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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第九章
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成果なしと面倒な生徒達

 エルフェリアは物置となった部屋に一人おり、その手にはこの学院の見取図があり、彼女は赤い×マークの付いた場所を確認していた。


「やはり日が経過してると何もわかりませんね」


 ため息をはきながら自身のあらゆる物、現象を解析する異能の起動を止める。


「私の異能で解析出来ないですか……ただ単に日が過ぎたから痕跡が消えたのか……それとも元々痕跡がなかったのか……まぁどちらにしても少し面倒ですね」


 次に事件が起きた場所の赤い×マークの所に向かうために部屋を出て廊下を歩いて行くと、鐘が鳴り授業終了の合図と同時に生徒が教室から出て来て廊下が騒がしくなる。


「もうお昼ですか……一応悠魔さんに声だけかけておきましょうか」


 昼食の時間になり生徒の殆どは食堂の方に歩いて行く。自分は別に食事をする必要はないが、悠魔は違うので取り合えず今まで調べた成果の意見を聞こうと彼の担当してる教室に向かう。




 教室に向かう途中で悠魔と合流する出来たので二人で食堂に向かう、食堂内は沢山の生徒で賑わっており、悠魔とエルフェリアは一番隅の方の席に座り食べ始める。


「美味しい」


「私としては悠魔さんの作った方が美味しい感じがしますね」


「そ、それは……えっとありがとうございます」


「まぁ美味しいか美味しくないかはどうでもいいですけど……それで調べた結果ですけど……」


 すべては調べてないが今の所何も手掛かりが全くない事を報告する。


「全く手掛かりがないですか……」


「はい、ただ単に日数が経過ししまい私の異能でも何も捉えられないのか……もしくは」


「事件の犯人が何も手掛かりを残してないかですか?」


「はい、私としては前者より後者の方が濃厚かと」


「どうしてですか? 後者の方がありそうですけど?」


「文字通り何も出ないんですよ。この異能はどんな些細な事でも分かりますけど、当たり前の事しか分からないんです」


 異能で分かった事はその場所に使われていた壁や床の材質などどれも当たり前の事ばかりで、ここまで何も情報が分からないのは意図的に痕跡を消された可能性がある。


 いくら日数が経ってるとはこれだけ事件の痕跡がないのはない、これだけでも証拠隠滅を疑うにはエルフェリアは十分だと考えた。


「正直エルフィリアさんの異能を完全に当てにしてましたから……これはちょっと面倒な事になりましたね」


「魔獣や天使が出てこないだけましですよ」


 二人は前回は秘境で酷い目に遭ったので、今回は王都の中と言う事もそれほど面倒な事にはならないと思っていたが、エルフェリアの異能で何も情報が得られないとなると少々面倒だと思い始めた。


「悠魔さん昼からの予定は?」


「この後は魔法の実技です。場所は……第三演習場です…………」


「悠魔さん、どうかしました?」


 妙な沈黙にエルフェリアは疑問を覚える。


「いえ、少々面倒な生徒が何人かいましてね」


「面倒ですか?」


 エルフェリアは授業風景を思い出す。悠魔の授業に問題はなかった。説明は丁寧で分かりやすい、だから教室を出て事件の内容を調べに行っが、思い出す数名の生徒の目が明らかに悠魔を見下すような視線をしていた。悠魔の外見や聞いた事のない名前、それらの要因でどうも軽く視られてる様だった。


「まぁ世間知らずの貴族の子供なんてそんなものですよ。気にしても始まりません」


「そんなもんですかね。これまで名前を伏せてもらってたのが仇になりました」


 面倒事に巻き込まれるのが嫌で、この国での成果はすべて名前を伏せてもらってる。


「伏せてもらってたので貴族の子供まで話が回ってなかったんでしょうね。その親はどうか知りませんけど」


「実技の方も面倒事がなく終わるといいんですけど……」


 明らかに舐め腐った意見が何度か座学で飛んで来たが、魔法について表面上しか知らない生徒の質問程度なら少し踏み込んだ説明をしたら簡単に黙り込んでしまった。


「まぁなる様になりますよ多分……一応私も行きますから」


「ありがとうございます」


 少し疲れが見える悠魔に仕方なく次の実技の授業について行く事にした。




 動きやすい服装に着替えた生徒たちが演習場に集まり、悠魔も動きやす服に着替えたがエルフィリアだけは着替えずそのままの服で少し離れた所に立って授業風景を見ていた。


「それでは実技授業を始めようと思います。今回は魔力の操作を教えようと思います」


 魔法を使用するにあたり必要なのは魔力の操作で、適量な魔力を操作しいかに魔法陣に流すかで発動する魔法の精度が決まるが……どうやら早速この授業に不満がある生徒がいるようで抗議の声が上がる。悠魔に舐めた態度で見下す生徒はもちろん他の生徒からも声が上がる。


