突撃フェレクス家、そして婚約!?
「いや~だ!」
「ダメです! 今度は逃がしません」
「貴族の家とか行きたくない!」
「王宮よりましでしょ!」
昼のギルドで柱にしがみつくレイラの襟を掴み悠魔が引き剥がそうと悪戦苦闘していた。
「大変よねぇ~」
「全くレイラもいい加減覚悟を決めろ」
「悠魔君も大変だねぇ~」
他のパーティーメンバーは近くのテーブルで二人のやり取りを見ていた。そんな三人にレイラは見てないで助けてよ、と叫ぶが三人は目を逸らしレイラが裏切者ーと叫び柱から引き剥がされこのまま引っ張られていった。貴族区の近くに行くと入り口に立っていた騎士に呼び止められた。
「申し訳ないが此処から先は通行許可書か貴族の指輪がないと通行を許可できない」
「指輪……あ、これですか?」
「こ、これはサレーナ公爵家の家紋!? し、失礼しましたどうぞお通りください」
悠魔がフェレクスから預かっていた指輪を見せると騎士は慌てて門を開けて通してくれた
「ハァ~緊張したよぉ」
「別に悪い事をしているわけじゃないんですから」
「それで、これからどうするの? あたし達フェレクス様の家知らないよね?」
「大丈夫ですよジェンガさんに相談したら手紙をやり取りできたので……迎えをよこすって書いてありましたから」
悠魔が手紙を広げレイラに見せるレイラはこの時、聖剣に何させてるの!と思い手紙を読んでいると馬車が悠魔達の前に止まり馬車のドアを開け執事服に身を包んだ老人が出て来て挨拶をしてきた。
「悠魔様とレイラ様ですか?」
「はい」
「は、はい」
「私、サレーナ公爵家で家令を務めております、セバスと申します・以後お見知りおきを」
「初めまして、僕は悠魔で彼女が」
「は、初めましてレイラて言います」
セバスにどうぞと言われ馬車に乗り込み移動をし始めるとセバスが頭を下げフェレクス様とメルジュ様を助けていただきありがとうございますとお礼を言い始めた。そんな、セバスを見てレイラは助けたのは悠魔のポーションのおかげだといい、悠魔は最初に異変に気付いたレイラだといいそんな二人を見てセバスは笑い
「御二人がいましたから異変に気づき傷ついたフェレクス様を治すことが出来たのです」
「「・・・・」」
二人は顔を赤くして俯いてしまいそんな様子を見てセバスは再び笑い再度ありがとうございますと言いその後は移動中に見える貴族区の建築物の説明をしてもらいサレーナ公爵家前に到着し馬車から降りると。
「大きいな」
「豪邸だ」
目の前には言葉通りの豪邸が立っていて門の所には警備の人間が立ち馬車から降りた三人を見て頭を下げて門を開いた。
「どうぞ、悠魔様、レイラ様」
「えっとそのレイラ様ってやめて……貰いたいのですが」
「出来れば僕も様付けは……」
「それは、出来ません御二人はフェレクス様とメルジュ様の命の恩人です」
「ですが」
「出来ません」
頑として意思を様付けをやめないセバスに二人は苦笑いをしてそんな二人を屋敷の中に案内した。庭を歩いていると日傘をさして花を見ていたメルジュが居て悠魔とレイラに気が付くと顔を笑顔にして小走りで近づいて来た。
「お久しぶりです悠魔さん、レイラさん」
「申し訳ありません少し早く来たかったのですが?……」
悠魔が横目線でレイラを見るとレイラはばつの悪そうな顔をして視線をそらした。
「いえ、来ていただけたのならよかったです……お父様もお母様も早く会いたいと言っていましたので」
「メル!悠魔さんとレイラさんが到着したって本当かい!?」
「あ、お兄様」
「やぁ、二人ともよく来てくれた」
フェレクスがドアを開けて走って来て順番に握手をして屋敷の中に案内をした。二人は客室に案内されるとそこには、三十代後半の男性と女性がソファーに座っており悠魔とレイラを見た瞬間に男性が立ち上がり二人に駆け寄り土下座でもするかの勢いで頭を下げお礼を言い出した。
それを見た二人は慌てて頭を上げる様にいいそんな、二人を見てフェレクスとメルジュは笑いセバスが紅茶とお菓子を用意して部屋に入って来るとキョトンとして皆に座るようにいいテーブルに紅茶とお菓子を並べだした。
「何度目になるか分からないが息子と娘の命を救ってくれてありがとう、改めて自己紹介をしよう私がサレーナ公爵家当主のトレイン・ブリッツ・サレーナでこっちが」
