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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第七章
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ソフィーの過去

 エストア王国の名もないほどの小さな村にエルフェリアは訪れていた。村の人達は魔女であるエルフェリアを見て明らかな嫌悪感を出す。


 村の中央に歩いて行きその場で村全体を見渡す。小さな小さな村でそこに住んでる人達を見てエルフェリアは落胆する。


「お年寄りや小さな子供ばかりですね。まぁいいですかないよりマシですし」


 落胆しながらエルフェリアは踵を鳴らすと彼女の影がどんどん地面に広がって行き、その中から巨大な水晶が姿を現す。


「主どうぞお食べください」


 水晶の前に膝まづくエルフェリアの言葉に答える様に輝くと、水晶から無数の影の腕が伸び次々と村人を掴み影の中に引き込んでいく、その光景を見て何人かの村人は逃げようとするが、誰も間に合わないすぐに村から誰もいなくなり、水晶はエルフェリアの影の中に沈んで行った。


「さて、悠魔さんの所に向かいましょう……はぁ歩いて行くと遠いですね。こんな事ならソフィーさんだけはこちら側に残して置くべきでしたね」


 魔女教団の魔女達はこの水晶の為の餌でしかなかった。本来なら動き出したあの屋敷で全てが片付いており、アリスが抜けた事により多少の不安はあったものの量としては十分だったが、思いのほか魔女達の抵抗が激しかったのと、ソフィーがまさか他の魔女を逃がすとは思ってなかった。


「今回かなり失態が目立ちますねはぁ……」


 いつもは上手く立ち回って来たが今回は初めから上手く事が運ばない、何もかも裏目に出てしまってる。


「魔女達を生贄にするのは失敗、この様子ならソファーさんの行先は悠魔さんの所ですし、今回の事はすべてバレてしまってますよね、ソファーさん勘がいいですからこれからの行動から私の目的が悠魔さんなのは分かるでそしょうし……はぁ」





 今までのエルフェリアの行動をソフィーは知ってる。その為今回の最終的な目的は何かは分からないが、魔女教団を捨て以上次に彼女が向かう所は悠魔の所だと思いすぐに向かった。


 悠魔に死なれるのは困る。あれほどのお菓子を作れる人を失いたくはなかった。


「――ソフィーさん?」


「ん!」


「大丈夫ですか?」


「平気……」


 ソフィーの視線が悠魔に向く、自分に向けられた視線に不思議そうに首を傾ける。


「何でもない」


 手元にあるお菓子を見て思い出す。まだ人間だった頃の生活の事を……。


 少し裕福な家に暮らしていたソフィーは幸せだった。優しい両親に祖母の四人暮らしでソフィーは特に祖母に懐いており、彼女はよく祖母の作ってくれたお菓子を喜んで食べていた。


 目の前にあるお菓子より遥かに美味しくはないし、今思えばよくもあれだけ美味しくもないものを好んで食べていたとは思うが、どんなに悠魔の作ってくれたものが美味しくてもどれだけ食べても満足できない。


 祖母が亡くなってからは、母親がよくお菓子を作ってくれたがやっぱり何か違うと思い、自分で何とか同じ味を再現しようと頑張るが出来なかった。


 ある日両親が流行り病にかかり母親が亡くなった。父もそんな母を追うように亡くなり、ソフィーも一人寂しく家のベットの上で死ぬのを待つだけだったが、最後に祖母の作ったお菓子を食べたかったが何度も挑戦したが出来なかったものが、熱が出て意識も朦朧として動けない状態で作る事など出来ない、大好きだった祖母のお菓子を食べたいと言う願いも叶わなく、一人寂しく誰にも看取られなく死んでいくのに涙が流れだした。


 そんな時目の前に現れたのはエルフェリアだった。エルフェリアは自身がため込んだ知識の一部を使い病気のソフィーを回復させた。魔女が何故人間の自分を助けたのか不思議でしょうがなかく、この時までソフィーも他の人同様に魔女を畏怖の対象としか見てなかったが、この事で見方が反転しエルフェリアの魔女の見方が変わった。


