夢の一軒家
鬼人の里から帰って来ると、コトナは王宮に盗賊の事と謎の地竜の存在の報告があると言い別れ、悠魔とアリスはサレーナ公爵家に向かい。
「悠魔さん! アリスさん!」
「フェレさん」
「お帰りヒガンサクラは?」
「取れました」
悠魔が袋に入っているヒガンサクラの花びらを渡すと、フェレクスは慌てて工房の方に走って行き悠魔もそれに続いて行った。
アリスだけがその場に残され、彼女はレイラの様子を見に別館に足を向けて歩き出した。
「悠魔さん、此処に花びらを置いて」
「はい」
フェリクスの工房には、色々な機材が置いたりその一つの前で二人は作業をしていた。今している作業はヒガンサクラの魔力加工を施す作業で。
「この装置、加工盤でしたっけ?」
「うん、使用者の魔力を使い魔力加工をする事が出来る装置だよ」
フェレクスが加工盤に手を置き魔力を流すと、加工盤が輝き上に置いてあった花びらに吸い込まれるように光が消えていく、フェレクスが魔力加工された花びらを悠魔に見せ、花びらからは多少の魔力が感じ取れ。
「へ~、これが魔力加工」
「さて、それならこれから淡紅のお香を作ろうか」
「はい」
フェレクスは手際よくお香を作って行き、悠魔が隣で同じ物を作っていたが、悠魔が一個作る間にフェレクスは三個程作って行き。
「よし、これで終わり」
「作るの早いですね」
「ん、ああ、こんなのは慣れだよ、悠魔さんも筋はいいからすぐに出来る様になるよ」
「出来ますかね」
「……そう言えば悠魔さん、あの露店で売ってたポーションの販売を本格的に始めたいんだったね」
悠魔はヒガンサクラの採取に向かう前に、ギルドの職員に泣きつかれた事を話をフェレクスに話工房を定期的に使えないかと話をしていた。
「ん~、僕の工房を貸すのもいいけど、どうせなら自分の工房を持つのはどうだい?」
「自分の工房ですか?」
「うん、此処に行ってみるといいよ、格安で借家か空き家を提供してるから」
フェレクスに一枚の紙を渡され、そこには地図が書かれていた。
「まぁ、余りいい物件がなかったら僕の工房を貸すから一度見ておいで、機材の購入にも相談に乗るから」
フェレクスは完成させた、お香を乾燥機の中に入れた魔力を流し込んだ。
「それは?」
「ん、乾燥機で魔力を流すと中の物を普段の何倍もの速さで乾燥させることが出来るんだ」
機材の説明を受け、悠魔は色々機材の事を聞いて行き必要そうなものをメモしていき、乾燥機の駆動音が止まるとフェレクスが中から完成したお香を取り出した。
「うん、いい出来だ」
出来上がったお香を見て、うんうんと唸るフェリクスは一つを持って工房を飛び出して行き、悠魔は、苦笑しながら飛び出して行ったフェリクスを追い工房を出た。
「あら、いい匂い」
「うん、何だか落ち着く」
ナナとレイラが、お香の香りをかぎうっとりと癒されるような表情をして。
「悠魔っち、アリスっち、フェレクス様、わざわざあたしの為にありがとう」
幾分か顔色のよくなったレイラは三人に頭を下げ、前みたいにはいかないが笑顔を取り戻しつつあった。
「うん、もういいかなレイラちゃん、悠魔君、私もう二、三日したら王都を出ようと思うの」
「え、ナナっち行っちゃうの」
悲しそうな表情をするレイラだがナナは。
「本当はもう少し居たいんだけど……実は貯金がもう尽きそうなの、それなりにため込んではいたんだけど……ごめんね」
「……そんな」
ナナが申し訳そうに眼を伏せ、フェレクスが何かを言おうとするのを悠魔が制止して、ナナにある提案をした。
「ナナさん、一つお願いしたい事があるんですか?」
「何? 悠魔君」
「実は……ギルドに、この前市場で売ったポーションを定期的に売ろうと思うんです」
「うん」
「そこで、手伝いを探してるんです……一日銀貨一枚ではどうですか?」
「悠魔君、それは身贔屓が過ぎると思うんだけど」
少し呆れた顔をするナナに対して、悠魔はどうするか尋ねると。
「でも……」
ナナがチラッとレイラを見るとレイラの表情は不安そうで、しばらくナナは考え、折れた様に悠魔の提案を受け入れた。
「と言う訳でやってきました」
「……」
悠魔とナナはフェレクスのメモの通りに書いてあった、借家や空き家を紹介してくれる店の前に来ていた。少々ナナの顔は呆れており。
「お邪魔します」
「いらっしゃい、どんな物件を探してるんだ?」
店の中に入ると、筋肉質の男がカウンターに座っており、ギロリと悠魔とナナを睨むとナナが怯え悠魔の後ろに隠れた。
「えっと、魔道具を作る工房が出来る物件を探してるんですけど、出来れば空き家で欲しいですけど」