「妻のクリス・ブリッツ・サレーナですフェレとメルの命を救っていただきありがとうございます」
「兄上から聞いたがエレナ王妃の命も救ってくれただけではなく不正を働いている貴族をあぶりだすのにも協力してくれたそうじゃないか」
「いえ、そんな大した事をしたわけではないですから」
「あらあら、ご謙遜を」
「いえ、謙遜とかではないのですが……」
トレインとクリスの反応に悠魔は少し気後れしてしまいフェレクスに視線を向けるとうんうん頷いていてメルジュに視線を向けると目をキラキラして尊敬の眼差しを向けられていてレイラに視線を向けるとガチガチに緊張していて誰にも助けを求められなく悠魔は心の中でため息を吐き誰か助けてくれと思い苦笑いをした。
「セバス例の物を」
「はい、旦那様」
セバスが小箱と革袋をテーブルに置き。
「白金貨で五十枚入っている」
「うにゃ!?」
「はい、ありがとうございます」
「悠魔っちもらい過ぎだよこれはぁ!」
「僕もそう思いますけど」
悠魔は王宮での話をレイラに聞かせると面倒だなぁ~と言う顔をして納得して白金貨受け取る事を納得した。次に小箱を開け中に入っていたメダルを見せて説明を始めた。
「あと、こっちが国内でなら何処でも使える通行許可書だ」
「ありがとうございます」
「これは便利だね」
渡す物を渡しトレインはさぁお茶にしようと言い紅茶とお菓子を二人に進めた。出されたお菓子はワッフルに似た物で甘い香りで美味しそうだった。
「美味しぃ~」
「ん~美味し」
悠魔もレイラも食べると二人とも幸せそうな顔をして美味しいと絶賛した。そんな、レイラをフェレクスがジー見ているのを悠魔は気づきどうしたんだろうと思い声をかけようとした時何かを決意したような顔をして口を開いた。
「父さん、母さんお願いがあります、迷惑をかけるかもしれませんが」
「どうした、お前にしては珍しいな?言ってみなさい」
「そうね、迷惑何て気にしないでいいのよ」
「はい……此処にいるレイラさんと婚約させてほしいのです」
「ぐっ……ケホケホ」
「おお!」
たっぷり間を置きレイラと結婚したいと言い出しそれを、聞いたレイラは飲んでいた紅茶を吹き出しそうになるのを我慢して咽てしまい悠魔は驚いた様に声をあげた。
「うむ」
「貴方」
「……いいだろう面倒な事は此方で引き受けよう」
「は、はい!」
「いやいやいやいやちょっと待ってくださいおかしいですよ二人とも何でそんなに簡単に了承してるんですか!」
「僕の何処かに不満がありますかなら言ってください直しますから側室もつくりません!」
「そう言う事を言ってるのではなくて、そもそも私は平民です!貴族と婚約出来るわけないじゃないですか?」
余りにも素直に納得する二人を見てさっきまでの緊張は何処かに行ってしまい相手が貴族なのを忘れ両手をテーブルに着き乗り出して慌ててレイラが止めに入った。
「メルさん少し聞きたい事があるのですがいいですか?」
「はい、私に分かる事でしたら」
「この場合フェレさんとレイラさん……貴族と平民て婚約出来るんでしょうか?」
「はい、可能だと思います、レイラさんがそうですね何処かの貴族の養女にでも入れば可能です、そうすれば文句の言う貴族はいないと思います」
「そういう方法があるんですね」
説明を終えたメルジュは紅茶を一口飲みさらに口を開いて。
「お兄様は婚約者もいないですし……もしかすると他の貴族も後押しするかもしれませんね」
「何でですか?この場合邪魔をするんじゃ?」
「お兄様はもともと何度か婚約の話があったのですが悪い癖のせいで相手に愛想を尽かされて……現状困ってましたから」
「悪い癖?」
「魔道具を弄るのが好きで暇さえあれば工房にこもりぱなしになって相手をしなくて……ハァ~」
メルジュが一通りの事情を説明すると呆れた顔をしてフェレクスを見て再び小さなため息をつき紅茶を飲んだ。
「だ~か~ら~そんな方法があってもしません……大体あたしの何処がよかったんですか?」
「前に助けてもらった時にスケルトンに弓を弾いているあなたを見て惚れました!」
「っ~」
真面目な顔をして惚れたと言われレイラは顔を真っ赤にして後ずさり、だが諦めずに言葉をつづけた。
