表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第一章
22/227

番外編 魔女の岐路 1

此方は番外編になります谷底に落ちて行ったアリスがどのように助かり王都に戻って来たかを描いています。

 ――ああ、こんな事になるなら早くあの街を出るべきだったな悠魔ごめんね君を巻き込んで、許してくれとは言わない、それでもごめん剣姫の魔女はそう思い谷底に落ちていった。




「こ……此処は……何処だ」


 アリスが目を覚ましたのは、薄暗い小屋のベットの上だった。体を起こそうとするが思うように体が動かなく体中に痛みがはしり、よく見るとアリスの体は包帯だらけで巻いてない所の方が少なかった。


「一体誰が僕を……」


 アリスの頭の中には色々な疑問が浮かび上がり続けて、考え事に耽っていると小屋のドアが開き一人の奇妙な女性が入って来た。その女性を見た時アリスは奇妙な感覚に覆われ、何だこの感じこの女何者だと思い。

アリスは寝たままの状態で女性に視線を向けると、女性には見えるがそれ以外は全く分からないという感覚に覆われ、警戒すると女性は目を覚ましたアリスを一瞥して、棚に置いてあった真新しい包帯と緑の液体の入った瓶を持って歩いてきた。


「よかった、目が覚めたのですね」


「君は?」


「私は、この死の谷に住む魔女です」


「ありえない、此処には魔力がないどうやって?! っ!」


 この女性は自分が魔女だと言い、それだけならアリスはそれほど驚かなっただろう、魔女自体は珍しくもない、だがこの場所、死の谷には何らかの力により魔力が打ち消されしまい、魔法が使えないからだ、こんな環境では魔女が生きられる訳ないと思ったからだ。


「あら、変な事を言いますね、別に特別な事をしてる訳ではないですよ、畑を作り川で魚を取り上の森で果実を積み、それだけで生きていけますよ」


「!?」


 アリスは再び驚いた、この魔女は魔法を使わないで生活しているのだ、普通の人間がするように、ただただ普通に生活しているのだ。アリス自身この谷に危険な生物がいないのは知っていた。だが進んで、こんな所で生活するかと聞かれれば答えはノーだった、魔女である彼女が魔法を捨ててまでこんな不自由な生活をする理由がなかったからだ。


「驚きましたよ、魚を捕りに川に向かうと、酷い怪我をした貴方が倒れていたのですから……目覚まして、本当によかったです」


「っ!? 僕以外に誰かいなかったかい!? 悠魔は!?」


「いえ、悠魔さんという方は知りませんが貴方だけでしたよ、周りを少し散策しましたが、他には何も見つけれませんでしたから」


 その時のアリスの心情は悠魔の安否が気になって仕方なかったが、まともに動かない体ではそれを確かめる事も出来なく、悔しそうに苦悶の表情を浮かべた。


「包帯を変えますね」


 魔女が寝ていたアリスをそっと起こして、包帯を外して傷口に緑の液体を塗り包帯を巻いていった。




「あなたは三日ほど眠っていたんですよ」


「そうか、迷惑をかけた」


「いえいえ、大丈夫ですよそれより体は平気ですか?」


「痛い以外は問題ない」


 魔女は、それは生きている証拠ですよと言い、白くどろっとした液体を鍋から皿によそい持って来た。アリスはすぐにその食事が病人や怪我人がよく食べる流動食と分かり嫌そうな表情をするが。


「そんな顔をしてもダメですよ、まずは胃に優しいものから食べないと」


「それ美味しくないんだよね」


「それでも食べてください……事情は知りませんが、今は少しでも食べて回復しないと体がもちませんよ、やらないといけない事があるのなら尚更です」


 アリスはため息をはき、それもそうだと言い流動食を食べ始めた。やはり味は美味くなかったがそれでも早く傷を治し動けるようになるために我慢をして食べ、そんなアリスを見て魔女はそれだけ食欲があれば大丈夫ですねと小屋を出て行った。

 それから数日の日がたち、アリスの傷もある程度塞がり一人で歩く程度までに回復してアリスは小屋の外にある木製の椅子に座って魔女が畑の世話をしているのを見ていた。魔女は鍬を振るい土を耕せ種を蒔いて川で水を汲んで来てそれを畑に撒きを繰り返していた。




「君は、何でこんな不便な所に住んでいるんだい?」


「そうですね、第一の理由は谷の外は魔女が住みにくいですからね……その点此処は基本人が来ませんから」


「…………」


 アリスは彼女の言う事は何となくわからなくもなかった、魔女と言うだけで迫害はあるアリスは自分は善人ではない事は知っている、沢山の人を殺し国を滅ぼした魔女でも、その原因を作ったのは人間だと思っているし、自分を迫害した人間達()()()は決して住みやすい世界ではなかった。そんな事を考えてたアリスの視線がある積まれた石の塊に注がれた。


