していた。まるでゲームを楽しむみたいにトライ&エラーを繰り返し。


「ん~少し休憩」


 伸びして悠魔が立ち上がり二つの湯呑に緑の粉を入れお湯を入れてお茶を作りコトナに渡した。お茶を飲んだコトナは、そのお茶が普通のお茶ではない事に気が付き。


「このお茶、何ですか何だか疲れが異常に取れるんですが」


「ん、僕が作った薬草茶ですよ、微弱ですがポーションの効果があるんです」


「へぇ~ポーションて、とても苦いですからこれは飲みやすいですね」


「まぁ効果は微弱ですし冒険中の休憩の時くらいに飲む為に作った物ですから」

 

 悠魔はお茶を飲み新たに緑のクッキーを取り出した。コトナにクッキーを進め彼女が口に入れた瞬間、コトナは目を見開き、その場で悶えた。


「ぐっ、けほ、何ですかこの味、に、苦いです」


「やっぱりダメか」


「どういうことですか!?」


 悠魔が出した緑のクッキーは薬草の粉末を混ぜて作った試作のクッキーで、それを悠魔は味見をしないでコトナに食べさしたのだ。


「……どうやって改良した物か、砂糖は貴重品だから余り多くは使えないし」


「この人……以外に人でなしですぅ」


 今だ口の中には強烈な苦みが残っていて、コトナは涙目になっており、そんな彼女を一目見て悠魔は目を逸らし、コトナはお茶を飲み苦みを消そうと努力した。 

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