「あ、あたしより悠魔っちの方がかわいいよ!」
「おい!僕は男だ!」
珍しく悠魔が敬語を抜きにしてレイラに吠えた。フェレクスも流石に顔がかわいくても男性は無理だといいレイラも自分が馬鹿な事を言った事に頭を抱えて悶えた。
「フェレクス私はレイラさんとの婚約は特段反対派はしないしむしろお前が婚約に前向きだから賛成したいがまずは相手の同意を得る事だな……それともお前は嫌がるレイラさんと無理矢理婚約するのか?可能だと言えば可能だ彼女は平民だし貴族の力を使えば何とかなるだろう」
「う、それは……嫌です」
「なら、まずは彼女を振り向かせる所から始めなさい」
「はい」
「だ~か~ら~あたしは婚約するつもりはないよ~!」
サレーナ邸にレイラの声がこだましてその日はお開きになり悠魔とレイラは馬車で宿屋に送られた。
次の日いつも通りギルドに集まり今日の仕事の話をしていたがレイラは元気がなく項垂れていた。
「レイラの奴どうしたんだ?」
悠魔は昨日のサレーナ邸での出来事を三人に話それを聞いて驚きレイラに詰め寄った。
「だ~か~ら~婚約何てしないよ~」
「でも、貴族だよ勿体ない」
「まぁ、相手は悪くないなサレーナ公爵の長男は評判はいいしな」
「そうよねぇだって、しかも側室もつくらないとかすごく好感がもてるわよね!」
「…………皆楽しんでない?」
顔を上げてジト目で三人を見ると皆乾いた笑いをだし目を逸らした。
「そう言えば帰る時に何か話してませんでした?」
「ん~実は明日夕食に誘われていて、朝にドレスが送られて来たの」
「あははは、よかったじゃないですか?」
「……悠魔っちも楽しんでるよね?」
「いえいえ、そんな事ないですよ」
悠魔は今まで見た事ないような素晴らしい笑顔で答えた。そして、何かを思いついた様に皆に今日は明日のレイラの為に休みにしましょうと言い皆もそれに、納得して休みにして悠魔はギルドを飛び出して行った。
「悠魔っちあれは、何か悪い事を思いついた顔だよね」
「「うんうん」」
レイラの言葉に三人は頷き悠魔の出て行ったギルドの入り口を見たその日はレイラはごめん疲れたと言い宿屋に戻って行った。
次の日の夜貴族区の入り口で清楚なドレスを着たレイラが立っておりそんなレイラを物陰に隠れて見る四人の影があった。
「なぁ、いいのかこんな事してて?」
「いいんじゃない? だってリウスも気になるだろ?」
「あんなレイラちゃん見た事ないわね」
「三人とも少し静かに気づかれますよ」
しばらくすると、一台の馬車が止まり中からフェリクスが出て来てレイラの顔を見ると笑顔になり少し話をして馬車に乗り込み貴族区に入って行った。
「どうするんだ?まだ追うのか?」
「流石に貴族区じゃねぇ~」
「大丈夫です多分そろそろ来ると思います」
「誰が?」
悠魔達の目の前に馬車が止まり、馬車の窓からメルジュが頭が出て来て四人を見つけると、「乗ってください」と言い、悠魔は馬車のドアを開けて乗り込み三人に乗るように促すが、三人とも顔が引きつり貴族の馬車とあり、少し躊躇してしまい、しかしレイラの事も気になり乗り込み馬車で移動を始めた。
「ありがとうございますメルさん」
「いえ、私もお兄様とレイラさん事が気になりますから……皆さま初めまして私はメルジュ・ブリッツ・サレーナです、よろしくお願いいたします」
「は、初めましてパーティーリーダをしているリウスでこっちが」
「ナナです」
「クラウです」
オドオド自己紹介をする三人を見て悠魔は苦笑してメルジュが協力してくれた経緯を話した。それを聞いた三人は引き攣った笑顔を浮かべメルジュはため息をつき「あの兄は」と愚痴をこぼしハッ!と我に返りすいませんと謝った。
「それでメルさんこの馬車何処に向かってるんですか?」
「お兄様達が向かった店は分かるので入店するのに皆様の服装じゃ入れないので行き付けの店に行こうと思います……あ、お金の方は気にしないで大丈夫です、こちらで支払っておきますので」
「いや、そこまで面倒見てもらうのは……一応金は皆それなりの金額を持ってるから」
「ですが、結構な額になりますよ一通りそろえないといけませんから?」
「悠魔とレイラが国王陛下やサレーナ公爵にいただいた皆白金貨がほとんど残ってるもんで……それで足ります?」