「あれは?」


「……お墓です」


「墓?」


 魔女の昔を懐かしむ用にただの石の積まれたお墓を見て語りだした。

 魔女自身此処には一人で住んでいる訳ではなかった、昔はただ1人、魔女が魔女だと知っても一緒にいたいという男性と一緒に住んでいたのだが、人間と魔女と言う種族の違い人間の寿命は短く魔女は死なない訳ではないが老ける事のない、不老で何百年何千年と生きられる魔女は男性が寿命で死んでしまって一人になってしまったがこの地に留まり続けた。

 この地には男性との思い出があり離れる事が出来なかったからだと教えてくれた。アリスは淡々とその話を聞いていて、魔女はそんなアリスに何か思う所があったのか。


「もし、あなたに大切な人間が居るのでしたら、例え別れが分かっていても一緒にいた方がいいですよ。その短い一時を一緒に居られて良かったと胸を張って言える様に良き思い出を作ってください」


「君は…………」


「はい?」


「……いや、何でもない」


 アリスは、魔女に男性と一緒に居られて本当に幸せだったのかと聞こうとして、しばらく考え聞くのをやめた。魔女は、お話もこの辺にしてそろそろベットで休んでくださいと言い椅子から立ち上がり農作業に戻って行った。


「悠魔……君は無事に生きてるのかい」


 アリスはそびえ立つ絶壁を見上げ、こんな魔女にも優しくしてくれた青年の顔を思い浮かべ、小屋の中に戻りベットに入り眠ってしまった。それからまた数日が経ちアリスの傷も殆ど治り失った腕も魔女の協力があったので簡単に義手が用意でき、ここまで世話になってばかりなので魔女に出来る事はないかと聞くと、魔女は魚の入った網と包丁を渡し、これを捌いて保存食を作ってくださいと言い調理場に案内してくれた。

 アリス自身千年近く生きているので料理は人並み以上に出来る、さっさと魚を捌いて行き数十匹いた魚を保存食にしやすいようにしていき、それを見た魔女が上手ですねと隣で今から食べるための野菜や魚を料理をして皿に飾り付けていった。

 数日後には傷も完治し、アリスはそろそろ行くよと言い魔女は、そうですかと言い残念そうな寂しそうな表情を浮かべたような感じがした。




「これが保存食になり、こっちの緑のが傷薬になります」


「いいのかい、こんなに貰ってしかも傷薬も、こんな所に住んでいたんじゃ貴重品だろ?」


「構いませんよ、予備はまだありますから」


「そうか、すまない何から何までありがとう」


 アリスは魔女から貰った荷物を背負い礼を言い、魔女は少々名残惜しそうにアリスを見つめ他にもこの谷を出るための道順を教え王都まで戻る為の地図も用意してくれた。


「アリスさん、貴方の大切な人に再び会えるのを、私はこの谷の底より願っています」


「ああ、ありがとう色々世話になった」


「いえいえ、私も久しぶりにお話が出来てよかったです」


 アリスは再び魔女に礼をいい、歩き出した霧の掛かった谷底を歩いて行くと、魔女に聞いた登れる傾斜を見つけて登り始めた。アリスは少し上ると息を切らし傾斜に座り込み、魔法が使えないとこの程度の傾斜を登る事さえままならないと思い、少し体を鍛えて体力を付けようと思った。傾斜を登るにつれて魔法が使える様になり、強化魔法を発動して一気に傾斜を登り切り場所を確認した。


「えっと……今は此処だから思いのほか遠いな……まずは、この村かな……宿あるといいんだけど……まぁなかったら野宿だな」


 アリスは地図を見て王都が思いのほか遠く、取り合えずの予定を立て谷に沿って歩き出し不意に足を止めて谷を見下ろしてある事を思い出し、そう言えば魔女の名前を聞いてなかったなと思い。


「あの、魔女何処かで? いや、気のせいか?」


アリスは何度か魔女が使っていた認識阻害の魔法を破ろうとしたが結局破れずに、もう少し力ずくですれば出来たが、悠魔と出会い心に変化の生まれたアリスには助けてもらった恩人にそこまでの事は出来なく途中で諦め。


「分からない事は考えても仕方ないな……さて、生きていてくれよ…………」


――悠魔


ポツリと最愛の人間の名前を呟き歩き出した。

ちょいちょいこういう番外編を書いて行きたいです。本編を楽しみにしていた方はすいません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