 しかしもう大好きな祖母もいない優しい両親もいない、これからどう生きればいいか分からなく助けてくれたエルフェリアにも何もお礼できるものがない。


 困ったソフィーだがエルフェリアは別に何も求めなかった。ただ単にソフィーの魔力量を見てここで死なすのには惜しいと思っただけで、利用価値がいずれ利用できると思った程度だったが、ソフィーの話を聞き彼女は行って来た魔女になれば無限に等しい時間が手に入ると、時間さえあれば目的を果せると教えてくれた。


 そうしてソフィーは魔女となりエルフェリアについて行った。


「ねぇ悠魔」


「なんですか?」


「これ作れる?」


 ソフィーは一枚の古びた紙切れを取り出す。


「……何かの作り方ですか? 材料を見る限り何か食べ物の様ですけど……うん大丈夫ですこれなら作れます」


 一通り書かれた内容を確認した悠魔は屋敷にある材料で作れると思いソフィーに返事をすると、彼女はその答えを聞き頭を下げて来る。


「作って欲しいお願い」


「何のレシピ何ですかこれ?」


「祖母が作ってくれたお菓子のレシピ、もう一度食べたいけど何度作っても上手く行かない。私料理苦手だから……」


「……わかりましたやってみます」


 悠魔は迷うが作ることにした。




 ソフィーは目の前に置かれたものは確かに祖母がよく作ってくれたお菓子だが、明らかに違う美味しそうな香りに見た目に落胆する。


「……違う」


「そうですか」


 初めから上手く行くなんて思ってなかった。作り手が違うのもあるが明らかに思いの入り方が違う、祖母は大好きなソフィーの為を思って作っていた。悠魔ももちろん不味いものを作ろうなど思わなく一生懸命作ったが、あくまでレシピ通りに作っただけで彼女の望んなものは作れてない。


「正直僕がどれだけ作ってもソフィーさんの望むものは作れないと思います」


「悠魔お菓子作るの上手なのに作れないの?」


「はい無理です。このレシピのものを作れと言われれば作れますが、ソフィーさんのおばあさんがソフィーさんの為に作ったお菓子は作れません」


「どうして?」


「そうですね……そもそもソフィーさんが好きなのはこのお菓子じゃなくておばあさんが作ってくれたものじゃないんですか?」


「おばあちゃんが作ってくれたお菓子……」


 古い記憶でも今でも鮮明に思い出せる祖母の顔を思い出す。祖母が作ってくれるお菓子はいつも一緒だったが、そのお菓子を食べるとソフィーはいつも笑顔になり祖母も笑顔になる。


「おばあちゃんと一緒に食べるお菓子美味しかった……美味しいって言ったら喜んでくれた」


 ソフィーは俯き震えた声で喋り悠魔に言われて今分かった。ソフィーは別にこのお菓子が好きだった訳ではない、ただ祖母と一緒に笑いながら食べるのが好きだった事に気が付く、それと同時に涙があふれて来る。


 しばらくソフィーは泣き続ける。悠魔も何も言わなく部屋を出て行き彼女を一人にすると、部屋の中から泣き声聞こえて来る。


「まったく君は……」


「アリスさん」


 部屋を出てすぐアリスに声を掛けられる。どうやらずっと此処に居たようで、何かを言いたいようだが彼女は途中でその言葉を切り少し責めた様な目で悠魔を見る。


「すいません。でも放っておく事が出来なくて……」


「……いや、今のは僕が悪いすまない」


 醜い嫉妬心から非難めいた言い方をしてしまったが、悠魔のしたことは何も間違ってないと彼女も思っている。


「悠魔……ああ、ん、少し来い!」


 アリスは悠魔の手を掴み引っ張って行く、向かった先は自分の自室で悠魔をベットの上に座らせその隣に座り自身の膝上に悠魔の頭をのせる。


「あのう……これはどういう状況ですか?」


「偶には僕の暇つぶしにも付き合ってくれ」


「えっと……あ、はい別にいいですけど……」


 偶に彼女の事が分からなくなる時があるが、今のアリスの表情は何処か儚げでいつもの強気な感じがない、何が彼女をここまで弱くしてるのか少し気になるが、多分聞かない方がいいと思い唯々成すがままにされた。

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