 一番初めに声が上がったのは講義はしっかり聞いていた生徒で、エルフェリア記憶している生徒の名前を思いだし思考する。名前はジャル、クラスの中で一番の成績の細身で眼鏡をかけた如何にも知的と言う言葉が似合う少年にエルフェリアの視線が向く。


「僕達は魔力操作程度なんて簡単な事は出来ます。そのような簡単なもの極めてますよ。それよりももっと実戦的な魔法運用を教えてください」


 そう言いジャルはメガネをくいっと上げる。その他の生徒も同じような抗議の声を上げだす。このままじゃ収拾がつかないと思いため息をつきながらエルフェリアの歩き出す。


「魔力操作程度ですか、極めてますか面白いですね」


 馬鹿にしたような言い方をしながらエルフェリアは生徒と悠魔の間に立つ。彼女は視線を生徒に動かし微笑する。反発していた生徒はそんな彼女の態度に腹を立てたのか今度はエルフィリアに抗議する。エルフィリアは無視をして一人の生徒を指名する。


「確かセシルさんでしたね。先程ジャルさんと同じように魔力操作を極めたとか言ってましたね」


 あれだけ騒いでた中でエルフェリアはしっかり生徒たちが口にしていた言葉を覚えてる様で、彼女に向けて質問を投げかける。


「魔法を発動させるのに必要な技能は何ですか?」


「そ、そんなの魔力操作に決まってますわ!」


 若干エルフェリアの態度に気圧されながらも答える少女にエルフェリア拍手をしながら「正解」と短く答える。


「それじゃあ。初期魔法の魔弾は使えますよね。何せ魔力操作を極めたんですから」


 悠魔はエルフェリアの質問の意味が分からずその場の雰囲気を見守る。


「当たり前です!」


 そう言いセシルは空目掛けて魔弾を放ち、エルフェリアに、どうだ! と言う顔を向けるが、エルフェリアに呆れたように首を振る。


「それで終わりですか?」


「はっ! どういう意味ですか!」


「そうですね……この手の事は悠魔さんの方が得意なのですけど……故障している悠魔さんには荷が重いですよね」


 そう言いエルフェリアは今度悠魔に視線を向ける。悠魔も彼女の言いたい事が分かったのか素直に頷き、それを確認したエルフェリア手を空中に向ける。彼女の手元に魔弾の魔法陣が展開される。


「さて、教えるのは悠魔さんの仕事なんですけど故障中の悠魔さんには荷が重いので今回は特別です」


 そう言うと幾つもの魔弾の魔法陣が展開され、散弾、先端が尖った形の物、不規則に動くものなど色々な形態の魔弾が空に放たれる。それを見て生徒たちは絶句する。


「まぁ極めたって言うならこの程度の事は出来ないとですけど……ほらやって見てください。何せ皆さん魔力操作を極めたんでしょ?」


 可愛らしく笑顔で首を傾けエルフェリアは生徒に圧をかける。無論エルフェリアのやったような事を出来る生徒は一人もいない、悠魔もエルフェリアも彼らの技術力は前もって資料で知っている。悠魔自身彼らはまだ15、16歳の子供だと言う事で多少の事は多めに見ていたが、エルフェリアそうではないようで彼らのプライドを粉々にしてしまった。


「おや、誰も出来ないんですか? 別に私の様に並列起動をしろとは言いませんよ?」


 さらにエルフェリア彼らを追い詰める。


「何だ誰も出来ないんですね……まぁいいです虚勢を張るのは別にかまいませんよ。でもこの程度も出来ないのに今だに小さなプライドに縋ってる人はいるみたいですけど……そうですね。でしたら悠魔さんと模擬戦をしてみましょうか。皆さんが見下す先生がどの程度の実力があるのか分かってもらった方がいいようですね」


 その提案に絶句するのは生徒ではなく悠魔の方だった。


「いやいやいや! 何を言ってるんですか貴方は⁉」


「悠魔さんが使うのは怪我をしない程度の魔力弾と、簡単な魔力による肉体強化この程度でいいでしょう。皆さんは魔法でも何でも使っていただいてもかまいません。勝ち負けの判定は、そうですね……制限時間内に悠魔さんに誰か一発攻撃としてヒットするのを判定にしましょうか」


 誰の意見を聞かずに勝手にルールを決めて行くエルフェリアだった。

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