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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第七章
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魔王の城

 目の前に座るジェンガとコトナの表情は困ったような表情をしており、彼らがそのような表情をしている理由は悠魔には心当たりしかなかった。


「二人が来たってことは流石に今回は見過ごせなかったんですよね」


「ああ、流石に今までの様にコソコソ来てるだけならまだしも、今回の様に派手に来られたら他の人達も気付くからね。だから他が動く前に僕達が来たんだよ」


 今までエルフェリアとソフィーは入念な準備をして悠魔の元を訪れていた。手間をかけたおかげで今までこの都市を守る魔導士たちの目には止まらなかった。


「一度目は誤魔化せたんだけどで……二度目は流石に無理だった」


 初めにソフィーが逃げてきた時は彼らが機転を利かせてくれたので幸い騒ぎにはならなかったが、今回は一度目のこともあり誤魔化せなかった。


「それで今はどんな状況なんですか? 私もジェンガ君もそれほど詳しくは知らないので……」


「端的に言えば影の魔王が復活しました。それでエルフェリアさん――知恵の魔女を殺害しようとしてそれを助けて逃げて来ました。後僕も狙われてます……僕と言うよりこの目ですけど」


 自身の片方の青い瞳を指さす。


「元々は影の魔王の物だった様で、それを取り返そうとしてる見たいです。この目があの魔王の手に渡ると本当の意味で彼女が復活します」


 今はまだ影の魔王は完全んな復活していないが、悠魔の所有している魔眼が彼女に手渉ると本当の意味で復活してしまう。


「今すぐこの街を離れようと思います。此処にいると迷惑になりますから……」


「それは……そうですけど……」


 コトナは悠魔の意見を否定できない。彼女個人としてはそんな事はさせたくないが、この街を危険にさらすことは出来ない。


「いや……逆だ。悠魔、君はこの街から出ないでくれ、影の魔王が君を狙ってるなら必ず君の元に姿を現す。下手に奇襲を受けるよりは分かりやすいからね」


「ジェンガ君流石にそれは不味いですよ! 悠魔君を囮にするのも反対ですし、街にも被害が出るかもしれません!」


「分かってるが今放置する方がもっと大きな被害が近い内に出る。悠魔しばらくは僕が君の護衛につく、いいね」


「それはありがたいですけど……本当にいいんですか?」


「この場所は街の一番端だし市民の避難がすぐに出来るように手配をしておけば……」


 ジェンガはそう言うが、彼の表情は暗く本意ではないとすぐに分かる。それでもしないといけないのは、それ以上に影の魔王の討伐を優先しないといけないと思ったからだ。


「わかりました。もう私は何も言いません、私は取り合えず陛下に報告だけして対応の準備をしてきます」


「悪いね」


「コトナさんすいません」


 疲れた様に彼女は部屋を退出して行き、ジェンガは悠魔に部屋を用意してもらい屋敷全体に探知用の魔法を展開して待機する。




 悠魔とソフィーは二人で厨房で料理を作っていた。


「それで次はこれとこれを混ぜてください」


「うん」


 悠魔の指示通りに調理をして行く、急に彼女が料理の作り方を聞いて来た事には驚いたが、事情は大体想像が出来たので教える事にした。


「出来たならエルフェリア所に運びましょうか」


「うん」


 少し嬉しそうに彼女は俯き、お盆を両手に持ち歩いて行く。エルフェリアに嫌われてる自分は入らない方がいいと思い、悠魔はドアの外で待つことにした。


 しばらくして何かが飛び散る音と主にエルフェリアの怒鳴り声が聞こえてきて、勢いよくドアが開きソフィーが飛び出して走り去って行く。


「…………」


 そっと部屋の中を覗く、そこには途方に暮れたエルフェリアが飛び散った料理を見ていた。


「分かってると思いますけど……あれを作ったのは僕じゃないですよ」


「っ出て行ってください!」


「はいはい出て行きますよ。後でソフィーさんには謝っておいてくださいね。彼女頑張って作ってたんですから」


 悠魔は散らばった料理を全てまとめて部屋を出て行く。


 一人残ったエルフェリアは苛つきながら胎児の様に自信を抱きベットの中に潜り込む。




 取り合えずソフィーを捜して屋敷を歩いている。


「何処に行ったんだ」


 結局屋敷を一周してエルフェリアの部屋の前に帰って来てしまった。よくよく考えれば彼女が今もこの屋敷に居るとは限らなく、これ以上探しても無駄だと思いどうするか考える。


「あの人の魔法なら探してもそうそう見つからないな……ん」


 今までなる事のなかったエルフェリアに渡しておいたベルが鳴る。


 少し悠魔は驚く、鳴るとは思わなかったのが呼ばれたのでちょうど部屋の前にいたので部屋に入る。


「どうかしました?」


「ソフィーさんはいますか……先程の事を謝りたくて」


「捜しては見ましたけど残念ながら屋敷にはいないようです」


「……そう……ですか、あの――っこれは⁉」


 突如部屋の床が黒く染まる。この変化にエルフェリアは一早く気が付いたが悠魔が気が付いた時には、彼の視界は薄暗い石造りの通路で埋め尽くされた。


「此処は……何処ですか?」


「……影の宮殿……主作り出した主だけの主の為の空間」


「と言う事は僕らはどうやってしたか分からないですけど、ものすごく危険な状態にあるのですよね……此処から出る方法はありますか? 正直何の準備もなくあの魔王と対峙するのは嫌なので」


 今の悠魔の装備はゼロで、魔法石どころか魔力石一つも持っていない。こんな状況で戦うのはごめんだと思う、ジェンガが展開した探知結界に屋敷にはアリスが施した幾重もの結界があったので完全に油断していた。


「ありませんね。もし出るのならソフィーさんの様な空間魔法に特化した人の力が要ります……後は主を倒すか、本人に出してもらうしかないです」


「困ったなぁ……」


「言っておきますけどソフィーさんの助けは期待できないですよ。彼女の魔法は彼女が一度でも行った事のある場所にしか扉を作れませんから」


「いよいよ脱出の手がなくなって来ました。油断しすぎました何の準備も装備もなくこんな所に呼ばれると思ってなかったです。そもそもどうやってジェンガさんやアリスさんの目を盗んで僕達を転移させたのでしょか……分かります?」


「……私が居た部屋に張られた結界は、隠蔽と特定の人物の通か不可の二種類の効果を持つものですね。多分それを逆手に取られたのでしょう」


 視線は明後日の方を向いており、決してエルフェリアは悠魔の方に視線を向けないが、悠魔の質問には素直にしっかりと答えをくれる。


「逆手に取られたとは?」


「主の魔法は影を媒介に発動する物が多いです。影は何処にでもありますから、室内に出来た影を使用して私達をこの場所に召喚したのでしょう」


「でも、隠蔽の効果がある結界が張られていましたよね?」


「多分おおよその当たりは付けていたのでしょうね主は、貴方は見つかっても私は見つけれない、私は何処か目の付かない所にいる。そう考えた主は貴方の屋敷を見ていて、貴方の魔力が隠蔽の効果の結界で消えるのを確認した時に、その部屋全体に転移の魔法を発動させたのでしょう」


「あの結界が裏目に出たってことですか?」


「はい、隠すなら屋敷全体にするべきでしたね。一部だけを隠しても意味はないですから、これはアリスさんが居て聖剣が居る都市だと言う事で彼女も油断してたのでしょう。もしくは主――影の魔王ヴァレンタインを甘く見ていたのでしょうね」


 そんなエルフェリアの話を聞きながら悠魔はこれからどうするかを頭の中で考えだした。

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