「それなら大丈夫ですね」
しばらく走る事馬車が一軒の店の前で止まりメルジュが馬車から降り皆も降り店の中に入ると中ではメルジュと店員らしき女性と男性が話をしていて話が終わると店員達がそれぞれ幾つもの衣服や靴を持って歩いて来た。
「皆さんに似合う服を持って来てもらいました」
「すごい高そうなドレスね」
「俺、こんな服着た事ないやぁ」
「俺もだよ」
三人はどうしていいのか分からずに右往左往していると店員達に声をかけられ自分に似合う服を選びだし始めた悠魔は少し考えてあっと思いつた様に手を打ちメルジュに耳打ちをして奥の方に歩いて行った。三人はスーツやドレスを着て悠魔とメルジュを待っていると店の奥から二人の女性が歩いて来て一人はメルジュだがもう一人は知らない人でだが何処かで見た事がある顔つきで皆考え込んでると。
「皆さまよくお似合いです」
「何か落ち着かないです」
「そうね」
「まさかこんな豪華な服を着る事になるとは」
三人とも普段着ない服を着たため落ち着かないと言った雰囲気をしていてそんな、三人を見てメルジュがふふふと笑い「それでは行きましょうか」と言い店を出ようとしようとするのでナナが慌てて悠魔がいない事を指摘すると悪戯が成功した子供の様に笑い隣にいた女子が口を開いた。
「やっぱり気づかないもんですね?」
「「っ!?」」
女性が喋るとその声は聞き覚えがありクラウが信じられない物を見る目で「悠魔君!?と」言いそれを聞いた女性は「はい」と頷きその場でクルリ一回転して「どうですか?」とその姿を皆に見せた。
「何と言うか似合い過ぎだな」
「そうね、悠魔君元々顔付が女性よりだからそういう服を着ると……女性にしか見えないわね」
「いやぁ~こっちの方がばれないじゃないかと思いまして」
「それは、そうだが」
呆れた顔をしたリウスにナナがそっと耳打ちをして。
「ねぇ、悠魔君て女扱いされるとよく怒るけど女装は抵抗ないのね」
「何と言うかこんな事をするから間違えられるんだろうな」
呆れる二人を後に馬車に乗り込みフェリクス達が向かった店に移動し、このまま全員で固まって入ると目立つため二組に悠魔、リウスとメルジュ、ナナ、クラウに分かれて店に入る事にして先にメルジュ達が入って行き、しばらくして悠魔とリウスが入って行くと中は簡易的な敷居で仕切られた空間になっていて、フェリクスとレイラが見える席る事が出来料理を注文して二人を覗き見始めた。
「何か思ったより二人とも楽しそうですね?」
「だな、もう少しオドオドしてるかと思ったが」
場所が離れているため会話は聞こえないが二人が思っていたよりレイラは楽しそうに食事をしていて二人は残念と思ってしまった。悠魔は少し気になる事がありリウスに尋ねた。
「リウスさん、このままレイラさんがフェリクスさんと婚約すると今まで通りに一緒に冒険するのって無理なんじゃないですか?」
「そうだな、レイラに抜けられるといたいな、アイツの武芸の生物感知はかなり便利だからな」
「そうですね、ナナさんの検索の魔法は常に発動してる訳じゃないですからね」
「レイラさん婚約しない様に説得します?」
「……いや、それはやめておこう婚約するのはレイラ自身の考えた結果だ無理強いするのはよくない」
「そうですね……ん、此処の料理美味しい」
悠魔が運ばれて来た料理を食べるとその美味しさに驚きリウスもつられるように料理を口に運ぶとその美味しさに絶賛してしまいレイラとフェリクスの二人を忘れ料理を楽しんでしまった。食べ終わる頃に二人の事に気づくが二人は帰ってしまっていて仕方ないので皆と合流するために店をでた。外には恥ずかしそうに顔を赤くしたナナとばつの悪い顔をしたクラウと愛想笑いをするメルジュが待っていてリウスがすまないと頭を下げ「料理に夢中になり過ぎた」と謝り悠魔もすいませんと頭を下げた。
「いいのよ……私達も料理に夢中になってたから」
「あはは、ごめん」
「御二人の反応が新鮮でついつい話し込んでしまい」
「「…………」」
「僕達何しに来たんでしょう?」
「さぁ」
全員がため息をつき夜空を見上げて誰かが帰るかと口にしてメルジュの馬車でそれぞれの宿屋に送ってもらった。