「てめぇ、金はあるのか?」
「えっと、白金貨一枚までなら」
「それだけあれば十分だ――ちょっと待ってろ」
男はだるそうに立ち上がり、店の奥に歩いて行った。悠魔は自分の背後に隠れるナナを見ると、ナナは涙目になりながら小動物みたいに震えていた。悠魔は不謹慎にも、これは可愛いと思ってしまい。
「おい、行くぞ」
「はい、お願いします」
店を出て何件か空き家を見せてもらい、一つだけ調合用の大釜がついており魔道具店をしていたのか品物を並べる事の出来る棚がついた部屋もあった。
「此処って元は魔道具店だったんですか?」
「ああ、老夫婦がやっていたんだが数年前にポックリ逝っちまってな、店をしないにしても裏に小さな畑と井戸があるから優良物件だ、今なら金貨五枚だ」
「畑や井戸の方を見てもいいですか?」
「おう、こっちだ」
男に案内されて裏に案内されると雑草が生えた畑と釣瓶の壊れた井戸があり、悠魔が井戸にロープの付いた桶を放り込み水をくみ上げると、水は綺麗に透き通っていた。
「どうする、此処にするか?」
「……はい」
悠魔は少し考え込んでこの空き家を購入する事にした。男の店に戻り手続きをして、店を後にして機材の購入の相談をするために一度サレーナ公爵家に戻った。
「よし、こんな物だろ必要な機材は手配しておくよ、料金は僕が持つよ」
「いや、そんなのは悪いですよ」
「これは、お祝いだ君が工房を持っただから受け取ってほしい」
フェレクスはメイドを呼び、購入する機材を書いた紙をロール状に丸目糸で縛ってメイドに渡した。
購入した家の庭では。
「何で僕がこんな事を……」
「まぁまぁ、こんなに荒れていたんじゃ使えませんから」
不満そうなアリスとそれを宥めるナナが草むしりをしており、悠魔は家の中を掃除していた。
「結構部屋数あるよな」
悠魔が購入した空き家は一階に物を売る場所、その隣の部屋に厨房があり後ろに二部屋あり、その奥に裏庭に出るドアがついていて、階段を上がると四部屋ある造りになっていた。
「さて、今日中に掃除は終わらせないとな」
悠魔はすべての窓を開けて、室内に溜まっていた埃を掃除し始めた。しばらく掃除をしていると家の入り口から声が聞こえて来たので、悠魔は掃除の手を止めて確認しに行くと、そこにはコトナとジェンガが立っており、コトナはニコニコ手を振り、ジェンガは物珍しそうに室内を見ていた。
「どうしたんですか二人とも?」
「フェレから聞いたんだが家を購入したと聞いてね、見に来たんだよ」
「掃除中ですか?」
「はい」
「手伝いますよ」
「よし、僕も手伝おう」
エストア王国最高戦力は置いてあったホウキを掴み家の奥に歩いて行き、それに続くように国を守る騎士は布巾とバケツを持ち同じく家の奥に続いて行った。
「……」
悠魔は、あの二人に掃除何て雑用を押し付けていいのか疑問に思うが、あの二人を止める事は出来ないと思い自分も掃除を戻ろうとすると、新たなフェレクスとメルジュと言う来客が現れ悠魔が止めるまでもなく二人も掃除道具を手に持ち家の奥に入って行った。
「……掃除しよ」
悠魔は考えるのをやめ、掃除に専念しだした、時々庭を見ると。
「おや、悪名高い剣姫の魔女が庭で草むしりとは、丸くなられたようだね」
「おやおや、これこれは、聖剣様がホウキ片手に家の掃除とは随分と暇なようで」
魔女と聖剣の顔は笑っていたが、その目は笑ってなく一触即発の雰囲気で近くにいた、ナナはよほど怖いのか、二人から離れた所で二人を視界に入れない様に草むしりをしていた。
「それにしても、すごいメンバーで掃除してるな」
悠魔は掃除してるメンバーを見て聖剣、王国騎士、公爵家の兄妹、元魔女教団の魔女とどう考えても家の掃除をするメンバーではなかった。
「こう思うと、ナナさんくらいが普通の人間だよな」
「私がどうかしました?」
「――いえ、何か凄いメンバーだなと思いまして」
「確かに、そうよね……これも悠魔君の人徳かしら?」
「え、何て言いました?」
「何でもないわよ」
ナナの最後の方の言葉は聞き取れなく聞き返すが結局聞けなく、そのまま庭掃除に戻って行き日が傾く頃には、庭は雑草を抜き取られ井戸の壊れていた釣瓶は直っていた。室内は空気を入れ替えて掃除をした事で埃っぽさはなくなっていて綺麗になっていた。
「皆さんの御蔭で思いのほか早く家が綺麗になりました、ありがとうございます!」
悠魔が頭を下げ、厨房に置かれた大きなテーブルには、色々な料理や飲み物が置かれており、それを囲む様に皆が立っていて一斉に手に持っていた木製コップを打ち鳴らし食事をし始めた。




